Last-modified: 2023-04-03 (月) 18:39:26 (56d)

【Yak-3】(やーくとりー)

Яковлев Як-3 / Yakovlev Yak-3

大祖国戦争(第二次世界大戦)期にソビエト連邦のヤコブレフが開発、赤軍で運用された単発レシプロ戦闘機

特徴

Yak-1戦闘機の発展型として開発され、試作機のYak-1Mは1943年2月に初飛行した。
機体構造には翼幅や翼面積の縮小による軽量化、エンジン冷却吸気口の翼根部との一体化、風防形状、急降下性能向上のために強化された主翼桁などの変更が加えられ、戦闘能力の向上が図られている。

主要な生産型は低高度出力に優れる"VK-105PF2"液冷エンジン(出力1,290PS)を搭載し、同時期の単発戦闘機としては小柄で軽量な機体構造から優れた運動性能・速度性能を発揮した。

相対するドイツ空軍Bf109G型Fw190A型に対しては、高高度における飛行性能以外のあらゆる点で優位であった。

運用

1944年3月に生産初号機が完成、部隊配備が開始されたYak-3はソ連軍の大規模攻勢に参加、空中戦で大きな戦果を挙げ、ドイツ軍の脅威となった。

1944年7月、41機のYak-3初期生産型を受領した第91戦闘飛行連隊はリヴィウ攻勢における制空戦闘任務に参加、最初の3週間の間に2機の損失で23機のドイツ軍機*1撃墜戦果を挙げた。

自由フランス軍人によって構成されるソ連軍航空隊「ノルマンディー」はYak-3を用いてリトアニア・ネマン川を渡河する地上部隊を支援したことで、ソ連の最高指導者スターリンにより「ネマンスキー」の称号を与えられた。
これにより、ノルマンディーは部隊名を「ノルマンディー・ニーメン」に改めた。

Yak-3を強力な制空戦闘機として認識したドイツ空軍は「Yak-3との高度5,000m以下での戦闘は避けよ」という命令を自軍の戦闘機パイロットに通達した。

1944年から1946年3月までに製造されたYak-3の総生産数は4,848機*2で、戦後はポーランドやユーゴスラビアなどの共産主義国家での運用の他、再建から間もないフランス空軍に贈呈された機体はパリの防空を担った。

1946年9月時点ではソ連軍において2,000機以上が運用されていたが、徐々にジェット戦闘機へ置き換えられ、1952年にはソ連国土防空軍で運用終了を迎えた。

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性能

型式Yak-3Yak-3P
乗員1名
全長8.49m
翼幅9.20m
全高2.38m
翼面積14.83
翼型翼根:Clark YH (14%); 翼端:Clark YH (10%)
空虚重量2,105kg2,150kg
全備重量2,650kg2,708kg
エンジンVK-105PF2 液冷V型12気筒×1基
プロペラ定速3翅
出力
(仏馬力/kW)
離昇:1,290PS/948kW
1速:1,310PS/963kW(高度200m)
2速:1,240PS/911kW(高度2,100m)
最高速度567km/h(海面高度)
645km/h(高度4,100m)
巡航速度600km/h
上昇性能高度5,000mまで4分30秒(18.51m/s)
上昇率21.66m/s
実用上昇限度10,700m
航続距離550km(戦闘)
648km(実用)
翼面荷重179kg/183kg/
馬力荷重363W/kg355kW/kg
固定武装
モーターカノンShVAK 20mm機関砲×1門(装弾数100発)B-20 20mm機関砲×1門(装弾数120発)
胴体UBS 12.7mm機関銃×2挺(装弾数各170発)B-20S 20mm機関砲×2門(装弾数各130発)


型式Yak-3UYak-3(VK-108搭載型)
乗員1名
全長8.17m8.55m
翼幅9.40m9.20m
翼面積17.1514.85
空虚重量2,273kg2,382kg
全備重量2,792kg*32,896kg
エンジンASh-82FN 空冷星型14気筒×1基VK-108 液冷V型12気筒×1基
プロペラ定速3翅
出力
(仏馬力/kW)
離昇:1,850PS/1,360kW離昇:1,850PS/1,360kW
1速:1,650PS/1,213kW(高度1,500m)
2速:1,500PS/1,102kW(高度4,500m)
最高速度705km/h(高度6,100m)745km/h(高度6,290m)
上昇性能高度5,000mまで4分(20.83m/s)高度5,000mまで3分30秒(23.80m/s)
実用上昇限度11,250m10,400m
航続距離778km-
翼面荷重163kg/195kg/
馬力荷重487W/kg469kW/kg
固定武装
モーターカノンなしNS-23 23mm機関砲×1門(装弾数60発)
機首B-20S 20mm機関砲×2門(装弾数各120発)なし


