【軽装甲機動車】(けいそうこうきどうしゃ)

防衛省が、陸上自衛隊における普通科隊員(歩兵)の近接戦闘、及び対ゲリラ・コマンド用装備として2000年度に採用した*1、四輪駆動式の装輪装甲兵員輸送車
大手建設重機メーカーの「小松製作所」が生産を受け持っている。

防衛省の定めた公式愛称は「ライトアーマー」であるが、隊員からは「LAV(ラヴ)」という略称で呼ばれることが多い。
陸上自衛隊だけでなく、航空自衛隊でも採用されている。

本車の開発コンセプトは「ヘリコプター等での戦略輸送が可能で、普通科隊員に軽い装甲を持たせて戦場を機動させる事が可能な車両」というものであった。
固有の装備は無いが、天井のハッチ部分にターレットを有し、搭乗する隊員が身を乗り出して射撃する事も可能。
96式40mm自動擲弾銃01式対戦車誘導弾M2 12.7mm重機関銃5.56mm機関銃MINIMIを設置する場合が多い。

装甲は軽量で対物ライフルロケット弾以上の火力には対処出来ないが、小銃弾榴弾の破片程度は防げるという*2
走破性・機動性が高く、ある程度の渡河能力も有する。
また、タイヤがパンクしてもある程度の走行が可能である。

調達価格は一両3,000万円程度で、年間約150両程度のペースで導入されており、2016年現在で1,937両が使用されている*3

これは、従来の装甲兵員輸送車である60式装甲車73式装甲車と比べてかなり早い調達ペースであり、第二次世界大戦後の日本で最も多く生産されている装甲車両ともなっている。

車体デザインはフランス・パナール社のVBL軽装甲車に酷似している*4が、輸入品ではなく国産である。
前述の通り、建設重機メーカーの製品であることもあってか、駆動音は車両というよりも環境配慮型の低騒音建設機械に近いという。

スペックデータ

乗員4名(前席2名・後席2名。ターレットに射手を立たせる場合は+1名)
全長4.4m
全高1.85m
全幅2.04m
重量4.4t
懸架・
駆動方式
フロアシフトタイプ4速AT及びHi・Lo切替レバー装備、デフロック等
前輪:ダブルウィッシュボーン
後輪:セミトレーリングアーム
エンジンいすゞ自動車製直列4気筒液冷ターボチャージドディーゼル
(排気量4,800cc、出力160hp)
登坂力60%
超堤高0.5m
超壕幅0.75m
最高速度約100km/h
行動距離約500km
装甲圧延鋼板・防弾ガラス
兵装ターレット上部防楯付き銃架にM2 12.7mm重機関銃5.56mm機関銃MINIMI
製作小松製作所


バリエーション

  • 無線機搭載車:
    通信用機能を強化したタイプ。アンテナを1〜3本装備している。
    中隊長など各種指揮官用として配備。
    中隊長車は大型無線機(JVRC-F10/F11/F20など)を搭載するためアンテナマストも大型のものを装備している。

  • 発煙弾発射機搭載車:
    煙幕発射器を側面後部に2基装備したタイプ。
    中隊長車用、小隊長車用のほか、偵察隊・普通科連隊情報小隊用として配備。

  • 機関銃搭載用:
    機関銃用の防盾付きタイプ。防盾は走行時の支障とならないよう、折りたたむこともできる。
    また、後部に装備積載用ラックを現場にて改修した車両も存在する。
    普通科連隊普通科小銃小隊(機関銃手)に配備、他には偵察部隊(情報小隊)の威力偵察用。

  • 01式対戦車誘導弾積載用:
    全天板部がフラットになっているタイプ。

  • 国際活動仕様:
    イラク人道復興支援活動部隊で使用されたタイプ。
    漏斗型装甲板やワイヤーカッターが追加され、防弾ガラスを7.62mm小銃弾(普通弾)に抗たん可能なものに変更、ラジエーターも砂塵対策が施されている。
    後面にはスペアタイヤと燃料缶取付用ラックを装備。
    部隊管理でなく補給処にて一括管理品。

  • 航空自衛隊仕様:
    基地警務隊用。
    陸自用と異なり、オリーブ・グリーン一色の塗装で無線機アンテナ形状が異なる。

  • 警務隊仕様:
    パトライトと拡声器を追加し、「MP」という表記がされたタイプ。


*1 開発にあたって、コスト削減のため商用オフザシェルフを取り入れたため、「制式」ではなく、一段階手続きの簡易な「部隊使用承認」として採用された。このため「○○式〜」という名称はついていない。
*2 後のイラク派遣仕様のモデルでは、防護性能を強化する改修が施された。
  窓の防弾ガラスを厚くし、車体下面に耐地雷装甲、側面にも増加装甲を施された。
  また、機関銃座も防御力が強化され、ワイヤーカッターが装備された。

*3 内訳は陸自が1,818両、空自が119両。
*4 このためか、イラク人道復興支援に派遣された時、宿営地となったサマーワで共に活動していたオランダ兵から「なぜフランス車を買ったのだ?」と質問されたこともあるという。

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