【高速増殖炉】(こうそくぞうしょくろ)

原子炉の一種で、核燃料の利用効率を飛躍的に高めたもの。
具体的には、消費したウランよりも大量のプルトニウムを生成し*1、さらにそのプルトニウムを直接利用して核分裂を継続するものである。

プルトニウムを大量に生み出すために減速材を用いないのが大きな特徴である。
小さな炉心で集中的に発熱し、また中性子?をなるべく減速させないようにするため、冷却材として液体金属を用いる必要がある。
減速をしない高速の中性子?により核分裂をおこない、核燃料があたかも増殖するかのようにプルトニウムが生成されることから、高速増殖炉の名で呼ばれる。

「夢の原子炉」といわれ多くの国が研究しているが、温度や圧力の管理が難しく、また液体金属は不安定な物質であるため維持も困難であり、実用化は難航している。
日本でも「もんじゅ」が1995年にナトリウム漏れ事故を起こして長期にわたり休止し、2010年になってようやく試験的に運転を再開した。
またウランとプルトニウムを使う新型転換炉も実用化が頓挫しており、日本では軽水炉を使ったプルサーマル発電が推進されている。

しかしこのまま行けば将来に核燃料が枯渇することは避けられないため、莫大な人口と経済発展によるエネルギー需要を擁する中国では、今でも積極的な実験がすすめられている。

また近年では、高速増殖炉に似た原理を持つ「進行波炉」の研究も開始されている。
劣化ウランを徐々にプルトニウムへ転換しながら逐次消費するため、安全性や経済性に優れ、かつ核兵器開発に転用されるリスクも低いとされる。
この進行波炉には、日本の東芝が開発している「小型高速炉」(濃縮ウランを使用)のノウハウが生かされるという。

関連:中速中性子炉


*1 「焚き付け」としてプルトニウム239とウラン235を使用しつつ、直接核分裂に寄与しないウラン238を原料として、結果的に大量のプルトニウム239が生成される

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