【損傷許容設計】(そんしょうきょようせっけい)

damage tolerance design
機械の構造材に小さな傷があった場合でも、それが成長して破壊に至ることを防ぐ設計思想、または手法のこと。
航空機原子炉など、高い信頼性を要求される機械の設計に用いられる。

初期のジェット旅客機などでは一部の機体で極端に部品寿命の短いものが見られ、重大事故に進展することもあった。
調査の結果、部品についたごく小さな傷が、機体の振動や与圧?などのストレスによって段々と成長し、ついには破断してしまうことが判明した。
対策として重要部品の点検や交換が頻繁に行なわれたが、莫大なコストを必要としたうえ、傷はラジオアイソトープなど最新の検査手法でも見逃されることがあった。
点検・整備の頻度を下げるため、構造材を多重化して冗長性を高める設計もなされたが、これは機体重量の増加につながるうえ、日本航空123便墜落事故などのように構造材が連鎖的に破壊してしまう場合もあり、十分な対策とはいえなかった。

そこで生み出されたのが、傷の成長そのものをなるべく抑えるという損傷許容設計の手法である。
具体的な手法としては、

  • エンジンの振動やバフェットなどを吸収、あるいは抑制し、傷の成長を防ぐこと
  • 構造材をうまく小分けにすることで、破断の連鎖を防ぎつつ、重量増加を最小限に抑えること

等が挙げられる。
これらの手法により、点検回数の低減や部品の長寿命化によるランニングコストの抑制、機体重量の抑制による低燃費化、信頼性の向上による事故の防止といった、多数のメリットが見込まれる。

参考リンク:http://www.jal.co.jp/jiten/dict/p103.html

関連項目:CCV


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