【地雷】(じらい)

land Mine / Mine*1.

地中に埋設される爆弾
多くは信管部分だけが露出し、一定以上の圧力がかかると起爆する。
近年では磁気振動センサーなど高度な電子制御を行うものもある。

対人地雷では、圧力がかかった時に安全装置が解除され、その圧力が解除された時に起爆する設定になっているものもある。
運がよければ、地雷を踏んだ兵士は死の恐怖に怯えながら長時間その場に立ち尽くす事になる。
そして、その不幸な兵士一人を救うために戦闘工兵などが長時間その場に拘束される。

最小では人間の片足だけを引きちぎるものから、成形炸薬弾主力戦車を吹き飛ばすものまで様々。
当然ながら威力が高いほど巨大で埋設・隠蔽が困難なため、仮想敵に応じて使い分けられる。

暗殺に用いる事もあるが、基本的には防御戦闘に用いられる。
適切に設営された地雷原は、敵の前進を停止させる強固な壁として機能する――これは現代の陸戦における要塞ともいえる。

地雷の運用と安全性

地雷は一般に「民間人をも巻き込む無差別的な兵器」という印象が強い。
しかし軍隊における運用教則は、実はその逆である。

誰が巻き込まれるかわからないような無秩序な地雷埋設は、利敵行為であるから軍法会議にかけられる
工兵は地雷が味方を巻き込まない事を保証する能力を持っている。可能なのにそうしないのなら、それは意図的に味方を殺そうとしたに等しい。

地雷を安全に運用するためには、常に正確な測量と完全な記録が要求される。
埋設位置の記録は、たとえ部隊全滅しても失われないよう複写され後送される。
また、測量基準点がズレないよう、空爆にも耐えられる頑丈で巨大な杭を打ち込んで基準点とする。
埋設作業自体も厳密にパターン化され、事後の撤去作業が安全に行えるよう取り計らわれる。

とはいえ、そうした安全対策は、教練と装備に膨大な軍事予算を費やせる正規の工兵にのみ可能である。
民兵ゲリラが地雷を運用した場合、戦後に測量書類が残るかは疑わしい(測量したとすればの話だが)。
最悪の事例では、文盲の人間がろくに訓練も受けずに個人で地雷を携帯して、適当な道端や草むらなどに埋設する事すら珍しくない。
そしてテロリズムとしての短絡的な観点で考えれば、無秩序な埋設でさえ脅威的な武器となる。

対人地雷廃絶運動

20世紀末期、前述のテロリズムに地雷が利用された事を契機に、平和主義者が反地雷的なプロパガンダを展開した。
これは1997年に「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約?(通称:オタワ条約)」として国際的な法的根拠を獲得し、多くの国で対人地雷の運用が法的規制を受けている。

ただし、この運動が地雷がもたらす人道上の危機に対して有効だったかといえば、これは疑わしい。
国連やオタワ条約に配慮して対人地雷を捨てられるような国なら、そもそもゲリラ民兵が活動しているはずがない。
また、地雷の製造元にしても、実際に紛争地帯に地雷を輸出している国の多くはオタワ条約を黙殺している。

対人地雷の廃絶を訴えるオタワ条約が「人道上の悲劇に対する対策」である、という建前自体にも疑問の余地がある。
軍事的観点から見ると、オタワ条約は「批准しなかった国が批准国に対して明白な軍事的優位を獲得する(=砲艦外交が可能な)」構造になっているからだ。
オタワ条約を「他国を条約で縛って地雷を運用不能状態に陥れる事だけが存在意義の条約であり、遵守すべきでない」という視点で捉える陰謀論もある。

とはいえ、紛争地帯の民間人が無数の対人地雷によって生活と生命を脅かされていたのは事実であり、疑問の余地はない。
そしてもちろん、オタワ条約加盟国が地雷の撤去・廃絶を働きかけなければ生き延びられなかった人々が無数にいた事も事実である。
地雷から民間人の命を救うために多くの人間が動いた事も、まったくもって事実である。
しかし、その英雄的行為と業績の背後で、誰が何を企図しているかは必ずしも定かではない。


*1 mineは「鉱山」の意。黎明期の地雷が敵要塞の真下まで坑道を掘って行う発破工作であった事に由来する。
  また、単にMineという場合、地雷と水雷の総称を指す。


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