【CH-47】(しーえいちよんじゅうなな)

Boeing CH-47 "Chinook(チヌーク)"

ボーイング社のタンデムローター式大型輸送ヘリコプター
元々の設計はバートル?社だが、開発中の吸収合併により「ボーイング・バートル」名義で供給されている。
1956年に開発がスタートし、1961年に初飛行、1962年から陸軍への配備が開始された。

バートル?社が得意としていたタンデムローターターボシャフトとして用いているのが特徴。
現在生産されている唯一のタンデムローター機である。
軽量なエンジンながらも、同時期のCH-46に比して2倍近い出力を持っていた*1
何度も改良や改修を繰り返されている傑作兵器の一つであり、2030年代までは現役であるものと推定される。

ただし、非常に目立つ構造的欠陥も一つある。
前部ローターシャフトが前方に傾いており、ローターが人間の身長よりも低い位置で旋回する点である*2
このため、人間が不用意に機体前方に近づけば、ローターの回転で首を刎ねられる恐れがある。

車輌・火砲の輸送時には機体の外に吊り下げるだけでなく、後部のランプドアから貨物室へ積み込む事ができる*3
艦上機としての運用は想定されていない陸上機だが、揚陸艦の大型化に伴い、海兵隊でも採用されている。
水密胴体であるため海上運用も可能だが、ローターに折り畳み機構がないため航空母艦には格納できない。

日本でも1987年から陸上自衛隊航空自衛隊に配備されている*4
今日でも災害派遣の現場で見る事が多く、救助活動・物資輸送・消火活動などに用いられている。

スペックデータ

乗員3名
積載能力兵員30名または担架24+衛生兵2名
主回転翼直径18.3m
全長30.1m
胴体長15.54m
全高5.7m
胴体幅3.87m
空虚重量10.185t
最大全備重量12.1t
最大離陸重量22.68t
最大吊り下げ重量10,000kg+
エンジンライカミング T55ターボシャフト×2基
CH-47A:T55-L-5(2,200軸馬力)/T55-L-7(2,650軸馬力)
CH-47B:T55-L-7C(2,850軸馬力)
CH-47C:T55-L-11(3,750軸馬力)
CH-47D:T55-L-712(3,750軸馬力)/T55-L-714(4,085軸馬力)*5
CH-47F:T55-GA-714A(4,868軸馬力)*6
速度
(超過禁止/巡航)
295km/h / 260〜270km/h
航続距離2,060km
実用上昇限度2,590m
ホバリング高度限界1,524m(OGE)
上昇率605m/min
アビオニクス
無線機ARC-186またはARC-201 VHF/AM?/FM?無線機
ARC-199またはARC-220 HF?無線機
ARC-164 UHF無線機
航法装置ASN-149(V) GPS受信機
ASN-128ドップラー/PGSセット
ARN-89B ADF(自動方位探知)セット
APN-209電波高度計
ARN-123 VOR/ILS受信機
ASN-43ジャイロ磁気コンパス
IFFAPX-100 IFFトランスポンダー
レーダー探知APR-39A(V) レーダー信号探知システム
ミサイル警報ALQ-59 パルス・ドップラーミサイル警報装置
M130 フレアディスペンサー×4基
ALE-47スマートディスペンサー(MH-47E/G)


主なバリエーション

  • YCH-47A(YHC-1B):
    試作型。エンジンはライカミング T55-L-5(2,220馬力)×2基搭載。

  • CH-47A:
    初期量産型。エンジンはT55-L-7(2,650馬力)×2基搭載。

  • ACH-47A:
    ベトナム戦争で試用されたガンシップ型。
    非公認愛称は「ガンズ・ア・ゴーゴー」。
    4機が改造され、高い評価を得たが、輸送型の生産が優先されたことと専門の攻撃ヘリAH-1G「コブラ」の就役により量産されず。

  • MH-47D:
    A型を改修した特殊作戦型。
    AAQ-16 FLIR、空中給油プローブ、救難ホイスト、デジタル・コックピットを装備。

  • CH-47B:
    ローター径を伸ばしエンジンをT55-L-7C(2,850馬力)×2基へ強化、胴体を改良したモデル。

  • CH-47C:
    エンジンをT55-L-11(3,750馬力)×2基へ強化したモデル。
    後期型からカーゴフックが3点式になった。

  • CH-147:
    C型のカナダ軍向け。

  • チヌークHC.1:
    英国でC型をライセンス生産したもの。別名「CH47-352」。
    英空軍に納入されている。
    改良型のHC.1Bはグラスファイバー製のローター・ブレードと三点式のカーゴフックを装備する。

  • V234:
    C型の民間向けモデル。

  • CH-47D:
    A・D型の改修型。
    複合材ローターの採用やアビオニクスの改善、トランスミッション強化などにより能力が大幅に向上した。
    エンジンはT55-L-712(3,750軸馬力)またはT55-L-714(4,085軸馬力)(MH-47Eも使用)×2基搭載。

  • CH-47SD("Super D"):
    D型の発展型。
    エンジンはT55-GA-714Aを搭載し、燃料タンクが7,828リットルに拡大され、機首に気象レーダーが搭載されている。
    台湾とシンガポールに輸出された。

  • チヌークHC.2:
    D型を英国でライセンス生産したもの。
    T55-L-712エンジンを装備し、補助電源の改良や新しい自動操縦装置、油圧装置、長距離用の燃料タンク、赤外線ジャマー、チャフ、ミサイル接近警報装置、機関銃装着金具、IRSTなどが取り付けられている。

  • V414:
    D型の民間向けモデル。

  • CH-47F:
    液晶グラスコックピットを採用し、ローターを改装したD型の近代化改修型。
    現在試作機評価中。

  • MH-47G:
    F型に特殊作戦用の改造を施したMH-47Eの後継型。現在開発中。

  • HH-47D:
    韓国空軍向けの捜索救難型。

  • MH-47E:
    燃料タンク倍増、FLIRやマッピング/地形追従レーダー追加、航法装置改良、装甲追加、空中給油用プローブ追加などをした特殊部隊輸送型。

  • チヌークHC.3:
    MH-47Eに一部G型で開発中の技術を導入した英空軍向け特殊部隊輸送型だが、問題発生により再評価中。

  • HH-47 CSAR-X:
    HH-53の後継として選定された戦闘捜索救難型。開発中止。

  • CH-47J:
    日本でD型をライセンス生産したもの。(メーカーは川崎重工
    陸上自衛隊および航空自衛隊で用いられる。
    エンジンはT55-K-712(4,336軸馬力)×2基(川崎重工業のライセンス生産)。

  • CH-47J LR("Long Range"):
    J型の航空自衛隊仕様。後部脚に油圧による姿勢制御機能を持つ。

  • CH-47JA:
    J型のスポンソンを大型化して燃料タンクを倍増し、気象レーダーを追加、航法装置を改良して作戦遂行力を強化したもの。
    陸上自衛隊に納入されている。

    http://www4.plala.or.jp/klesa108/diary/shizuhama2006/ch-47j.jpg
    航空自衛隊のCH-47J

*1 現行主力型のCH-47Dは初期型からさらに2倍近いペイロードを持つ。
*2 操縦桿が最も下げ舵の場合、130cmほどまで下がる。
*3 搭載量はかつてのDC-3/C-47に匹敵する。
*4 川崎重工業でのライセンス生産により調達。
*5 MH-47Eも使用。
*6 MH-47Gも使用。

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