【工兵】(こうへい)

military engineer/combat engineer/pioneer.
軍隊(主に陸軍)における兵科のひとつ。
日本の陸上自衛隊では施設科と呼ばれる。

敵が設置した障害システムの破壊、野戦築城や道路の建設、架橋塹壕掘り、爆破工作、地雷原敷設などの能力を持ち、実際に敵と戦う歩兵砲兵騎兵の活動を支える役目を持つ。
また、任務上各種の建設機材を備えることから、平時には橋・道路・鉄道・ダムなどのインフラ建設*1や自然災害によって破壊されたそれら施設の復旧などにも従事する。

かつては新兵器の実験・研究も任務とされていた。
そのため、草創期には戦車航空機が工兵科の担任とされていた国もあった。

主な任務は、前線で敵の攻撃にさらされながら各種の工作を行う「戦闘工兵」と、後方における道路・橋・鉄道の建設など、作戦全般に寄与する大規模な工事を行う「建設工兵」とに大別される*2

なお、旧日本陸軍においては外洋航行できる船舶(揚陸艦や輸送用潜水艇)の運用も工兵の任務とされており、「船舶工兵」と呼ばれていた*3

通常、陸軍の各師団には、連隊・大隊規模の工兵部隊(人員は400〜1000人程度)が随伴する。
これより規模の小さい「旅団」や「連隊」が中隊規模の工兵部隊を指揮下に置くこともある。

工兵の主な任務

  • 建設工兵
    • 道路や橋などの建設
      一般的な道路・橋・ダムなどのインフラ建設や大規模自然災害からの復旧工事、あるいは宇宙基地・王宮などの特殊な国家施設の建設、維持に従事することもある。
    • 鉄道の運用
      戦地における鉄道施設の建設・維持や軍用列車の運転、敵が敷設した鉄道の破壊など
    • 渡河作戦
    • 測量・地図の作成*5
    • 坑道戦
      敵の要塞や陣地の真下までトンネルを掘り、地中に爆薬を仕掛けて要塞ごと吹き飛ばす。
      現代では要塞戦自体が衰微したためほとんど行われない。

*1 特にゼネコンが存在しない開発途上国では、軍の工兵部隊がインフラ建設の主力となることが多い。
*2 陸自では前者を「戦闘支援」、後者を「兵站支援」と呼んでいる。
*3 後に「船舶兵」という独立した兵科になる。
*4 海軍の掃海部隊が対処しづらい水際部を受け持つ。
*5 戦前の日本では、地形図の作成が陸軍(参謀本部陸地測量部)の業務になっていた。

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