【高速増殖炉】(こうそくぞうしょくろ)

原子炉の一種で、核燃料の利用効率を飛躍的に高めたもの。
具体的には、消費したウランよりも大量のプルトニウムを生成し*1、さらにそのプルトニウムを直接利用して核分裂を継続するものである。

プルトニウムを大量に生み出すために減速材を用いないのが大きな特徴である。
小さな炉心で集中的に発熱し、また中性子?をなるべく減速させないようにするため、冷却材として液体金属を用いる必要がある。
減速をしない高速の中性子?により核分裂をおこない、核燃料があたかも増殖するかのようにプルトニウムが生成されることから、高速増殖炉の名で呼ばれる。

燃料棒中で転換されたプルトニウム239は徐々に反応が進むため他の用途には転用し難い。
一方、燃料棒の周辺に設けられるブランケットと呼ばれる部位にウラン238を貼り付けておくと高濃度のプルトニウム239が得られる。
これは核兵器の原料にもなりうることが安全保障上懸念されている。

「夢の原子炉」といわれ多くの国が研究しているが、温度や圧力の管理が難しく、また液体金属は不安定な物質であるため維持も困難であり、実用化は難航している。
日本でも「もんじゅ」が1995年にナトリウム漏れ事故を起こして長期にわたり休止し、2010年に試験的に運転を再開したもののトラブルが続き、2013年には原子力規制庁より運転再開準備の禁止が言い渡されている。
またウランとプルトニウムを使う新型転換炉も実用化が頓挫しており、日本では軽水炉を使ったプルサーマル発電が推進されていた。*2

しかしこのまま行けば将来に核燃料が枯渇することは避けられないため、莫大な人口と経済発展によるエネルギー需要を擁する中国やロシア等では、今でも積極的な実験がすすめられている。
またプルトニウムへの転換率にこだわらず、小型で設置のしやすいことを目指した「高速炉」は各国で研究されている。

関連:中速中性子炉


*1 「焚き付け」としてプルトニウム239とウラン235を使用しつつ、直接核分裂に寄与しないウラン238を原料として、結果的に大量のプルトニウム239が生成される
*2 東日本大震災の際に事故を起こした福島第一原子力発電所のうち、3号機でプルサーマル発電が実施されていたことから批判を受け、日本におけるプルトニウム混合燃料の利用は事実上宙に浮いた状態となっている。

トップ 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS