【高機動車】(こうきどうしゃ)

陸上自衛隊で使用されていた73式小型トラックジープ*1の後継として、1992年に採用された四輪駆動の汎用小型トラック。
トヨタ自動車が製造・納入している。

制式採用ではなく使用の承認が成されたのみであるため、「○○式〜」の類の型式がなく、「高機動車」が正式名称である。
実用上の愛称は「高機(コウキ)」。自衛隊の例に漏れず、正式に命名された「疾風(はやて)」という愛称は黙殺されている。

当初の非公式愛称に「ジャンビー」や「ジャパニーズハマー」というものもあった。

アメリカのHMMWVの用途を模した車両で、形状も似ているがこれは単なる偶然である。
四輪駆動・四輪操舵で、不整地走破性を備えつつ、日本国内の道路でも乗用車並みに小回りが効き、あらゆる場面で機動力に優れる。
タイヤの空気圧調整機能とランフラットタイヤにより、タイヤがパンクしてもある程度は走行が可能。
またオートマチックトランスミッション(AT)なので、乗り手を選ばない。
軍用車の割に乗り心地が非常に良く、駐屯地での体験搭乗では人気がある。

ちなみに、初期生産モデルにはエアコンが未搭載だった。

ボディはFRP製で装甲は皆無。
ただし、「国際任務仕様」の車両、および2008年度予算調達分以降の車両は主要部に防弾鋼板が採用されている。
固定武装はないが、状況によっては5.56mm機関銃MINIMIを搭載される場合もある。
また、CH-47への搭載もでき、迅速な展開が可能である。

武器輸出三原則等の関係で量産効果が少なく、1両約700万円と高価なのが難点*2
しかしそれでも3,000両以上が生産され、2010年春に全普通科連隊への配備が完了。事後は損耗更新用として納入されている。
なお、現在では初期に配備された車輛の廃車が進んでいる。

当初は自衛隊のみが調達していたが、1995年の阪神・淡路大震災による災害派遣出動で性能を高く評価されたことから販売要請が殺到。
そのため、トヨタ自動車から「メガクルーザー」の名で消防・警察・自治体などに向けて販売された。

スペックデータ

乗員10名
全長4.91m
全高2.35m
全幅2.15m
重量2.55t
エンジントヨタ 15B-FTE型インタークーラー付き水冷直列4気筒OHV4バルブターボディーゼル
(出力170ps/3,000rpm)
変速機ロックアップ機構付4速AT
登坂能力60%
最高速度120km/h
行動距離443km
装甲防弾鋼板、FRP(ボンネット)
兵装なし(銃架をロールバーに取り付ける事で5.56mm機関銃MINIMIを装備可能。)
製作トヨタ自動車(開発)、日野自動車(製造)


派生型

  • 重迫牽引車:
    120mm迫撃砲 RT(重迫)を牽引する車両。
    後部座席床に弾薬を固定する金具等を設置している。

  • 高機動車(II型):
    国際任務仕様。
    フロントガラスや車体を装甲化したほか、ワイヤーカッターを装備。
    酷暑地での使用を考慮して幌を断熱材へ変更し、エアコンを設置。
    2004年〜2006年までイラク派遣任務で使用されたほか、2008年度以降の予算ではこの仕様の車両が調達されている。

  • 高機動車(通信用):
    師団旅団の通信大隊や中隊、及び普通科連隊、特科連隊等の本部管理中隊通信小隊に配備されている型。
    2種類あり、「高機動車(師団通信システム用)」は通信機材の積載等、「高機動車(通信用)」は通信要員の輸送や機材積載に使用される。

  • 93式近距離地対空誘導弾(SAM-3):
    91式携帯地対空誘導弾(SAM-2)の発射/観測/誘導装置を装備した型。

  • 96式多目的誘導弾システム
    発射機、射撃指揮装置などを装備した型。

  • 03式中距離地対空誘導弾
    幹線無線伝送装置、幹線無線中継装置、射撃統制装置を装備した型。

  • 中距離多目的誘導弾
    通信・電子機器利用に特化した小隊本部が乗車する指揮用車両及び発射機・追尾装置・自己評価装置を一体化したシステムを搭載した射撃分隊用車両がある。

  • 基地防空用地対空誘導弾
    発射装置を装備した型が1セットに所属。
    航空自衛隊のみに配備されている。

  • 低空レーダ装置 JTPS-P18?
    車体後部に対空警戒用のレーダー装置を装備。高射特科に配備。

  • 地上レーダ装置1号(改)JTPS-P23:
    車体後部に地上監視レーダーを搭載した型。
    71式地上レーダ装置1号 JTPS-P6の後継。

  • 衛星単一通信可搬局装置 JMRC-C4:
    車体後部に衛星通信装置を搭載した型。主に通信科に配備。

  • 局地無線搬送端局装置 JMRC-C60:
    無線通信車。方面通信群および師団通信大隊等に装備。
    他に、中継接続用のJMRC-R60がある。

  • 電子交換装置 JMTC-T121-B:
    野外用電子交換装置。
    主として師団/旅団および連隊クラスにおいて使用する。

  • 航空気象装置 JMMQ-M7:
    移動気象観測装置を搭載。

  • 師団等通信システム:
    指揮通信機器を搭載。
    普通科・特科連隊(大隊)本部管理中隊や通信大隊などの部隊のみ配備されている。

  • 基幹連隊指揮統制システム(ReCs?*3)端末搭載型:
    車番06-9000番台として第2師団の普通科連隊に数両ずつ配備されている。

  • 航空電源車:
    ヘリコプターローターエンジン始動に必要な電力を供給する電源車。
    航空科部隊に配備。

  • 発煙機3型:
    後部荷台部に発煙機器を搭載した型。
    普通科連隊などに配備。

  • 化学剤監視装置:
    有毒化学剤を監視・評定する為の装置。
    車体後部に監視装置が搭載されている。
    評定処理装置を搭載した3 1/2tトラックと監視装置3基、ヘリコプター搭載用監視装置1基から構成されている。
    化学科に配備。

  • メガクルーザー:
    民生用。
    主として消防・警察・自治体向けの防災用に用いられる他、航空自衛隊にも納入されている。
    現在は販売を終了しているが、トヨタ自動車は「自治体や政府機関など、まとまった注文があれば生産再開に応じる」としている。


*1 同車は現在でもベース車を変えて納入が続いており、名称も「1/2tトラック」に変わっている。
*2 ちなみに、採用当時は1両約1,000万円であった。
*3 Regiment Command Control systemの略。

トップ 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS