【狙撃手】(そげきしゅ)

標的を遠距離から狙撃して殺傷行為を行う専門職。
軍隊の場合、任務の性質上敵を最も間近で観察できるため、斥候としての役割*1もある。

一般的には、警察が人質籠城事件などの緊急時に人質の命を救うために「一発で確実に犯人を射殺する」職務として知られる。
この種の任務の場合、状況を観察して指示を送る観測手と、実際に射撃する射手の二人一組で行動する*2

軍隊では歩兵の一部が特殊部隊としてこのような訓練を受けているが、実際のところ必要になれば誰しも狙撃せざるを得ないため狙撃だけで専門職とする事は少なく、偵察など単独行動を強いられやすい任務に従事する兵が狙撃手を兼任する事が多い。
民間では要人を暗殺する手段としての狙撃を行うイメージも強いが、これは単に計画殺人の手段として小銃が比較的手軽なものである事に起因している。
戦場で将校、官僚、伝令などを射殺する場合を除き、訓練された狙撃手がこれを行う事はほとんどない*3

その性質上、射撃の訓練「だけ」を繰り返しているようなイメージがあるが*4、実際にはそれ以上に狙撃する場所の確保や敵の行動予測、見つからないためのカモフラージュなどが重視される。
敵が狙撃手の存在を予想している場合に狙撃できる状況が訪れる確率はあまり高くない。軍事的見識のない犯罪者を相手取る場合でさえ、犯人の逃走経路全てを狙撃できるほど多数の狙撃手を配置しなければ取り逃がす可能性が出てくる。
戦場においては敵が狙撃銃有効射程圏内に入る前に存在を知られると間接砲撃で殺されてしまう公算が高く、かといって近すぎれば当然ながら敵の反撃で射殺される危険性がある。
また、一連の狙撃で想定する敵の全てを射殺するのは困難で(そもそも携行した弾数より敵の人数の方が多い場合もある)、狙撃を終えてから追跡を振り切って撤退するまで居場所が発覚する事は許されない*5

関連:小銃 狙撃銃


*1 敵の人数や装備・部隊の配置などを偵察するだけでなく、場合によっては空爆の誘導すら行うこともある。
*2 セルビア紛争では狙撃手・機関銃手・自動小銃射手の3人編成が組まれていた事がある。これは狙撃班自体が攻撃を受ける危険性を考慮したもので、即応が難しい狙撃手の安全を他2名で確保する。
*3 治安の保たれた市街地で殺人事件を起こした場合、その狙撃手が警察の捜査を振り切るのは事実上不可能である。
*4 夜間に標的がくわえていたタバコの火だけを頼りに頭部を撃ち抜けるくらいの技量は要求される。
*5 狙撃手は戦争では例外的に「誰を殺したか」を完全に把握できるため憎悪されやすく、捕虜として扱わずに射殺する場合が多い。

トップ 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS