【BM-21】(びぃーえむにじゅういち)

旧ソ連が1960年代に開発した自走ロケット砲(多連装ロケットシステム)。愛称は「グラード(あられ)」。
部隊配備は1963年に開始され、ソ連軍砲兵部隊の主力火器のひとつとして活躍した。
また、後述の通り世界各国に輸出され、この種のシステムの原型ともなった。

ウラル375D 6×6トラック(1976年以降に生産された型はウラル4320 6×6トラック)の荷台にチューブ状の40連装122mmロケット発射機を搭載し、ランチャーは俯仰角0〜55度、旋回角は左140度、右90度である。
照準装置はトラックの右側にある伸縮式パイプのついた架台に積載されており、発射前に架台を固定するようになっている。
ロケットの弾頭には、対人・対非装甲車両用の破砕性弾頭のほか、対戦車地雷散布弾頭や成形炸薬弾水中爆発弾頭などを装備する事ができる。

2,000両以上が生産され、ソ連以外では、イランやイラク、アフガニスタンなどに輸出されている。

スペックデータ(BM-21)

  • 発射機
    乗員6名
    全長7.35m
    全高2.85m/2.68m(移動時)
    全幅2.69m
    空車重量10.87t
    戦闘重量13.7t
    エンジンZIL375 空冷V8ガソリンエンジン(175馬力)
    最高速度75km/h
    航続距離405km
    武装9P132 40連装122mmロケット弾発射器×1基
    連射速度40発/20秒(一斉射撃時)/ 1発/5秒(単発射撃時)

  • ロケット弾
    名称弾頭全長弾頭重量本体重量射程
    (最小/最大)
    製造国
    9M22U
    (M-21OF)
    破砕性弾頭2.87m18.4kg66.6kg5,000m/20,380mソ連/ロシア
    9M28F破砕性弾頭2.27m21kg56.5kg1,500m/15,000mソ連/ロシア
    9M521破砕性弾頭2.87m21kg66kg40,000mソ連/ロシア
    9M522破砕性弾頭3.04m25kg70kg37,500mソ連/ロシア
    9M28K対戦車地雷散布弾頭3.04m22.8kg57.7kg13,400mソ連/ロシア
    9M43煙幕弾頭2.95m20.2kg66kg20,000mソ連/ロシア
    9M217対戦車子弾散布弾頭3.04m25kg70kg30,000mソ連/ロシア
    9M218成形炸薬小弾3.04m25kg70kg30,000mソ連/ロシア
    9M519ジャミング3.04m18.4kg66kg18,500mソ連/ロシア
    PRC-60
    (BM-21PD用)
    水中爆発弾頭2.75m20kg75.3kg300m/5,000mソ連/ロシア
    Type 90A破砕性弾頭2.75m18.3kg12,700km/32,700km中国
    M21-OF-FP破砕性弾頭2.87m6.35kg65.4kg5,000〜6,000m/20,400mルーマニア
    M21-OF-S破砕性弾頭1.927m6.35kg46.6kg1,000m/12,700mルーマニア

    この他にも、焼夷弾化学兵器弾頭、照明弾、対人地雷散布弾などの各種弾頭を搭載したロケット弾を装備可能。

主な派生型

  • BM-21「グラート」:
    初期生産型。

  • BM-21B「グラート1」:
    ZIL-131 6×6トラックに36連装発射機を搭載したタイプ。

  • BM-21V「グラートV」:
    GAZ-66 4×4トラックに12連装発射機を搭載した空挺部隊向けモデル。

  • 9A51「プリマ」:
    ZiL-131 6×6トラックに50連装発射機を搭載したタイプ。
    射撃統制装置と弾薬運搬車が付属。

  • 9K132「グラートP」:
    個人携帯が可能な単装型。
    ソ連・ロシア軍では使用されていないが、世界中のゲリラ組織や民兵、軍閥が使用している。

  • BM-21PD:
    海軍型。上陸阻止用として装備したもので、構成は基本型と変わらない。
    PRC-60 水中爆発弾頭を装備したロケット弾を使用する。

  • A-215「グラートM」:
    20連装コンテナ8基で構成される海軍向け派生型。

  • 81式:
    中国製の派生型。
    中国製トラックを使用し、運転席に防炎シールドが存在する以外はオリジナルと殆ど変わらない。

  • BM-11:
    北朝鮮での派生型。
    一部に日本製のトラックに発射器を搭載した物もある。

  • アラーシュ:
    イランでの派生型。
    レバノンのヒズボラ?に供与され、イスラエルへの攻撃に使用されている。

  • Sark-18:
    エジプトでの派生型。
    外見上はオリジナルとほとんど変わらない。

  • RM-70
    チェコスロバキアでの派生型。詳しくは項を参照。

  • WR-40「ラングスタ」:
    ポーランド製の派生型。
    Jelcz P662D.35 6×6トラックに、40連装発射器と射撃統制装置を搭載している。

  • APR-21:
    ルーマニア製の派生型。
    ブチェジ(Bucegi)SR-114 4×4トラックに21連装発射機を搭載している。

  • APR-40:
    APR-21の後継として開発された型。 DAC-665T 6×6トラックに40連装発射機を搭載している。

  • BM-21A「ベルグラート」:
    TMZ-8424ディーゼルエンジン(425馬力)を搭載するMAZ-631705 6×6トラックをベースに開発された。
    増設されたラックに追加のロケット弾40発を搭載できる。

  • BM-21M「フラードU」:
    ウクライナでの派生型。KrAZ-6322-121「フラード」とも呼ばれる。
    BM-21の後継として開発され、KrAZ-6322 6×6トラックを種車に製造された。
    一部の車輌は、車体を延長してロケット弾40発を追加搭載できるようになったほか、種車にKrAZ-260を使用した仕様もある。


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