【直昇9】(ちょくしょうきゅう)

中国がフランスのアエロスパシアル社(現エアバス・ヘリコプターズ)が開発・製造するヘリコプターAS365N「ドーファンII」およびAS565「パンサー」ライセンス生産した機体。
Z-9とも呼ばれる。
哈爾浜飛機工業集団有限公司が開発を担当した。
NATOコードでは「ハイツン*1」と呼ばれる。

1980年代から開発が開始され、最初はノックダウン生産に近い形態で生産された。
1988年からは国産コンポーネントの使用範囲を更に拡大し、エンジンを中国製渦軸8A(WZ-8A)に変更したZ-9A-100が開発されている。

2009年までに軍用合わせて200機以上が生産されたほか、輸出も行われており、マリやカンボジア、ラオスなど7カ国に輸出されている。

派生型として、対潜ヘリコプター型のZ-9Cや攻撃ヘリコプター型のWZ-9(武直9)がある。

スペックデータ

直昇9(Z-9)
乗員操縦手1名+乗員10名/操縦手・副操縦手+乗員9名
全長13.46m
全高4.01m
全幅11.93m(ローター直径)
空虚重量1,975kg
最大離陸重量3,850kg
エンジンチュルボメカ アリエルC1ターボシャフト(出力710hp)×2基
速度
(最大/巡航)
305km/h / 250〜260km/h
燃料搭載量
(機内/増槽
1,000L/400L
航続距離1,000km(増槽付き)
上昇限度4,500km
ホバリング上昇限度1,950m/1,020m(海面効果なし)
ペイロード
(機内搭載/吊り下げ)
1,900kg/1,600kg
最大飛行時間5時間


武直9(Z-9W/WZ-9)
乗員3名
全長13.46m
全高3.47m
全幅11.94m(ローター直径)
重量3,800kg
最大離陸重量4,100kg
エンジン渦軸8A(WZ-8A)ターボシャフト(出力734hp)×2基
速度
(最大/巡航)
315km/h / 255km/h
航続距離660km
上昇限度4,220m
ホバリング上昇限度2,590m/1,175m(海面効果なし)
武装紅箭8(HJ-8)対戦車ミサイル×4発
天燕90(TY-90)空対空ミサイル×4発
HF-25 25連装57mmロケット弾ポッド×2基
HF-7D 7連装90mmロケット弾ポッド×2基
12.7mm重機関銃ポッド×2基
23mm機関砲ポッド×2基(弾薬240発)など


直昇9C(Z-9C)
乗員3名
全長13.46m
全高3.47m
全幅11.94m(ローター直径)
重量2,302kg
エンジン渦軸8A(WZ-8A)ターボシャフト(出力734hp)×2基
速度
(最大/巡航)
305km/h / 260km/h
航続距離1,000km
ホバリング限度2,620m
武装魚7(YU-7)/ET52(A244S)324mm短魚雷対潜爆雷など
天龍10(TL-10)空対艦ミサイル×2発(Z-9D)


派生型

  • 直昇9「海豚」(Z-9):
    AS365N1のライセンス生産型。

    • Z-9A:
      AS365N2のライセンス生産型。

    • Z-9EA:
      A型の輸出型。

    • Z-9A-100:
      A型をベースにコンポーネントを国産化した型。
      エンジンは渦軸8A(WZ-8A)を搭載。

  • Z-9B:
    100型ベースにさらに国産化率を向上した型。

  • Z-9C:
    AS565「パンサー」をベースに改良を加えた対潜/哨戒ヘリコプター型。
    機首にXバンドのKLC-1水上捜索レーダーを装備。
    対潜兵器として魚7(Yu-7)(アメリカ製Mk.46?のコピー)またはET52(イタリア製A.244S?のコピー)対潜魚雷を2発装備できる。

    • Z-9C(訓練型):
      海軍飛行学院で運用されている訓練機型。

    • Z-9D:
      天龍10B(TL-10B)空対艦ミサイルの運用能力を付与した対艦攻撃型。
      機体左右のパイロンに合計2発のTL-10を搭載する。
      試製のみで量産未確認。

    • Z-9EC:
      C型の輸出型。
      パキスタン海軍で採用された。

  • Z-9F:
    武装警察向けのモデル。

  • Z-9(指揮・通信型):
    A型ベースの空中コマンドポスト型。

  • Z-9(砲兵観測型):
    砲兵部隊の指揮官が搭乗して運用される砲兵観測型。

  • Z-9W(武直9(WZ-9)):
    Z-9をベースに開発された武装ヘリコプター型。

    • Z-9WA:
      Z-9Wの改良型。
      搭載兵器の増加と夜間戦闘能力が付与されている。
      従来のコクピット左上部の光学照準センサーは撤去され、替わりに機首下部にYY-1観測/照準センサーが搭載された。
      また、AS565のパイロンを参考にした「海鴎(カモメ)翼型」パイロンを装備し、一基のパイロンに搭載可能なミサイル数は2基から4基に増加した。
      この改良により後部ドアが廃止されている。

    • Z-9WE:
      Z-9WAの輸出型。

    • Z-9G:
      AS565ベースの武装ヘリコプター型。
      装備や外観はZ-9WAに類似している。

    • Z-9WZ:
      H450ベースの多用途型。
      火器管制装置が改良され、ADK-9空対地ミサイルやHN-6携行対空ミサイルなどの運用能力の付加、夜間戦闘能力が向上している。
      主に近接航空支援偵察・治安維持などの任務を想定している。

    • Z-9ZH:
      Z-9WAに似た機体。
      中国軍の香港駐留部隊に配備されている。

  • DZ-9(Z-9EW):
    電子戦機型。

  • Z-9(レドーム装備型):
    機首に大型のレドームを装備した機体。詳細不明。

  • Z-9(ミリ波レーダー試験機):
    主ローターマスト上部にレドームを装備した機体。

  • H410A:
    Z-9の民間型。
    エンジンをチュルボメカ アリエル2C(出力840hp)に換装している。
    中国の公安や海警部隊でも運用が行われている。

    • H425:
      H410Aベースの民間型。
      最大離陸重量が4,250kgに増加している。

  • H450:
    哈爾浜が開発中のZ-9の民間型。
    最大離陸重量が4,500kgに増加している。

  • 武直19(Z-19)「黒旋風」?
    Z-9をベースにした攻撃ヘリコプター。詳しくは項を参照。


*1 Haitun:海豚、ドーファンと同じくイルカの意。

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