【成形炸薬弾】(せいけいさくやくだん)

High Explosive Anti Tank (HEAT(ヒート)).
対戦車榴弾、ホローチャージ弾ともいう。

円筒状に成型して窪みを付けた爆薬を、金属製の円錐(ライナー)で覆った砲弾。
起爆すると、モンロー効果及びノイマン効果によって爆薬の熱波と衝撃が円錐の頂点に向かって殺到し、ライナーの先端部分が粉砕・融解する。
結果、溶解した金属と爆風によるジェット噴流が前方に噴射され、装甲を融かし貫き破壊する*1
その直後に、超高温・高圧のジェット噴流が着弾点の周辺に拡散して周囲の精密機械や人体を破壊*2するとともに、拡散した圧力で残ったライナーも爆散し、その破片によって榴弾としての破壊力を発揮する。

砲弾やミサイルの飛翔速度に関係なく爆薬のみで破壊力を得るため、比較的小型の兵器に向く。
また、弾体が回転しているとジェット噴流が阻害されるため、ライフリングされた砲には不向き。
戦車滑腔砲に装填される他、対戦車ミサイルロケット弾に利用される。

滑腔砲では軌道を安定させるための翼を取り付けたもの、通称HEAT-FS(Fin Stabilized、翼安定式成形炸薬弾)を用いる事が多い。

関連:戦車 対戦車砲 粘着榴弾 多目的対戦車榴弾 高速徹甲弾 装弾筒付徹甲弾 爆発反応装甲 モンロー効果 ノイマン効果


*1 戦車装甲に対して有効なのはこの金属ジェットのみ。
  しかしこの噴流はごく短距離で拡散してしまうため、例えば装甲板の前に金網などが置かれているとほとんど貫通力を発揮しない。

*2 戦車装甲を貫通した場合、車内の半ば密閉された空間に超高温の爆風が充満する。
  燃料に引火した場合は無論の事、そうでなくとも乗員の生存は絶望的である。


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