【飛龍】(ひりゅう)

  1. 大日本帝国海軍・中型正規空母「飛龍」。

    1930年代、日本海軍が策定した「艦艇第二次補充計画」において「蒼龍?」型の二番艦として発注・建造された中型正規空母である。
    しかし、設計の途中で本艦の完成がロンドン海軍軍縮条約の失効後になる事が判ったため設計が見直され、蒼龍?とは大きく異なった艦型を持つ事になった。

    蒼龍?との外見上の大きな差異は、艦橋?蒼龍?とは逆の左舷側にあり、視界を確保する為に蒼龍?より一段高く大型になっている点である。
    また、武装も強化されて排水量も1,500トン程多くなっているが、搭載機数は変わっていない。
    上空から見ると、非常によく似た艦型をしていたので、識別の為、飛行甲板左舷後方に「ヒ」と書かれていた。(ちなみに、蒼龍?は「ソ」ではなく「サ」)

    1939年7月5日に横須賀工廠で竣工し、太平洋戦争開戦時には僚艦蒼龍?と共に山口多聞少将指揮の下第二航空戦隊を構成。
    南雲機動艦隊(第一航空艦隊)の中核として真珠湾攻撃に参加して初陣を飾り、その後もウェーク島攻略、インド洋作戦等に参加し戦果を重ねた。

    しかし、その歴戦艦も1942年6月5日、ミッドウェー作戦において僚艦の赤城加賀蒼龍?アメリカ軍の攻撃により被弾・炎上する中で最後まで孤軍奮闘。
    搭載されていた艦載機で米海軍の空母「ヨークタウン」を大破させたものの力及ばず、同空母2番艦「エンタープライズ」・3番艦「ホーネット」から発艦したSBD「ドーントレス」急降下爆撃機24機の空襲により、1,000ポンド爆弾4発を被弾・炎上し、翌日、味方駆逐艦「巻雲」の魚雷により自沈処分となった。

    性能緒元
    排水量
    基準/公試
    17,300t/20,165t
    全長227.35m
    飛行甲板216.9m×27.0m
    全幅22.32m
    吃水7.74m
    主缶ロ号艦本式罐・重油焚×8基
    主機艦本式オールギアードタービン×4基4軸推進
    出力153,000hp
    燃料重油:3,750t
    最大速力34.59kt
    航続距離7,670カイリ(18kt)
    乗員1,103名
    兵装八九式40口径12.7cm連装高角砲×6基12門
    九六式25mm高角機銃×31門(3連装7基+連装5基)
    搭載機常用57機(艦戦×12機,艦攻×9機,艦爆×27機,艦偵×9機)、補用16機
    1941年12月常用機:零戦九九艦爆九七艦攻×各18機
    装備昇降機×2基

    同型艦
    艦名主造船所起工進水就役喪失除籍
    飛龍横須賀海軍工廠1936.7.81937.11.151939.7.51942.6.61942.9.25

  2. 1944年に帝国陸軍航空隊が制式採用した爆撃機四式重爆撃機」の愛称。
    機体の詳細は四式重爆撃機の項を参照のこと。

  3. 陸上自衛隊におけるUH-60JA多用途ヘリコプターの機種別コールサイン

  4. ASTRO-E「ひりゅう(飛龍)」。
    ISAS(文部省宇宙科学研究所。現在のJAXA(宇宙航空研究開発機構)の前身のひとつ)が開発したX線天文衛星「ASTRO-E」に用意されていた愛称。
    同衛星は2000年にM-Vロケット(4号機)で打ち上げられたが、第1段ロケットが異常燃焼を起こしてノズルを破損、それによる速度不足のため予定の軌道へ乗せることができず、墜落してしまった。

  5. JA1001「飛龍号」。
    1968年、日本飛行船株式会社が西ドイツ(当時)から輸入した商用軟式飛行船。
    元々は、1942年にアメリカ海軍の練習船として就役したものを、西ドイツの百貨店「シュパーブ(Schwab)」が広告宣伝目的で買い取って運用していたものだった*1
    輸入後、本船は日立製作所にチャーターされ「日立キドカラー*2」という愛称で広告宣伝用として運用されていたが、翌1969年、徳島の津田海岸埋立地で繋留中に風速30m以上の暴風に巻き込まれ、マストのワイヤーが切れて損壊、飛行不能になって廃棄された*3

    なお、本船に搭載されていたエンジンは現在、航空科学博物館に保存されている。

  6. 消防船「ひりゆう(初代)」(MSA Hiryu、FL-01)
    海上保安庁が保有していた消防船。
    1960年代に石油タンカーの海難事故が相次いで発生したことで、化学消火能力を有し、タンカー火災に対処できる大型の消防艇が必要とされたことから計画・建造された。

