Last-modified: 2020-10-12 (月) 21:10:16 (19d)

【Tu-16】(てぃーゆうじゅうろく)

旧ソ連のツポレフ設計局が開発した戦略爆撃機
NATOコードBadgar(バジャー)*1

Tu-16は、戦後量産されたツポレフ製爆撃機の中では最も生産数が多い機体(ソ連/ロシアで約1,515機、中国は現在も生産中)で、1940年代後期から開発を開始。
元々コピー品であるソ連版B-29Tu-4「ブル」爆撃機の胴体やシステムを流用しており、加えて新型の後退角付き主翼・降着装置・双発ジェットエンジンを装着した。
主翼の後退角は、内側で41度、外側で37度となっており、主脚は主翼のバルジに収納される。

基礎的な部分はTu-4からの流用だったため開発時間はさほどかからず、1952年に初飛行(名称タイプ88)、1954年からソ連軍への引渡しが開始された。
派生型も爆撃型・偵察型・電子戦型・電子妨害型・空中給油型・情報収集型・雷撃機型等多く製造された。
兵装の方も多種多様で通常爆弾核兵器爆雷魚雷機雷の他、大型の空対艦/対レーダーミサイル*2を搭載出来る。
固定武装には尾部にNR-23? 23mm機関砲を2門搭載しており、西側空軍の戦闘機がスクランブルでTu-16に接近した時には、必ずと言っていいほど銃口を向けられていたと言う。

西側への初公開は、1955年にモスクワの「赤の広場」で行なわれた航空記念祭で、この時は54機ものTu-16の編隊が赤の広場上空を飛行し、NATO関係者を驚かせた。
その後、1990年代にロシア軍から退役するまで、極東アジア地域・ヨーロッパ地域にTu-16が西側諸国の偵察のため多数出没している。

日本に飛来した中で一番有名な出来事は、1987年12月9日にソ連軍のTu-16・3機が沖縄本島に飛来した事で、11分にわたる領空侵犯を行った。(自衛隊が創設以来初めて警告射撃を行った事件として有名である)
また、艦船に異常接近する場合もあり、1980年6月27日には、新潟県の佐渡島北方約110kmの日本海で、海上自衛隊輸送艦「ねむろ(LST-4103)」の目の前で墜落し、同艦が乗員3人の遺体を収容するという事故を起こしている*3

主な戦歴としては第3次中東戦争アフガニスタン侵攻?イラン・イラク戦争に参加している。

ロシア軍からは1990年代に退役したため純粋なTu-16は存在しないが、中国向けに改良されライセンス生産された西安 轟炸6型(H-6)が、現在でも中国人民解放軍で運用されている。

Tu-16.jpg

Photo:Photo:Russia air force

関連:Tu-4 Tu-22M Tu-95 Tu-160 轟炸6

スペックデータ

Tu-16
乗員6名
全長34.80m
全高10.36m
全幅32.99m
機体重量
(自重/全備)
37,000kg/75,800kg
エンジンミクーリン RD-3M-500ターボジェット×2基(推力9,520kg)
燃料搭載量34,360kg
飛行速度
(最大/巡航)
1,050km/h / 750〜850km/h
上昇率(海面上)N/A
実用上昇限度12,300m
離着陸距離
離陸/着陸
2,200m/1,200m
航続距離4,800km(AS-4ASM×2基搭載時)
固定武装NR-23 23mm機関砲×2基(尾部銃座)
兵装対艦/対レーダーミサイル×2発(AS-4、AS-5、AS-6など)
自由落下型爆弾


Tu-104
乗員数7名
座席数50〜100名
全長40.05m
全高11.90m
翼巾34.54m
翼面積184
空荷重量41,600kg
最大離陸重量41,600 kg
エンジンミクーリン AM-3-500 ターボジェット(推力95.1 kN)×2基
速度
(最大/巡航)
950km/h / 750km/h
巡航高度11,500m
航続距離2,650km
上昇率10m/s


Tu-16の派生型(カッコ内は生産・改修機数)

