【キャンバー】(きゃんばー)

camber
反り。物体の形状が反っている様子。

  1. 車輌の車輪につけられる反り角の一種。車輪自体を若干ロールさせた状態で取り付ける。
    車体を正面から見た場合、すり鉢型に見えるものを正キャンバー、ハの字型に見えるものを逆キャンバーという。
    前者は操舵輪の操舵性を向上させるため、後者は車体のロールを防ぐためにつけられる。

  2. 航空機では、翼の断面形状が進行方向に対して反っている様子を指す。
    その程度は、翼形中心線(断面における上面の線と下面の線を平均した線)と、翼弦線(断面における前縁から後縁に引かれた線分)との距離で示される。

    キャンバーがない翼(対称翼)でも迎え角を大きくすることにより揚力を発生させることはできるが、抗力も大きくなってしまい、揚抗比が悪化してしまう。
    そこで翼にキャンバーを設けることにより、大きな迎え角を取らなくても揚力を得られるようにする。

    主翼などは迎え角を取らなくても上向きの揚力を発生させるために、上面がふくらんだ形のキャンバーを持っている。
    コアンダ効果によって空気の流れは翼の表面に沿う。これによって翼上面の気流は下向きに偏向され、より強いダウンウォッシュを生み出し、この反作用によって揚力を生み出す。
    また翼の上側が膨らんでいると、下面に比べて空気の移動距離が長くなる分だけ気流が速くなり、ベルヌーイの定理にしたがって上面の圧力が低くなる。この圧力差によって揚力を発生するのである。
    特に層流だけでなく渦流が発生すると、機体の対気速度が遅くても気流の速度が上がり、揚力が増大する傾向にある。

    さりとてキャンバーをあまり大きくしすぎると、今度は迎え角が小さくても高速時に抗力が大きくなってしまい、やはり揚抗比が悪化する。
    また渦流が強いと誘導抗力の増大や、気流の剥離による失速などのおそれもある。
    以上の特性から、低速用の機体ではキャンバーの大きな主翼を、高速用の機体ではキャンバーの小さな主翼を採用することが一般的である。
    高速向きの機体を離着陸させる際は、フラップなどを使って一時的にキャンバーを増大させ、低速でも揚力が得られるようにする。

    関連:コニカルキャンバー

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