【暗殺】(あんさつ)

テロリズムの一環として要人を殺害すること。

法治国家においては、主にスパイ活動上の要求によって行われる。
何らかの機密漏洩に備えて、情報記録媒体としての人間の脳髄を破壊する、という意図である。
この場合、実行犯や黒幕が露呈しないように綿密な作戦計画が立案され、実行に当たっては「『事故』や『急病』などの自然死を偽装する」「実行犯とは別個に死体処理のための専門チームを編成して、人体の身元情報を全て破壊する」などの措置がとられる。

「不都合な弁明」を行わせないために暗殺を行う以上、暗殺であったと発覚する事は(たとえ対象者が結果的に死亡していたとしても)即ち失敗を意味する。

政府の威信を損なう上に、遺族などが自分達にとって不都合な活動を起こすからである。
特に要人が対象である場合、暗殺計画が露見するだけで国家を揺るがす大問題に発展し得る。
法治国家に暗殺を正当化する法律はない*1ため、暗殺者は殺人を企てた罪に問われる。
また当然、暗殺事件を捜査する司法警察?は余罪を追及し、過去の案件や背後関係に関する機密も暴かれる。

一方、紛争状態にある地域での暗殺は敵への恫喝を主目的とし、半ば公然と行われる。
空爆で建物ごと抹殺するなど、隠蔽の余地もない純然たる軍事行動として実行される事も多い。
実行犯自身も、軍事行動*2が行われた事実を可能な限り広く周知させようとする。
ただし、紛争状態でも国際社会に配慮して密やかに殺害する場合はある。

例えば、暗殺対象が危険を察知して国外に逃亡した場合。
法治国家での暗殺には現地警察・他国諜報機関・警戒する対象本人などを欺く綿密な計画が必要とされる。

どちらにせよ、暗殺は明らかに一般人や一般的犯罪者の手に余る行為である。
訓練を受けた経歴があっても単独では不可能に近く*3、ましてや(フィクションのように)傭兵を雇って殺させるなど論外である。
一人の人間を確実に暗殺するには、情報収集や後方支援も含めて一個中隊規模の人員が必要である*4

一般に、現代の職業暗殺者は特殊部隊の一員として軍隊や諜報機関に籍を置いている。
特殊部隊の任務はほぼ全て守秘義務を伴うため、誰が暗殺を担当するのかは普通明らかでない。
また、特殊部隊としての身元自体も隠蔽され、報復から二重に保護されている。
よって、暗殺者も普通の兵士や市民としての収入を得て、一般人として家庭生活を送り、高齢になれば退職して円満な老後を過ごす事ができる*5


*1 そんな法があるのなら、それはもはや法治国家ではない。
*2 国際的な慣習として「軍事行動として公に行われたのだから暗殺ではない」という事になっている。
*3 要人を密かに殺す事自体は困難ではあっても可能である。問題は、その後どうやって投獄も報復もされずに生き延びるか、であろう。
*4 スパイ主体の数百人体制で、ほとんどは"実行"に関与しない。公式に部隊として集結する事もなく、暗殺計画の存在さえ知らされない人員も多いという。
*5 ……おそらくは。
  失敗や政変に巻き込まれた時にまで安全が保証されるかは疑わしい。
  また、暗殺者の老後に関する信頼できる統計などというものは存在しない。


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