【おおすみ】(おおすみ)

  1. LST-4001 JS Osumi(初代)
    1960年代、アメリカ海軍から貸与されたLST-1級戦車揚陸艦の1隻。
    米軍時代の艦名は「ダゲット・カウンティ(LST-689)」。
    同時期に貸与された「しもきた(初代・米軍旧名"ヒルズデール・カウンティ(LST-835)")」及び「しれとこ(米軍旧名"ナンスモンド・カウンティ(LST-1064)")」*1と共に第1輸送隊を編成、1965年に起きた伊豆大島大火の救援活動や1972年の沖縄諸島返還に伴う日銀から沖縄への日本円現金輸送などの重要任務で活躍した。
    1974年、国産輸送艦の「あつみ」型就役に伴って自衛艦籍を抹消、アメリカへ返還後、スクラップとして処分された。

    スペックデータ
    種別戦車揚陸艦
    主造船所ジェファーソンヴィル・ボート&マシーン社(LST-689)
    アメリカン・ブリッジ社(LST-835)
    ベスレヘム・ヒンガムシップヤード(LST-1064)
    基準排水量1,650t
    全長100m
    全幅15.2m
    喫水4.1m
    機関ゼネラルモータース製12-567ディーゼル(1,700hp)×2基 2軸推進
    速力11ノット
    乗員定数100名
    艦載艇LCVP×2隻
    武装ボフォース 40mm機関砲×連装2基・単装4基
    (「おおすみ」はボフォース40mm単装機関砲×7基、エリコン20mm単装機関砲×7基)


    同型艦
    艦番号艦名起工進水就役退役編入除籍
    LST-4001おおすみ
    (JS Osumi)
    1944.1.111944.3.91944.5.21946.3.1960.4.11974.3.30
    LST-4002しもきた
    (JS Shimokita)
    1944.9.61944.10.251944.11.201946.1.1960.4.11975.3.31
    LST-4003しれとこ
    (JS Shiretoko)
    1945.1.91945.2.141945.3.121946.8.211961.4.11976.3.31

  2. LST-4001 Osumi(2代)
    海上自衛隊初の大型輸送艦(ジェーン海軍年鑑では「ドック型揚陸艦」と記述されている)。
    姉妹艦に「しもきた(LST-4002)」「くにさき(LST-4003)」がある。

    それまで海自が保有していた「おおすみ(初代)」型・「あつみ」型・「みうら」型のように、直接海岸に乗り上げるタイプ(ビーチング式)の輸送艦と違い、船内に搭載したエアクッション型揚陸艇(LCAC)やヘリコプターを利用して人員・資材を陸揚げする艦として設計された。
    そのため、航行速度を大幅に改善することができ、一方ではより多くの海岸部への資材・人員の揚陸が可能になり、運用の幅を大いに広げることができた。
    (ビーチング式揚陸艦が接岸できる海岸は地球上の全海岸線の15%程度、と言われている)

    基準排水量は8,900tであるが、これは先進諸国の持つ揚陸艦としては標準的なもので、ようやく実用に堪える揚陸艦を装備したといえる。 
    船内に作られた330名分の宿泊設備や医療設備は、災害派遣などにも非常に有用である。

    一方で、ヘリコプターの発着が可能な全通甲板を持っている(このことで就役当時、メディアは「空母にも転用可能では?」と誤報していた*2)が、航空機の格納庫や整備機材を持っておらず、ヘリ運用能力はない。
    揚陸作戦に必要な指揮管制や通信の能力、人員も貧弱で、何より肝心のLCACが敵前上陸を前提に作られていないため、ジェーン年鑑の記述どおり「ドック型揚陸艦」とみるのが適切であろう。
    全通甲板は物資の搭載やヘリコプターの発着を容易にするが、船体の設計の自由を多少奪ってしまうため、先進諸国が保有する同規模の揚陸艦に比べた場合、搭載能力がやや小さくなってしまったが、同艦が画期的な艦であることに変わりはない。