  • 航空機88:
    原型機および生産前機。
    原型機は別名「Tu-88」、「N型航空機」とも呼ばれた。

  • 航空機97:
    2基のRD-5エンジンを搭載したTu-16の双発長距離爆撃機開発計画。

  • 航空機103:
    4つのVD-7AM-13エンジンを搭載したTu-16の超音速爆撃機開発計画。

  • 航空機90:
    ターボプロップ型。計画のみ。

  • Tu-16 "バジャーA":
    中距離爆撃機として開発された通常爆撃機型。
    自由落下爆弾を最大9トン搭載可能。

    • Tu-16A(453機):
      核兵器運用能力を持つ戦略爆撃機型。
      シリーズ中最多の生産数となった。

    • Tu-16Z:
      ウイング・トゥ・ウィング(wing-to-wing)方式の空中給油機型。

    • Tu-16G(Tu-104G):
      郵便機型。
      また、アエロフロートの乗員訓練用にも用いられた。

    • Tu-16N:
      プローブ&ドローグ?方式の空中給油機型。
      Tu-22/Tu-22M専用。

    • Tu-16T:
      ソ連海軍が運用する海上攻撃型(雷撃機)。魚雷機雷爆雷を搭載。
      その後、全機がTu-16Sに改修された。

    • Tu-16S:
      洋上捜索救難機型。救命ボートを搭載。

    • Tu-16Ye:
      電子戦/ELINT機型。
      電子情報収集装置や妨害装置を搭載した。

  • Tu-16V(3機):
    水素爆弾の運用能力を持つ戦略爆撃機型。
    1961年10月30日に行われた「ツァーリ・ボンバ?」の投下試験で、測定・撮影機として使用された*4

  • Tu-16B:
    エンジンをM-16-15(RD-16-15)に換装した中距離爆撃機型。

  • Tu-16K:
    対艦ミサイル運用能力を持つ長距離ミサイル爆撃機型。

    • Tu-16KS "バジャーB":
      KS-1「コメート」(AS-1「ケンネル」)対艦ミサイル搭載型。
      インドネシアとエジプトに輸出された。

    • Tu-16K-10 "バジャーC"(216機):
      K-10(AS-2「キッパー」)対艦ミサイル搭載型。機首レーダーを装備。

      • Tu-16K-10-26:
        対艦ミサイル搭載型。
        K-10S対艦ミサイル1基とKSR-2(Kh-10S/AS-5「ケルト」)またはKSR-5(Kh-10SD/AS-6「キングフィッシュ」)2基(K-26ミサイル複合体)を搭載。
        後に、一部の機体がELINT機に改修された。

    • Tu-16K-11 "バジャーG":
      Kh-16(KSR-2)およびKh-26(KSR-5)対艦ミサイル搭載型。

      • Tu-16K-16(Tu-16KSR-2とも):
        K-16複合体(KSR-2対艦ミサイル2基)搭載型。

      • Tu-16K-11-16(Tu-16KSR-2-11とも):
        KSR-2対艦ミサイル(K-16複合体)またはKSR-11対レーダーミサイル2基(K-11複合体)搭載型。

      • Tu-16K-26(Tu-16KSR-2-5-11またはTu-16KSR-2-5*5とも):
        KSR-5対艦ミサイル2基(K-26ミサイル複合体)搭載型。

      • Tu-16K-26P:
        K-26Pミサイル複合体(KSR-5P対レーダーミサイル2基、およびKSR-5、KSR-2またはKSR-11)搭載型。

  • Tu-16P「ヨールカ*6("バジャーH")」:
    電子戦機型。スタンドオフ電子戦電子対抗手段に使用。

  • Tu-16P「ブケート*7("バジャーJ")」:
    電子戦機型。エスコートジャミングに使用。

  • Tu-16P"バジャーL":
    ELINT機型。

  • Tu-16R "バジャーE":
    長距離偵察機型。

    • Tu-16RM-2:
      海軍航空隊で使用される偵察型。KSR-2ミサイルの誘導が可能。

    • Tu-16KRM:
      Tu-16K-16ベースの無人標的機の空中発射プラットフォーム。

  • Tu-16RM-1"バジャーD":
    ELINT機器を備えた洋上偵察機型。Tu-16K-10ベース。
    機首にレーダーを装備し、他機から発射されたK-10S対艦ミサイルの標的誘導を行うことができた。

