【核分裂炉】(かくぶんれつろ)

原子核反応の一つである核分裂を安定的に行うための設備。制御棒や減速材を用いて、核分裂を臨界ぎりぎりに収めながらエネルギーを発生させる。

燃料としては一般的にはウラン238?ないしはプルトニウム239を使い、核分裂によって生じた膨大なエネルギーを冷却材によって取り出すことができる。原子力発電に用いられる燃料は大部分(90%以上)が核反応?しないウラン235?で占められているが、潜水艦等では高濃縮ウラン(90%以上が燃料)を用いる。

核分裂は質量当りのエネルギーが化学反応?(火力発電等)に比べて300万倍もの膨大なエネルギーを取り出すことが出来るため、運用に必要な燃料は非常に少なくて済む(数年〜数十年に一度の交換)。反応に酸素が必要無いため、潜水艦用の主エンジンとしても有利。ただ、放射能を遮蔽するために分厚いコンクリート等で覆われ(遮蔽容器)、冷却機構があるために炉自体は大きくならざるを得ないし、大掛かりな整備や核燃料の交換は簡単には出来ない。
そのため、炉の運転自体の運用コストは化学反応?に比べて低いことが多いが、炉自体の建造費は高い。また、出力調整は制御棒の出し入れによって行うが、安全に制御を行うには時間がかかるため、あまり行わないし行うべきものでもない。始動にも膨大なエネルギーが必要とする(建造時は別:外部からの中性子の導入が必要)。

各炉の名前は、燃料の違いと減速材の違いを示している。
燃料としてウラン238?を使うものは減速材の名前を指す(軽水重水黒鉛チャネル)。軽水炉は更に細かく分かれ、一次冷却材の使用法(加圧水型沸騰水型)で分かれる。
燃料としてプルトニウム239>を主に使うものは高速増殖炉である。
また、両者の中間的なものとして中速中性子炉がある。

必然的に生じる核廃棄物の処理も放射能を中和する手段は現状ではないため、大きな問題である。
核廃棄物には大きく分けて、低レベル放射性廃棄物(作業員の私物から炉自体まで)と高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料)に分かれる。
低レベル放射性廃棄物は、焼却処理や放射性物質をある程度取り除いた後、ドラム缶に積めたりプラスチックやセメント等で固めて、通常のゴミとさほど変わらず、埋め立て処分を行うことができる。気体の場合は放射性物質をある程度取り除いた後、空中に放出する。
高レベル放射性廃棄物は非常にやっかいである。水分を取り除いた後、ガラスで固めてステンレス容器に収める(ガラス固化体)。高レベル廃棄物は熱を帯びるため、数十年間冷却保管された後、地中深くに埋められる。この後世まで負担を残す処理方法が問題視されている。

現在、世の中で使われる炉の殆どが軽水炉である。日本では、全てがそれであり、またその中でも加圧水型沸騰水型が半々程度存在する。
核分裂を使うことの危険さが指摘されているが、大抵の原子炉(日本含む)は自己制御性があるように作られているはずである。これは、核分裂が臨界を大きく逸脱しないように、臨界が進めば自然に収まる方向に進むような性質である。なお、チェルノブイリとして有名な炉は黒鉛炉であり、自己制御性の無さが問題とされた。
また、原子炉自体も強固な遮蔽容器に覆われており、地震から多少の爆弾までならば、一応は安全ということになっている。

なお、ウラン?は決して潤沢な資源ではないため、燃料を生み出すことも出来る高速増殖炉や、ウランとプルトニウムを混ぜて使うMOX燃料?が生まれた。
他には、ウラン?に比べれば潤沢なトリウムをウラン233?に変換しながら使う方式も研究段階では存在する。


ウラニウム?

プルトニウム

中間的性質


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