    現在は上記の同型艦3隻で第1輸送隊(掃海隊群隷下*3)を編成している。

    スペックデータ
    排水量
    基準/満載
    8,900t/14,000t
    全長178m
    全幅25.8m
    深さ17.0m
    喫水6.0m
    機関三井 16V42M-Aディーゼルエンジン(出力27,000hp)×2基2軸推進
    最大速力22kt
    乗員135名
    兵装高性能20mm機関砲CIWS)×2基
    レーダーOPS-14C? 対空レーダー×1基
    OPS-28D 水上レーダー×1基
    OPS-20? 航海レーダー×1基
    電子戦・対抗手段Mk137 6連装デコイ発射装置×4基
    輸送能力1号型エアクッション艇×2隻
    普通科3個中隊330人
    大型トラック×38台(第1甲板)・27台(第2甲板)
    90式戦車または74式戦車×18輌

    同型艦
    艦番号艦名主造船所起工進水就役所属艦隊母港
    LST-4001おおすみ三井造船
    玉野営業所
    1995.12.61996.11.181998.3.11第1輸送隊
    (護衛艦隊直轄)
    LST-4002しもきた三井造船
    玉野営業所
    1999.11.302000.11.292002.3.12第1輸送隊
    (護衛艦隊直轄)
    LST-4003くにさき日立造船
    舞鶴工場
    2000.9.72001.12.132003.2.26第1輸送隊
    (護衛艦隊直轄)

  3. JCG Osumi(PLH-03)
    海上保安庁・「つがる」型巡視船の2番船。1979年就役。
    現在は第十管区鹿児島海上保安部に所属している。

    スペックデータ
    排水量
    (総排水量/常備排水量)
    3,221t/4,037t
    全長105.4m
    全幅14.6m
    深さ8.0m
    機関SEMTピルスティク 12PC2-5Vディーゼルエンジン(15,600hp)×2基・2軸推進
    最大速力23kt
    乗員71名*4
    兵装ボフォースL/60 40mm機関砲×1基
    エリコンSS 20mm機銃×1基
    搭載機ベル212救難ヘリコプター×1機

  4. 試験用人工衛星「おおすみ」。
    1970年2月、東京大学宇宙航空研究所が「L-4S」ロケット第5号機により打ち上げた日本初の人工衛星。
    名前は、発射地のあった鹿児島県・大隅半島に由来している。

    この成功により、日本はソ連(ロシア)・アメリカ・フランスに続く世界で4番目の人工衛星打ち上げ国となった*5が、これらの国が弾道ミサイル開発からのスピンオフとして人工衛星に発展したのに対し、日本は大学の研究機関の主導により、純然たる民生技術として開発に着手されたことに特徴がある。

    打ち上げから14〜15時間後、搭載された電池の消耗*6により電波発信が止まって運用終了。
    その後、スペースデブリとして33年間衛星軌道上にあったが、JAXA統合前の2003年8月、北アフリカ上空(エジプト・リビアの国境付近)で大気圏に突入して消滅した。

    性能諸元
    全長100cm
    直径48cm
    質量23.8kg
    推進方式固体燃料ロケットモーター
    電池酸化銀-亜鉛一次電池(容量5AH)
    発生電力10.3kW
    設計寿命約30時間
    搭載機器縦方向精密加速度計
    縦方向加速度計
    ストレンゲージ型温度計
    テレメーター送信機
    ビーコン送信機
    パイロット送信機
    【軌道要素】
    軌道楕円軌道
    近点高度350km
    遠点高度5,140km
    軌道傾斜角31度
    軌道周期145分

    関連:ペンシルロケット ミューロケット まいど1号


*1 本艦は日本より返還後、アメリカ経由でフィリピン海軍に再貸与され、「サマール・デル・ノルテ」として1990年代まで使われていた。
*2 自衛隊が(ヘリコプター)空母を手にするのは、それから約10年後のことであった。
*3 かつては護衛艦隊直轄だったが、2016年7月の改編で現在の配置になった。
*4 5番艦「ざおう」以降は69人。
*5 この直後、中華人民共和国が「東方紅1号」の打ち上げに成功、5番目の人工衛星打ち上げ国となる。
*6 当初の運用寿命は(電池の容量から)約30時間とされていたが、衛星本体の断熱が不十分であったため急速に電池が消耗してしまったという。

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