    船体は操縦性を重視し、放水時の安定性や回頭能力に優れた双胴船型で、両船体の上に15万t級のタンカーの火災に対処するための高さ15mの放水櫓を設けた独特のフォルムを持つ。
    主機関は消防ポンプ駆動にも用いられるが、全力放水中でも6〜8ノットで前後進が可能で、後進を容易にするためにスクリュープロペラは可変ピッチプロペラが採用された。
    その他装備として、自衛用に8箇所から海水を扇状に噴霧するノズルや可燃ガス警報装置を2箇所に設置したほか、全扉窓を閉鎖して水面上8mから換気する事で船内を与圧することが可能となっている。

    同型船として5隻が建造されたが、1番船「ひりゆう」が老朽化により2代目(後述)に更新され、残り4隻も2013年に消防能力を持つ「よど」型巡視艇が導入された事によりすべて退役している。

    スペックデータ
    排水量110t総トン
    全長27.5m
    全幅10.40m
    喫水2.20m
    深さ3.80m
    主機関池貝・ベンツディーゼルエンジン(出力1,100hp×2)×2基 2軸推進
    速力13.2ノット+
    航続距離770海里
    乗員14名
    搭載量消火用泡原液:14,500L(約16.9t)
    装備泡用放水銃(放水能力:3,000L/分)×2基(第1放水甲板(櫓最上層)と船首)
    海水専用放水銃(放水能力:6,000L/分*4)×2基(第2放水甲板(櫓中層))
    泡水兼用放水銃(放水能力:1,800L/分)×1基(船橋天井)
    ホース接手(送水能力:6,000L/分)×両舷各5基

    同型艦
    艦番号艦名主建造所竣工退役所属
    FL-01ひりゆう
    (MSA Hiryu)
    日本鋼管
    鶴見建造所
    1969.3.41997.12.2第三管区横浜海上保安部
    (最終配属地)
    FL-02しようりゆう
    (MSA→JCG Shoryu)
    日本鋼管
    鶴見建造所
    1970.3.42013.3.4第四管区四日市海上保安部
    FL-03なんりゆう
    (MSA→JCG Nanryu)
    日本鋼管
    鶴見建造所
    1971.3.42013.3.26第五管区和歌山海上保安部
    海南海上保安署
    FL-04かいりゆう
    (MSA→JCG Kairyu)
    日本鋼管
    鶴見建造所
    1977.3.182013.3.12第五管区大阪海上保安監部
    堺海上保安署
    FL-05すいりゆう
    (MSA→JCG Suiryu)
    横浜ヨット1978.3.242013.3.12第六管区水島海上保安部

  7. 消防船「ひりゆう(2代目)」(MSA→JCG Hiryu FL-01)
    老朽化した先代のひりゆう型を更新するために設計・建造され、海上保安庁が保有する消防船。
    同型船はない。
    先代と同じく、船型は双胴型で、大型船の火災に際し高所からの放水が可能なように、最大高が27mに達する伸縮式の放水塔を装備する。
    また、運動性の向上のため、同庁艦艇として始めてシュラウド・リング式旋回式可変ピッチ・プロペラを採用している。

    第三管区横浜海上保安部に所属し、横浜港を母港としている。
    平時においては、危険物搭載船の警戒業務や通常の警備救難業務に従事している。

    スペックデータ
    排水量280総トン
    全長35.0m
    全幅12.2m
    喫水3.4m
    深さ5.5m
    主機関ディーゼルエンジン(出力2,000hp×2)×2基 2軸推進
    速力14ノット
    航続距離N/A
    乗員14名
    搭載量消火用泡原液:22,000L
    粉末消火剤:約5,100kg
    装備消防用ポンプ(25,000L/分)×2基
    泡消火液・水兼用放水銃(放水能力:5,000L/分)×2基(伸縮式放水筒)
    泡消火液・水兼用放水銃(放水能力:7,000L/分)×2基(放水甲板)
    泡消火液・水兼用放水銃(放水能力:1,000L/分)×2基(上甲板船首部)
    水専用放水銃(放水能力:20,000L/分)×1基(船橋甲板上部)
    粉末ノズル(放出能力:45kg/秒)×1基
    自衛噴霧装置(190L/分×17本、110L/分×5本)

    同型艦
    艦番号艦名主建造所竣工所属備考
    FL-01ひりゆう
    (MSA→JCG Hiryu)
    日本鋼管
    鶴見建造所
    1997.12.24第三管区
    横浜海上保安部
    京浜港の
    港長業務指定船*5


*1 登録記号はL-0019→L65N(ここまで米)→D-LAVO→D-LISA(ここまで西独)→JA1001と変遷した。
*2 当時、同社が製造販売していたカラーテレビの商品名。
*3 本船の喪失後、日立の弘報活動は国鉄(日本国有鉄道)とタイアップした宣伝列車「日立ポンパ号」へ引き継がれた。
  また、本船の運行母体であった日本飛行船は本船の喪失後間もなく解散したが、複数の企業が飛行船広告に名乗りを上げたことから「オリエント飛行船」という企業が作られ、飛行船「レインボー号」による飛行船広告がスタートした。

*4 これは本艦が建造された当時の日本では最大である。
*5 特定港湾において、その港を所管する海上保安部長・署長が「港長」として乗船し、航行の安全や危険物荷役の安全指導などを業務とする巡視船艇。

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