【イラン軍】(いらんぐん)

イラン・イスラム共和国の正規軍。
陸軍(IRIGF)、海軍(IRISF)、空軍(IRIAF)で構成される。

イラン軍は、元々は王制の「イラン王国軍」で、第二次世界大戦後は東側に近い戦略的重要拠点とされていたことから、アメリカ・イギリスからトップクラスの軍事装備品を多数提供されていた。
しかし、1979年に起きたイスラム革命?により王制が廃されて共和政体となり、イラン・イスラム共和国軍が誕生した。
その際、アメリカ・イギリスは「制裁」としてイランへの軍事装備品の輸出を禁止した。

こうしたイランの状況を見ていたイラクは、イランの領土を獲得する好機と考え、1980年9月22日にイラン領内に侵攻を開始。
アメリカ・イギリスからの武器供与を受けられなくなったイランは、兵器の供給源をイスラエル・サウジアラビア・中国等に求めた*1
ちなみに、この当時のイラクの兵器供給源はソ連・アメリカ・フランス・イタリア等であった。

イラン・イラク戦争は、1988年の終戦までの8年間続いた。
その後、湾岸戦争中イランは中立を保ったが、イラクからの亡命者が多数来たため亡命用に持ってきた多くのイラク軍?航空機を取得している。

現在では、アメリカからならず者国家の一国に指定され軍事的・経済的にも厳しい処置を受けている。

F-4D.jpg

photo:Boeing

主な構成

  • 空軍
    戦闘機F-14
    MiG-29B/UB
    F-5A/B/E/F/アザラフシュ/サーエゲ
    F-4D/E「ファントムII」
    F-7M/FT-7
    F-6/FT-6
    ミラージュF1EQ/BQ(イラクからの亡命機)
    ガーヘル313
    戦闘攻撃機Su-24MK(24機はイラクからの亡命機)
    輸送機C-130E/H「ハーキュリーズ」Il-76MD
    哨戒機P-3F「オライオン」
    早期警戒機A-50
    練習機JT2-2「タザルベ」

  • 陸軍
    小火器
    拳銃P226(中国北方工業公司(NORINCO)がコピーしたNP22をPC-9「Zoaf」の名でライセンス生産
    サブマシンガンMP7(「Tonder」の名でライセンス生産)
    突撃銃H&K G3(パフラヴィー朝時代からライセンス生産により調達。)
    AKM
    56式小銃(AL-7の名でライセンス生産)
    KH2002 "Khaybar"(国産のブルパップ方式アサルトライフル。5.56mm NATO弾を用いる。)
    CQ 311(中国北方工業公司のM16A1コピー)
    機関銃ラインメタル MG3(パフラヴィー朝時代からライセンス生産。)
    PK?
    対戦車火器サーエゲ(RPG-7の発展型)
    69式ロケットランチャー(NORINCO製コピー)
    RPG-29
    航空機
    固定翼機ダッソー ファルコン20(要人輸送機として運用)
    フォッカー F27
    ヘリコプターベル205(「パンハ・シャバビズ2-75」の名でコピー)
    ベル206(「パンハ・シャバビズ2061」の名でコピー)
    AH-1J(独自改良型としてパンハ2091がある)
    CH-47C
    車両
    戦車パフラヴィー朝時代に購入:
    M48A5
    M60A1
    チーフテン
    FV101 スコーピオン(独自改良型の「Tosan」も生産)

    革命後に購入:
    T-62
    T-72(一部はライセンス生産)
    59式戦車
    69/79式戦車
    ゾルファガール(自国開発)
    サフィール74(59式戦車・69/79式戦車の独自改良型)
    サムサーム(国産)
    装甲車パフラヴィー朝時代に購入:
    BTR-50?
    BTR-60
    M113A1/A2(後にイラン・イラク戦争鹵獲したり、湾岸戦争時に脱出した旧イラク軍の車両も編入)
    EE-9 カスカベル

    革命後に購入:
    BTR-50
    BTR-60PB
    ボラーグ(BMP-1風の車体にM113の転輪を装備した装甲兵員車両)
    歩兵戦闘車革命後に購入:
    BMP-1
    BMP-2
    榴弾砲
    ・カノン砲
    パフラヴィー朝時代に購入:
    M101 105mm榴弾砲
    M114 155mm榴弾砲
    M115 203mm榴弾砲

    革命後に購入・開発:
    D-30 122mm榴弾砲
    54式122mm榴弾砲(ソ連製M-30 122mm榴弾砲の中国版コピー)
    D-20 152mm榴弾砲
    GC-45 155mm榴弾砲(カナダ製の榴弾砲。イラン・イラク戦争時に大量に鹵獲)
    ソルタムM71 155mm榴弾砲(イスラエルから設計図を入手してコピー)
    自走砲パフラヴィー朝時代に購入:
    M109A1 155mm自走榴弾砲?(「ラード*22」という独自の改良型が有り)
    M110 203mm自走榴弾砲(同型のM107 175mmカノン砲も購入)

    革命後に購入:
    2S1 122mm自走榴弾砲
    コクサン(北朝鮮製。170mm沿岸砲を59式戦車の車体に搭載。)
    ラード1(ボラーグの車体に2S1の砲塔を搭載した国産自走砲)
    対空砲BMT-2「コブラー」(ゾルファガールの車体にZSU-23-2連装機関砲を搭載した対空戦車)
    対戦車ミサイルトゥーファン(アメリカのTOWのコピー。徹甲弾頭のトゥーファン2もある)
    サーエゲ(アメリカのM47 ドラゴンのコピー)
    ミラン
    ラード(ソ連製9M14(AT-3)のライセンス生産型。二重弾頭の「ラードT」も有る)
    M-113「トーサン」(9M113(AT-5)のライセンス生産型)
    地対空ミサイルレイピア?(パフラヴィー朝時代に購入)
    MIM-23「ホーク」(パフラヴィー朝時代に購入)
    S-75(SA-2)
    2K12(SA-6)
    S-300(SA-10)
    地対地ミサイルKh-55(AS-15「ケント」)(ソ連崩壊時にウクライナから入手)
    サーエゲ(地対艦ミサイルとしての運用も行われる国産の短射程(80〜250km)巡航ミサイル
    中距離弾道ミサイルシャハブ3
    シャハブ6
    アーシューラー
    クーサール
    セッジール
    ムスダン(北朝鮮製。少なくとも18基分の資材がイランに渡ったことが判明している。)

  • 海軍
    フリゲートアルヴァンド級(Vosper Mk.5)
    モウジ級
    コルベットハムゼ級
    バヤンドル(旧・米PF-103)級
    哨戒艇MIG-G-800級
    ミサイル艇カマン(ラ・コンバタントII)級
    シナ級
    トンダル(P-29B)級
    潜水艦ガディル級
    ナハン級
    カーイム級

*1 しかしイラン・イラク戦争後、アメリカが極秘裏に武器を輸出していたことが暴露されることになる(イランゲート事件)。
*2 Raad:ペルシャ語で「雷」を意味する。

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