【海軍兵学校（日本）】(かいぐんへいがっこう（にほん）) †

大日本帝国海軍において、部隊・艦艇の指揮官となる人材を育成するために設けられた学校。
いわゆる士官学校・軍学校に類する。

校舎が広島県・江田島の所在であった事から「江田島」とも呼ばれる。
当時の敷地に今日も海上自衛隊の幹部候補生学校が置かれており、この伝統は継承されているとみられる。

機関学校?*1、経理学校?*2とともに日本の海軍三校と呼ばれた。
最盛期には世界最大の兵学校の一つに並び、全78期・総計12,433名の卒業生を輩出した。

本校は東京・築地に1869（明治2）年に創設された「海軍操練所」をルーツとする。
その後「海軍兵学寮」を経て1876（明治9）年に海軍兵学校となり、1888年、広島県・江田島に校舎を移転した。

太平洋戦争末期には戦時の再編成に伴って各地に分校が設置されたが、ほとんど機能しないまま終戦を迎えた。
敗戦後のポツダム宣言に伴って廃校となり、校舎施設は連合国軍に接収された。
1952年のサンフランシスコ講和条約による主権回復後、1956年に日本政府に返還されて防衛庁→防衛省（海上自衛隊）の管理下に置かれ、幹部候補生学校・第一術科学校として使用されている。

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教育内容 †

入校資格は「旧制中学卒業程度の学歴を持つ16〜19歳の男子」。完全な志願制。
現代の学歴免許資格区分においては短期大学に相当するものとして扱われる。

在校中は無階級だが、部内では「兵曹長の下、下士官の上」として遇された。
卒業後は少尉候補生として練習艦隊*3及び連合艦隊所属の大型艦*4に配属され、実地訓練や各科の講習を経て少尉に任官した。

カリキュラムは時代に応じて変遷したが、概ね以下の項目を3年〜4年かけて教導した。
太平洋戦争勃発後は、戦死傷者を補充するために教導期間が短縮され、最終的には2年4ヶ月で卒業とされている。

兵学
航海従事者（海上航法・通信術・操船術・機関術・工作術など）及び部隊指揮官として必要とされる学問・技能（艦載砲・魚雷等の取扱い・陸戦隊勤務を想定した陸戦術、統率術及び戦略・戦術理論）。
加えて、実務上の必要性から司法警察?事務などの講義も行われた*5。
体育
武道・体操・水泳・漕艇・登山など。
普通学
数学・理化学・国語・英語・精神講話・食卓礼法（洋食）など。
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「五省」 †

海軍兵学校のモットーとされた言葉。毎夜、自習時間終了直前に生徒へ問いかけられた。
文言は東郷平八郎元帥の起草による。

一、至誠(しせい)に悖(もと)る勿(な)かりしか
一、言行に恥づる勿かりしか
一、気力に缺(か)くる勿かりしか
一、努力に憾(うら)み勿かりしか
一、不精に亘(わた)る勿かりしか

*1 艦船のエンジンの運転管理を行う「機関科将校」を育成する学校。
　　京都府・舞鶴にあったが、1944年に兵学校と統合されて「海軍兵学校舞鶴分校」となり、機関科専修とされた生徒を受け入れた。
*2 兵站業務を行う「主計科将校」を育成した学校。東京・築地に所在。
*3 第一線を退いて海防艦籍となった旧式巡洋艦2〜3隻で編成され、少尉候補生の遠洋練習航海を受け持っていた。
*4 練習艦隊での遠洋航海を終えた後、「第二期」候補生として、おおむね軽巡洋艦以上の大型艦に数名単位で配置された。
*5 当時の日本海軍には憲兵組織がなく、艦内では兵科将校が司法警察職員として乗組員の治安維持に当たっていた。
　　なお、陸上部隊でも基本的に艦船に準じて扱われたが、必要に応じて陸軍の憲兵の援助を仰ぐこともあった。

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