【表面効果】(ひょうめんこうか)

Surface effect / Ground effect.

物体(特に翼や流線型のもの)が地表付近を通過する際に発生する気圧変化の影響。
水上航行を含む文脈では「表面効果」、陸上を想定する場合は「地面効果」と訳する事が多い。

翼が周囲の空気を切り裂き押し退けて進めば、それによって圧された空気は機体の上方や下方に逃げていく。
この時、空気が拡散するのに十分な空間がないと、空気が急激に圧縮され、空気抵抗で生じる揚力が増大する。
これは離陸着陸に際して必要な速度を低減させ、高空ならば失速するような低速でも制御を維持させてくれる。

反面、表面効果は低空飛行における気流の影響を大きくし、機体の姿勢を崩す事にも繋がる。
これは航空事故を招く大きな要因となっており、離陸着陸は航空機の運用に際して最も危険な操作である。
安定した滑走路を確保できない状況では特に深刻で、艦上機ヘリコプターにとって重大なリスク要因となっている。

影響が顕著に出てくるのは、おおむね対地高度主翼の翼幅の半分以下になった場合である。
表面効果を考慮する必要がある状態を「地面効果内(IGE, In Ground Effect)」、そうでない状態を「地面効果外(OGE, Out of Ground Effect)」と呼ぶ事もある。

関連:表面効果翼機 エアクッション艇

ダウンフォース

揚力を増大させて浮上しやすくするのは、航空機では有用だが、地上車両ではほとんど害悪である。
このため、車両に関しては表面効果は上向きの浮力ではなく、下へと押しつける圧力(ダウンフォース)として利用される。

典型的な設計は、車体が地面に密着し、空気が下側に入り込まず、上側にだけ逃げていくような形状である。
こうすると足下の空気から揚力がほとんど生じなくなりつつ、機体上部で圧縮された空気によってダウンフォースが働く。
このダウンフォースは機体が浮上してタイヤが空転するのを防ぎ、高速走行中でも安定した操作を可能としてくれる。
もっとも、そのような運用を行えるのは事実上レーシングカーだけで、実用上の利便性はほとんど見出されていない。

ダウンフォースを期待できるほど最適化した状態で高速走行すると、公道に見られるような凹凸で簡単に転倒するようになる。
また、「接地部分をガリガリ削りながら走る」という、経済的にも社会通念的にも大変よろしくない運用を強いられる。


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