【榴弾】(りゅうだん)

High Explosive (HE)

砲弾の一種で、金属などでつくられた外殻を爆薬などで飛散させて危害を加えるもの。
「榴」の字は植物のツツジを意味するが、これは日本語における慣用語で、本質的な意味はない。
弾殻の飛び散る様子が果物の柘榴(ざくろ)に似ている事から「柘榴弾(ざくろだん)*1」と呼ばれ、次第に略されていったという説が有力。

外殻の破片はノコギリ状の歪な刃となって無数に飛び散り、人の胴体を背骨ごと引き裂くほどの殺傷力に達する。
至近距離から全身に浴びれば間違いなく即死、破片一個でも四肢欠損など治癒不能な後遺症を残す事が少なくない。
また当然、直撃や至近弾を受ければ、その爆風でよほど強固な装甲以外は粉微塵に粉砕される。
対車両攻撃ではエンジン火災を誘発するため、遺体は欠損のひどい焼死体で発見される事が多い。*2

主に人員や装甲化されていない車輌、資材などを攻撃するのに使用される。
反対に、戦車のような重装甲に対しては、たとえ直撃しても装甲の内部には被害を及ぼせない事が多い。
現在では装甲貫徹力にも優れる多目的対戦車榴弾等の発明により、主力戦車で使用される事は少ない。
しかし砲兵制圧射撃においては未だに主力である。

高射砲ミサイルの弾頭に用いられる榴弾は「破片効果弾頭」などと呼ばれる。
爆薬を増やして装甲貫徹性を増やし、航空機ミサイル・舟艇・軽装甲車輌などに用いられるのが一般的。

関連:榴散弾 粘着榴弾 手榴弾 曳下射撃


*1 「弾けた柘榴のよう」なのは弾体ではなく、至近弾を受けた犠牲者の遺体だという説もある。
*2 車体などの障壁なく榴弾を浴びた場合、それがかつて人体であった事すら判別不能になるか、重態ではあっても衛生兵に救助される余地が残っている事が多い。
  一方、交戦中に火災の中へと突入できる衛生兵はほとんどいないため、遺体や生存者が放置される可能性が比較的高い。


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