【アブロ・バルカン】(あぶろ ばるかん)

イギリスのアブロ?社が開発したジェット爆撃機
1947年から開発が始まり、1948年に先行試作機である「アブロ707」が完成。原型機の初飛行は1952年で、1956年に就役した。
イギリスの実用機で初のデルタ翼を採用し、巨大なデルタ翼が機体の大半を占めているのが特徴である。
エンジンは、原型機はロールス・ロイス「エイヴォン」、試作機はアームストロング・シドレー「サファイア」、量産型はブリストル・シドレー「オリンパス」エンジンを4基搭載する。
なお、超音速能力は持っていない。

当初は戦略爆撃機として開発されたが、空中発射核ミサイルの開発が滞り、またイギリスの核戦略が戦略潜水艦中心となったことから、戦術爆撃機として運用されることになった。
ヴィッカース「バリアント?」やハンドレページ「ビクター?」と合わせて「3Vボマー」と称される。
その中でも本機は低空侵攻能力に優れていたため最も長い間就役し、フォークランド紛争に参戦した。

また、長いランディングギアからくる地上とのクリアランスの余裕を買われ、エンジンのテストベット機としても活躍していた。
ホーカー・シドレー トライデント?やBAC 1-11?旅客機に搭載された世界初の実用ターボファンエンジンであるロールス・ロイス「スペイ」やコンコルド向けのオリンパス593、パナヴィア・トーネード用のRB199といったエンジンの空中試運転に同機が用いられていた。

イギリス空軍からは1984年に全機が退役した。
また、展示用として保存されていた1機「XH558」は寄付により飛行可能な状態で復元され、各地の航空ショーで飛行展示を行っていたが、資金面と交換用エンジンや部品の不足により2012年11月に引退した。

スペックデータ

乗員5名(操縦士副操縦士、航空電子士官、レーダー航法者、進路設定者)
全長29.6m(Mk.1)
30.5m(Mk.1A)
32.2m(Mk.2)
30.5m(Mk.2A/Mk.2(MRR)/K)
全高8.1m(Mk.1/Mk.1A)
8.3m(Mk.2/Mk.2A/Mk.2(MRR)/K)
全幅30.3m(Mk.1/Mk.1A)
33.8m(Mk.2/Mk.2A/Mk.2(MRR)/K)
翼面積330.2m²
空虚重量37,144 kg
最大離陸重量77,111kg
最大兵装搭載量9,535kg
エンジンブリストル・シドレー オリンパス101シリーズターボジェット×4基(Mk.1/Mk.1A)
ブリストル・シドレー オリンパス201シリーズターボジェット×4基(Mk2/Mk2A/Mk2(MRR)/K)
ブリストル・シドレー オリンパス301ターボジェット×4基(Mk.2A)
エンジン推力49kN (11,000lbf)(101シリーズ)
76kN(17,000lbf)(201シリーズ)
89kN(20,000lbf)(301シリーズ)
速度
(最高/巡航)
マッハ0.96/543kt
航続距離4,171km
実用上昇限度16,760m
武装胴体内に巡航ミサイル爆弾類を搭載可能。
ブルースチールMk.1空対地巡航ミサイル
AGM-45M「シュライク」対レーダーミサイル
454kg通常爆弾
ブルーダニューブ核爆弾
イエローサン水素爆弾


主な派生型

  • VX770/771:
    原型機。2機が製作された。

  • VULCAN B.Mk1:
    初期の生産型。
    ブリストル・シドレー オリンパス 101, 102, 104 ターボジェットエンジンを搭載する。

  • VULCAN B.Mk1A:
    Mk1に電子妨害装置を搭載したもの。

  • VULCAN B.Mk2:
    AGM-48「スカイボルト」ALBM搭載型。
    エンジンはブリストル・シドレー オリンパス 201, 202, 203ターボジェットを搭載。

  • VULCAN Mk.2A:
    B.Mk.2の改修型。
    エンジンはブリストル・シドレーオリンパス 201, 202, 203, 301を搭載。

  • VULCAN Mk2(MRR)/SR 2:
    B.Mk2を改修した洋上レーダー偵察機型。11機改修。

  • VULCAN B.Mk2K:
    VULCAN B Mk2とB Mk2 (MRR)を改修した空中給油機型。6機改修。

  • XA902:
    Mk1の改修型。
    ロールスロイス・スペイエンジンの開発に使用された。

  • XA984:
    Mk1の改修型。
    コンコルド用のオリンパスエンジンの開発に使用された。


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