Last-modified: 2023-02-25 (土) 08:38:33 (215d)
【US-2】 †
新明和 US-2
海上自衛隊が捜索救難用として使用している水陸両用飛行艇。
それまで使用されてきたUS-1の後継として開発された経緯から、当初は「US-1A改」と呼ばれていた。
2023年現在、世界で唯一とも言える「荒天下の荒波で離着水が可能*1」な飛行艇である。
本機は前作のUS-1に比べ、離着水時の操縦性改善および患者輸送環境の改善が図られ、洋上救難能力の維持向上が目指された。
主な改良点として、
- フライバイワイヤーの導入。
- グラスコックピットの採用。
- 統合型計器板の導入。
- エンジン換装(ロールスロイス AE2100J)および制御方式のデジタル化(FADEC)。
- プロペラの換装(ダウディR414)。
- チタン合金や炭素系複合材(CFRP)の使用による構造材の軽量化。
- 捜索装備としてFLIRの搭載。
- コックピット以外のキャビンの与圧*2。
などの改良が施されている。
また、救難活動の他に消防活動の能力も加えられており、湖水・内海・外洋に着水して13秒間に15トンの水を取水し、何度も往復しての消火活動が可能である。
なお、試作機には1号機が白地に赤の「丹頂鶴」、2号機が白地に青の「刀」と呼ばれるカラーリング*3が施されていたが、現在は量産機と同じ洋上迷彩になっている。
今後の展開 †
メーカーの新明和工業では、ローンチカスタマーとなる防衛省への販売以外にも、本機を防災用機として国内外の一般ユーザーへ販売することを計画していた。
当初は武器輸出三原則等との関連もあって実現は困難と見られていたが、2012年に当の武器輸出三原則等が緩和され、非戦闘目的での装備品の輸出が可能となった。
そして2013年3月、インドが本機の輸入を希望していることが明らかにされ、防衛省が保有する本機に関する知的所有権を新明和が利用可能にするなど、輸出に向けた諸準備が進められているという。
また、インドネシアやタイも本機に興味を示しているという。
ただし、「コストの高さ」や「現行の規定で民間機としての型式証明を取得すると、本機のセールスポイントである『荒天下での離着水』が不可能になる*4」などの問題もあるという。
スペックデータ †
用途 | 救難飛行艇 |
乗員 | 11名 (機長、副機長、機上整備員2名、捜索救難調整官、航法・通信員1名、 機上救護員2名、機上救助員3名) |
全長 | 33.25m |
全高 | 10.06m |
全幅 | 33.15m |
最大重量 (離着陸/離着水) | 47.7t/43.0t |
エンジン | ロールス・ロイス? AE2100Jターボプロップ(出力4,591shp)×4基 |
境界層制御 | LHTEC T800 ターボシャフトを使用 |
速度 (最大/巡航) | 315kt/260kt |
滑走距離 (離水/着水) | 280m/310m |
航続距離 | 4,700km |
巡航高度 | 20,000ft(約6,100m)以上 |
実用上昇限度 | 未公表(30,000ft(約9,150m)以上) |
ユニットコスト | 約100億円 |
派生型 †
*1 波高3mの海面にも離着水が可能だという。
*2 US-1ではコックピット以外は与圧されていなかったため、運用高度に制限があり、悪天候時の活動も制約されていた。
*3 前者は「JAL仕様」、後者は「ANA仕様」とも呼ばれていた。
*4 これは、着水時の進入速度が失速速度の130%に制限されるためだという。