【用途廃棄】(ようとはいき)

自衛隊に於ける用語で、運用寿命の尽きた物資を処分する事。略して「用廃」。
基本的にはゴミ・産業廃棄物として廃棄されるが、別用途で再利用される事もある。

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F-104J 697号機。1980年那覇基地での姿。

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上記機体の2001年の姿。千葉県某所国道沿いで放置中。

再利用の例

用途廃棄となった物資の再利用例として、いくつかの例を挙げる。


破損した消耗品は、兵士のレクリエーション用に利用される事がある。
例えば、廃棄処分となったモップの柄がイベント用の装飾バイクの材料に利用された例など*1


運用寿命に達する前に用途廃棄として除籍された兵器は、他国の軍に売却される事がある。
これは普通、艦艇航空機を後継機種に入れ替える際に発生する。
また、戦時中に損耗することを前提として増産された余剰兵器も、事態の収束によって軍縮がなされると外部に売却される事がある。


旧式化して用途廃棄となった戦闘車輌や艦艇航空機といった大型兵器は、訓練・演習や新兵器の運用実験の際に「実物大標的」として用いられることもある。
この場合、実戦と同じように実弾を命中させて破壊することもあるが、費用などの関係で実弾が使えない場合には、標的となる旧式兵器にセンサーやカメラを取り付けておき、模擬弾を撃たせたり一定時間ロックオンを継続させたりして実戦の状況を再現し、カメラの映像やセンサーの検知データを基に「実戦であれば撃破出来ていたかどうか」を検証することもある。


歴史的意義のある旧式兵器は、第一線を退いた後も儀礼用の装備として維持される事がある。
儀仗隊はあえて旧式の小銃を用いる事があるし、礼砲有効射程や破壊力は要求されない。

これらは厳密には「用途廃棄」とは異なる。

また、それらの旧式兵器が「将兵の教育の参考」「継承すべき誇り・伝統の象徴」などという名目で基地内に展示されたり、(兵器としては使用不可にされた上で)外部に譲渡されて博物館などの展示物になる場合もある。
展示の名目で外部に譲渡された場合、(譲受者側の世代交代・経済的問題などの理由で)その意義を理解できない者が現れると放棄・破壊の憂き目を見ることもままある。


任務のために持ち出された装備品は、任務終了後に「用途廃棄」として現地に放棄される事がある。
この場合、現地人がそうした物品をどう取り扱うかは軍部の預かり知る所ではない。
平和維持活動・災害派遣・人道支援などでは、「寄贈するために廃棄する」ような場合もある。

ほとんどの国家では「軍の装備品を他国に寄贈する」行為の法的正当性について議論の余地がある。
よって、「寄贈ではなく、廃棄物が現地人の手に渡っただけだ」という体裁を取ることを余儀なくされる場合もある*2

物資の横流し

用途廃棄は、軍人と交流を持つ犯罪結社*3にとっては密売を行う絶好の機会でもある。
書類上では用途廃棄されているはずの軍事物資が、実際には地下ルートで密売されていた、という事例は少なくない。

当然、銃火器や機密物資の横流しは犯罪であり、大抵の軍の内部法規に抵触する。
またそもそも、官給品を売却して個人的な収入を得る事自体が横領の罪に問われる。

どれほど厳格な軍隊でも、消耗品を自宅に持ち帰る程度の軽微な事例は必ず散見される。
それをどこから横領とみなし、どの程度まで厳密に処罰するかは個々の軍による。
一般論として、軍事機密や多額の金銭に関わる事例でなければ黙認される事は多い。

例えば、自衛隊では戦闘糧食に関する「黙認された不祥事」が妙に多い。


*1 ブルーインパルスジュニアを参照。
*2 日本では2011年に武器輸出三原則等の緩和が閣議決定され、殺傷目的でない装備の供与ができることになった。
*3 軍人が休暇に歓楽街で遊ぶ事を禁じる法律は基本的にないし、あっても遵守されない。
  そして、犯罪結社の勢力下に置かれていない歓楽街などというものは絶対に存在し得ない。
  職業犯罪者が賄賂や脅迫などで軍人と繋ぎを持とうと思えば、標的を探すのは決して難しい事ではない。


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