【海賊】(かいぞく)

Pirate.
船舶を用いて強盗・営利誘拐を行う集団。
公海上の船を襲撃するのが一般的だが、沿岸集落に上陸して襲撃を行う事もある。

現地当局が厳重な沿岸警備を行っているのでない限り、商船が通行すれば海賊が出現する事は避けられない。
現代に至ってさえ海賊対策は海洋貿易船に求められる必須事項である。

特に、国際情勢が変動する転換期には大小様々な紛争が勃発し、それは海賊を勃興させた。
海軍が投入されるような戦争が起きれば当事国いずれかは制海権を失い、海洋の治安も失われるからだ。
失われた制海権の復旧には年単位の月日がかかり、その間、洋上交易は常に海賊の餌食となった。
加えて、海兵隊が沿岸制圧に出れば、それ自体が戦利品の鹵獲を伴う事実上の海賊行為となった。

帆船の時代には、商船が海賊からの護衛として傭兵を雇う事がままあったが、これも海賊の温床となった。
商船護衛に長けた傭兵というのは、要するに「海賊を雇った」という事を意味していたからだ。
洋上警護の傍ら、あるいは交易商人が商売の不調を補うため、海賊行為で副収入を得る事もそう珍しくはなかった。

国際法上の定義

現代では、国連海洋条約において「海賊」の定義を定めている。

国家主権の及ばない地域*1で暴力・抑留・略奪を行った者は「海賊」である。
また付随的に、故意に海賊を扇動・支援したものも、所在に関係なく海賊とみなされる。

この定義における海賊は「人類共通の敵(hostis humani generis)」と定められ、母国の主権が及ばない。
海賊を拿捕する法的権利は、文民統制に基づいて国家が保証する軍隊司法警察?のみが保有する。
しかし、その場に居合わせていればどの国の軍・警察でも関係なく海賊を拿捕する事ができる。
また、海賊を拿捕した国は、その海賊の国籍・船籍に関係なく拿捕した組織の母国が裁判・処刑できる。

ただし、海賊がどこかの国の領土内に潜伏している場合は面倒な事態になる。
公海上で犯行に及んだ後にどこかの国の領海内で発見された海賊の拿捕は、法的に微妙な問題を伴う。
海賊が陸上に潜伏している場合、それを捜査・連行するために他国に上陸するのはふつう認められない*2

国家の公的機関が事実上の海賊行為を行った場合、紛争司法警察?の問題として国家間の外交交渉に委ねられる。
もちろん、軍事目的で敵国から略奪を行う行為は戦時国際法に抵触する可能性がある。


*1 現代では公海とその上空を指すものとみなされるが、異論の余地はある。
*2 ただしソマリアのように潜伏先が国家としての体を成していない場合も多く、警察権を行使できない沿岸国に代わって海賊対処の一環として他国の軍艦による沿岸への砲撃や、時には特殊部隊による直接攻撃も行われてる。

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