【防衛大綱】(ぼうえいたいこう)

日本の国防政策の基本的指針。正式には「防衛計画の大綱」という。
内閣の安全保障会議などの検討を経て、閣議で検討・決定される。

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歴代の防衛大綱

防衛大綱は1976年に策定されて以来、2013年現在までに三度改定されている。

第1次防衛大綱
1976年策定、1995年廃止。
当時の米ソ冷戦に対応したもので、ソ連を第一の仮想敵国として「侵略に対処しうる防衛体制の構築」によって侵略の抑止を図ることとされ、ソ連が擁する核兵器の脅威についてはアメリカの核報復力に依存していた。
第2次防衛大綱
1995年策定、2004年廃止。
1980年代後半以後の世界的な軍事情勢の変化(東欧諸国の民主化、ソ連の解体に伴う冷戦の終結など)によって、旧大綱の前提が変わったことを受け「基礎的防衛力構築」の踏襲などに加え、大規模自然災害への対処や「安全保障環境の構築への貢献」などが明示された。
また、自衛隊のハイテク化・近代化を進め、さらに弾力的な運用を目指すこととなり、予備自衛官制度の拡張(即応予備自衛官予備自衛官補の創設)や陸上自衛隊の戦略級部隊単位の改編*1が行われた。
第3次防衛大綱
2004年策定、2010年廃止。
1990年代後半以後に顕在化した「大量破壊兵器の拡散」「国際テロリズムの激化」による国際情勢の変化を受け、従来の大綱の内容に「(国連PKF活動などの)国際貢献活動への参加」などが加わった。
これにより、自衛隊法や防衛庁設置法が改正され、防衛庁が「防衛省」になった。
第4次防衛大綱
2010年策定。
南西諸島方面での中国海軍の活動や北朝鮮の弾道ミサイルといった脅威、さらに国際テロリズムへの機動的・実効的な対応を目指して「動的防衛力」を整備するという方針が打ち出されている。
しかし、2013年に昨今の更なる情勢変化を受けて新たな見直しが決定された*2

2013年の見直し

前項にあるとおり、2010年に策定された現在の防衛大綱は、策定後に起きた国内外の政治・軍事情勢変化を受けて抜本的な見直し作業が進められている。
2013年5月、政府与党の国防関係会議で以下のような要素を盛り込んだ案が提示された。

  • 冒頭に「自主憲法の制定」と「国防軍」の創設を明記すると共に、集団的自衛権の行使などを盛り込んだ「国家安全保障基本法」の制定を盛り込む。
  • 巡航ミサイル等の)「敵基地攻撃能力の保持」について「検討を開始し、速やかに結論を得る」こととする。
  • 自衛隊海兵隊的機能を付加。このために、水陸両用戦闘車輌MV-22などを装備した「水陸両用部隊」の創設を提案する。
  • 陸上自衛隊に「陸上総隊*3」を設けること。
  • 自衛隊員の定員拡充
  • 軍事費の増額
  • 「海外派遣恒久法」の制定
  • 武器輸出の促進
  • アメリカ海兵隊普天間基地の辺野古への移設
  • 国家安全保障会議(NSC)創設及び「秘密保護法」の制定

*1 戦車師団1・軽歩兵師団12を戦車師団1・機械化/自動車化歩兵師団8・自動車化歩兵旅団3及び空中機動旅団1にすると共に編制を地域の実情に合わせて改編。
*2 同時に策定された、2011年〜2015年までの中期防衛力整備計画は廃止される見通し。
*3 海自の「自衛艦隊」・空自の「航空総隊」と同様に、全戦闘部隊を統括指揮する高級司令部と考えられる。

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