【礼砲】(れいほう)

Gun Salutes.

儀礼や式典のために、破壊・殺傷の意図なく火砲を発射する事。
当然ながら実際に砲弾を用いる事はなく、空包を発射して音だけを立てる。

かつての時代、友好関係を結ぼうとした勢力が「攻撃の意図がない」事を示すために全ての砲を使用済み・発射不能状態にした事を起源とする。
現代ではもはや実質的な意味をもたない行為だが、国際慣習として儀礼的に行われている。

この慣習が成立した当時、火砲は一度発砲すると、次弾以降の再発射には非常に長い時間がかかるものであった*1
つまり、短時間に一定回数の空包を撃つと、戦闘発生時に致命的な「間隙」が発生することになる。
そうした「隙」を意図的に見せる事で、相手に対して敵意がない事を示したのである。

国際慣習としての礼砲

現在では国際的な慣習として、軍事的式典に臨席した賓客の身分に応じて一定回数の礼砲を撃つ事が定められている*2
その例は以下の通りとなっている。

国旗、元首(国王・天皇・上皇・大統領など)とその同伴家族21発
副大統領、首相、国賓として招かれた外国人19発
閣僚、特命全権大使、大将(及びこれに相当する職階の軍人*3。以下同じ)17発
特命全権公使、中将15発
臨時代理大使、少将13発
臨時代理公使、総領事、准将代将司令官たる大佐*411発
領事7発

日本における礼砲の扱い

現在の日本では、防衛大臣が招待した賓客の到着・帰還に際して、また、国際儀礼上必要な時に自衛隊が礼砲を発射して応対することとされている。
空路で入国した賓客に対しては、陸上自衛隊特科部隊*5から臨時編成された礼砲中隊が応対する*6
艦船での入国(親善目的で寄港する練習艦など)については、(東京湾では)海上自衛隊観音崎礼砲台*7が応対する。

また、海上自衛隊の艦船が外国を訪問した時には相手国の軍隊から礼砲での応対を受ける。
この時も、礼砲を受けた艦隊の代表(指揮官の座乗する「旗艦」)が答礼として同様に空砲発射を行う*8


*1 当時の砲の主流は、(現代の迫撃砲のように)砲口から砲弾と装薬を装填して撃つものであった。
 また、発射するごとに砲身内部を清掃する必要もあった。

*2 かつては「礼砲は奇数回」「弔砲は偶数回」程度の決まりしかなく、際限なく発射されていた。
*3 自衛官が礼砲を受ける場合は「統合幕僚長及び陸上・海上・航空幕僚長である陸海空将大将」「幕僚長ではない陸海空将中将」「陸海空将補少将」となる。
  なお、現在の自衛隊には「准将」及び「代将」に相当する階級はないが、一等陸海空佐のうち「代将たる大佐」の職責にある者がこれに準じている。

*4 日本等では、代将旗の掲揚のみにとどまる。
*5 たとえば、東京では第1師団隷下の「第1特科隊」など。
*6 陸自ではこの用途のためだけに、正面装備としては用途廃棄となっている105mm榴弾砲を少数、稼動可能な状態で維持している。
 (平素は補給処等で保管されており、必要に応じて一時的に管理替えを受けて使用する)

*7 同所にはMk.22・3インチ砲が3門備えられている。
*8 海上幹部候補生の遠洋練習航海のために建造され、練習艦隊の旗艦を務めることから、礼砲を受ける機会が多い練習艦「かしま(JS Kashima TV-3508)」には、本来の艦載砲である3インチ単装速射砲とは別個に礼砲専用の小型砲が備えられている。

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