  • Tu-16RM-2"バジャーF":
    電子情報偵察型。翼ポッドに受信装置を搭載。

  • Tu-16Ye"バジャーK":
    電子戦/ELINT機型。ELINT機能が強化されている。

  • Tu-16「ツィクローン*8」:
    気象観測機型。

  • Tu-104:
    旅客機型の初期生産型。
    定員50名でミクーリンAM-3ターボジェットエンジンを2基搭載。
    軍用の他民間(アエロフロート・ソビエト航空やチェコスロバキア航空)でも使用された。

    • Tu-104 2NK-8:
      エンジンをクズネツォフNK-8?に変更した型。計画のみ。

    • Tu-104A:
      改良型。
      ミクーリンAM-3Mエンジンを搭載し、定員が70名に増加した。

    • Tu-104AK:
      宇宙飛行士の訓練用に無重力飛行を行えるように改造した型。

    • Tu-104A-TS:
      A型を貨物・医療救護用に改造した型。

    • Tu-104B:
      最も多く生産された改良型。
      胴体を延長して定員を70名とし、エンジンは出力が大幅に増強されたミクーリンAM-3M-500を搭載した。

    • Tu-104B-TS:
      B型を貨物・医療救護用に改造した型。

    • Tu-104D:
      A型の定員を85名にした型。

      • Tu-104D 3NK-8:
        NK-8エンジン3発を搭載する、Tu-154の原型機。計画のみ。

    • Tu-104E:
      RD-16-15エンジンを搭載し、出力向上と燃費の改善を狙った機体。
      B型2機が試験的に改造されたが、Tu-154の登場によって本格採用は見送られた。

    • Tu-104G(機法
      Tu-16をベースにした訓練機型。

    • Tu-104G(供法
      座席数54席のソ連政府専用機型。

    • Tu-104LL:
      ツポレフ設計局が所有していた実験機。空対空ミサイルの実験等に使用された。

    • Tu-104SH:
      航空士訓練機型。

    • Tu-104CSA:
      チェコスロバキア航空で使用する為にカスタマイズされたタイプ。

    • Tu-104V(初代):
      3-3列座席を搭載し、定員を117名にした型。計画中止で生産されず。

    • Tu-104V(2代目):
      A型の定員を100〜105人まで増加させた型。
      後期型はシートピッチの切り詰め等により、更に115人まで定員が増加した。

    • Tu-104V-115:
      B型の定員を115人まで増加させた型。
      アビオニクス機器にも若干の改良がなされている。

    • Tu-107:
      機体強化と貨物扉の設置が行われた軍用貨物機へのコンバート型。1機のみ製造。

    • Tu-110(NATOコード:クッカー):
      エンジンをAL-7Pターボファン4発にした試験機。量産化されず。

    • Tu-118:
      クズネツォフTV-2Fを4基搭載したターボプロップエンジンタイプの機体。
      計画のみ。


*1 ロシア語でアナグマの意。
*2 KS-1「コメット」(AS-1「ケンネル」)?K-10(AS-2「キッパー」)?Kh-20(AS-3「カンガルー」)?Kh-22(AS-4「キッチン」)?KSR-2(AS-5A「ケルト」)?KSR-5(AS-6「キングフィッシュ」)?等。
*3 これより前の1968年5月にもノルウェー海を航行中のアメリカ海軍の空母「エセックス」に対して異常接近を行って墜落し、7人が死亡する事故を起こしている。
*4 投下はTu-95Vを使用した
*5 KSR-11対レーダーミサイルの運用能力なし。
*6 ロシア語で「樅の木」の意。
*7 ロシア語で「花束」の意。
*8 ロシア語でサイクロンの意。

添付ファイル: fileTu-16.jpg 1870件 [詳細]

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