型式

  • Yak-1M(Як-1М):
    Yak-1の発展型として開発された試作戦闘機。
    武装はShVAK 20mm機関砲×1門(モーターカノン)とUBS 12.7mm機関銃×1挺(胴体)。

    • 1号機:
      1943年2月に完成、初飛行した。
      VK-105PF液冷エンジン(出力1,260PS)を搭載、ラジエーター吸気口はYak-1と同様に機首下部に配置された。

    • 2号機:
      VK-105PF2液冷エンジン(出力1,310PS)を搭載、ラジエーター吸気口は翼根部と一体化し、機体構造が強化された。
      1号機と比べて空力的に洗練され、エンジン出力も増大したため飛行性能が向上、Yak-3生産型の原型となった。

  • Yak-3(Як-3):
    主生産型。
    VK-105PF2液冷エンジンを搭載、武装はShVAK 20mm機関砲×1門(モーターカノン)とUBS 12.7mm機関銃×2挺(胴体)。

    • 生産初期型:
      Yak-1Mと同様の武装をもつ。
      1944年8月までに製造された197機が該当する。

    • VK-107A搭載型:
      VK-107A液冷エンジン(出力1,550PS)を搭載する。
      エンジン寸法の変更から機首が通常型と比べて延長された。武装はB-20S20mm機関砲×2門(機首)。
      1945年春から少数機が製造、実戦配備された。

      • VK-108搭載試験型:
        VK-108液冷エンジン(出力1,850PS)を搭載する。
        新型のプロペラ、ラジエーター、オイルラジエーターを装備し、武装はNS-23 23mm機関砲×1門(モーターカノン)*4
        1944年12月に初飛行、試験ではソ連製レシプロ機としては最速の745km/h(高度6,290m)を記録したが、過剰なエンジン加熱や異常振動など問題が多数発生した。

  • Yak-3P(Як-3П):
    武装強化型。
    B-20/B-20S*5 20mm機関砲×3門を搭載する。
    1945年4月から596機が製造された。

  • Yak-3K(Як-3К):
    武装強化試験型。
    Yak-3のモーターカノンをNS-45 45mm機関砲×1門とした。
    試験飛行で45mm機関砲発射時の反動が機体構造に過大な負荷を与えることが判明、採用されなかった。

  • Yak-3PD(Як-3ПД):
    高高度性能向上型。
    実験的に開発された高高度向けのVK-105PD液冷エンジンを搭載し、実用上昇限度は13,300mに達した。
    VK-105PDの信頼性の低さのために採用されなかった。

  • Yak-3RD(Як-3РД):
    RD-1ロケットエンジン(推力300kg)を機体尾部に搭載する。
    1945年5月11日の試験飛行で最高速度782km/h(高度7,800m)を記録した。

  • Yak-3T(Як-3Т):
    武装強化試作型。
    武装はN-37 37mm機関砲×1門(モーターカノン)とB-20S 20mm機関砲×2門。
    操縦席の位置は40cm後退している。
    N-37の砲身先端にはマズルブレーキが取り付けられており、最大で反動の75%を吸収した。

    • Yak-3T-57(Як-3Т-57):
      OKB-16-57*6 57mm機関砲搭載型。

  • Yak-3TK(Як-3ТК):
    ターボチャージャー試験型。
    ターボチャージャー付きのVK-107A液冷エンジンを搭載する。

  • Yak-3U(Як-3У):
    試作戦闘機型。
    ASh-82FN空冷エンジン(出力1,850PS)を搭載、武装はB-20S20mm機関砲×2門。
    1945年5月に初飛行、その後の試験飛行で通常のYak-3を凌駕する飛行性能を示したが、実用段階に達した時点で戦争の趨勢は決しており、戦闘機としての生産型とはならなかった。

    • Yak-3UTI(Як-3УТИ):
      練習機型。
      Yak-3Uを原型に複座化、訓練飛行向けに戦後から生産された。

  • Yak-11(Як-11):
    Yak-3の機体を流用した練習機。
    ASh-21空冷エンジン(出力700PS)を搭載する。

  • Yak-3M(Як-3М):
    新造型。 1991年から2002年にかけてヤコブレフが12機を製造した。
    アメリカのアリソン社製"V-1710"液冷エンジンを搭載する。


*1 Bf109G×14、Fw190A×6、Ju87×3。
*2 戦中の製造数は4,111機。
*3 全金属製機体の全備重量は2,740kg
*4 武装がB-20S 20mm機関砲×2門(機首)の機体も存在した。
*5 B-20Sは同調機構を備える同軸機銃
*6 N-57とも呼ばれる。

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