【弾道ミサイル】(だんどうみさいる)

Ballistic Missile (BM)
宇宙ロケットに近い形状をした長距離ミサイル。またはペイロード爆薬を搭載した宇宙ロケット。
ロケットエンジンで大気圏外に上昇、極超音速で巡航し、大気圏に再突入して目標へ到達する。
現在の技術では巡航中に撃墜する手段が確立されておらず、再突入後のごく短時間にしか迎撃できない。
反面、慣性航法装置(INS)でのみ制御されるため、命中精度は極めて劣悪で、核兵器などによる戦略爆撃の用途にしか利用できない。

弾道ミサイルと宇宙ロケットはそれぞれ別々の意図を持って設計されているものの、構造に大差はない。
弾道ミサイルに人工衛星を搭載して静止軌道に乗せる事は十分可能*1であるし、宇宙ロケットに核兵器を搭載して狙った場所に墜落させるのも困難ではない。
ならず者国家などはしばしば弾道ミサイルの実験について「核兵器の実験ではなく宇宙開発事業である」と主張する*2が、実情は定かでない。

弾道ミサイルの分類

弾道ミサイルは主に有効射程によって分類され、条約や国によって数字は異なるが、おおむね以下のように分類されている。

  • 大陸間弾道ミサイル (ICBM:Intercontinental Range Ballistic Missile)
    (5500km〜)

  • 中距離弾道ミサイル (IRBM:Intermediate Range Ballistic Missile)
    (2400〜5500km)
    • PGM-19「ジュピター」(アメリカ)
    • PGM-17「ソー」(アメリカ)

  • 準中距離弾道ミサイル (MRBM:Medium Range Ballistic Missile)
    (800〜2400km)
    • ノドン(北朝鮮)
    • 東風21号(DF-21)(中共)
    • 東風25号(DF-25)(中共)
    • MGM-31「パーシングI/II」(アメリカ)

  • 短距離弾道ミサイル (SRBM:Short Range Ballistic Missile)
    (150〜800km)
    • V2(ドイツ)
    • MGM-5「コーポラル」(アメリカ)
    • MGM-18「ラクロス」(アメリカ)
    • MGM-140 ATACMS(アメリカ)
    • R-11(ロシア)
    • プリットヴィー(インド)
    • 東風11号(DF-11)(中共)
    • 東風15号(DF-15)(中共)
      など

  • 戦場短射程弾道ミサイル (BSRBM:Battlefield Short Range Ballistic Missile)
    (〜150km)
  • 潜水艦発射弾道ミサイル (SLBM:Submarine Launched Ballistic Missile)
    潜水艦から発射されるもの。射程関係なし)
    • UGM-27「ポラリス」(アメリカ・イギリス)
    • UGM-73「ポセイドン」(アメリカ)
    • UGM-96/UGM-133「トライデントI(トライデントC4)/II(トライデントD5)」(アメリカ・イギリス)
    • R-29(ロシア)
    • R-29R(ロシア)
    • R-29RM(ロシア)
    • R-30 ブラヴァー?(ロシア)
    • R-39(ロシア)
    • MSBS*3 M45(フランス)
    • 巨浪1(JL-1)(中共)
    • 巨浪2(JL-2)(中共)
      など。

  • 空中発射弾道ミサイル(ALBM:Air-Launched Ballistic Missile)
    (航空機(主に爆撃機)から発射されるもの。高コストにより開発中止。)
    • GAM-87/AGM-48 スカイボルト(アメリカ)
    • ブルーストリーク(イギリス)
    • ブルースチール(イギリス)


*1 そのため、旧式化や軍縮条約によって現役を退いた弾道ミサイルが人工衛星の打ち上げに転用されることもある。
*2 事実、旧ソ連やアメリカなど、最初期に宇宙開発に着手した国家は、概ね弾道ミサイルの開発で得られた技術を転用していた。
*3 Mer Sol Ballistique Strategique:海中発射型対地戦略弾道弾

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