【イージス艦】(いーじすかん)

"AEGIS combat system"
イージスシステムを搭載した戦闘艦の通称。
イージスシステムは攻撃機対艦ミサイルなどの急速な進化に伴い、これらの脅威から航空母艦を守ることを主任務として開発された。
冷戦時代、ソ連軍はアメリカの空母機動部隊を殊のほか恐れ、これに対抗するため航空機対艦ミサイルを増強していた。これらを同時に用いた飽和攻撃を受けた場合、従来のミサイル艦ではこのような同時多数目標への対応が不可能である事から、アメリカ海軍は同時多数目標への対応が可能なシステムの開発に乗り出した。

このような米海軍の要求に応え、当時、海軍が使用していた艦対空ミサイルテリア?」「タロス?」「ターター?」(3種類をまとめて「3-T」と呼んでいた)の後継となるべく「タイフォン?」対空防御システムが開発されていたが、あまりのシステムの複雑さゆえの重量・コストおよび運用上の問題から1963年に開発は中止された。
また、60年代、LINK11 NTDSが登場し、各艦が艦隊として結合して運用される時代となっていたが、それでも、急速に発展するソ連の対艦ミサイルには対処することが出来なかった。

そこで、1964年「ASMS(Advanced Surface Missile System:先進水上ミサイル・システム)」計画が始まり、1969年「Aegis」計画と改名された。ASMSで開発されていたレーダーは、「AN/SPY-1」となり、「3-T」の改良型として「SM-2:Standard Missile-2(RIM-66)」が生まれた。
これらにより、従来の艦では対空ミサイルを同時に1〜2発しか誘導できなかったのに対し、最大16の目標への同時対応能力と、高度な艦隊指揮能力を手に入れた。
イージス艦1番艦であるCG47タイコンデロガは1983年1月22日に就役した。

イージスシステムの最大の特徴であるフェイズドアレイレーダーAN/SPY-1は、飛来する数百の目標を数百kmの遠方より探知し、そのうち十数個の目標に対して同時に迎撃することが可能と云われており、航空母艦だけでなく行動を共にする艦隊全体の防空に絶大な効力を発揮する。
その他、イージス艦は対艦、対潜作戦にも同時期の新鋭戦闘艦と同等の能力を持ち、中には(艦対地)巡航ミサイルの発射能力を持つものもある。

イージス艦は非常に高価な上、これ程の能力を必要としている国も少ないため、2008年現在、タイコンデロガ級、アーレイ・バーク級(アメリカ)、こんごう型、あたご型(日本)、アルバロ・デ・バサン級(スペイン)、フリチョフ・ナンセン級(ノルウェー)、世宗大王級(韓国)が配備されているのみである。*1
冷戦終結後の現在では艦隊防空だけではなく、SM-3を持ち、ミサイル防衛にも活用されることが期待されている。
また、それに関係して米海軍タイコンデロガ級巡洋艦の初期型、ベースライン0及び1と呼ばれるグループの5艦は、装備するMk26ミサイルランチャーがベースライン2以降の艦が装備するMK48VLSと比べ、発射数や使用可能なミサイルの面に於いて旧式化。
4番艦ヴァレー・フォージは2004年8月30日、1番艦タイコンデロガは同年9月30日、2番艦ヨークタウンは同年12月3日、5番艦トーマス・S・ゲイツは2005年12月14日、3番艦ヴィンセンスは2005年6月29日に退役した。

なお、イージスシステムの名称は、ギリシャ神話の最高神ゼウスが娘アテナに与えた、あらゆる邪悪を払う防具(盾、あるいは胸当てと言われる)の名前 Aegis(アイギス) に由来する。

関連:対潜魚雷 CIWS 艦載砲 垂直発射システム


*1 その他、台湾とオーストラリアが配備を計画中である。

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