【TCAS】 †
Traffic alert and Collision Avoidance System(空中衝突防止装置).
航空機同士の空中衝突を回避するための警報装置。
無線通信を通じて他の航空機のTCASと連絡し、危険な接近を感知すると操縦士に警告を発する。
登場当時既存の航空事故防止策と比べ、地上の航空管制官との交信を必要としない点で革新的だった。
UHF周波数帯のうち1,030MHzを問い合わせのために、1,090MHzを応答のために使用する。
この周波数帯は軍用の敵味方識別装置と共通で、敵味方識別の質問信号に対する応答にも用いられる。
毎秒数回の頻度で周辺の航空機に問い合わせを行い、その応答とアビオニクスの航法情報から他機との相対位置を推定。
未来位置と衝突の危険性を数学的に推定し、危険があると判定された時に警告メッセージを再生する。
現在のグラスコックピット機では、航法ディスプレイにTCASのディスプレイが統合されている。
TCASを採用する機体同士でしか位置確認ができないため、UFOとの遭遇時など警報が発されない状況もある。
また、判断精度は完全ではなく、まれに誤報が発生する可能性もある。
この点について、現行の運用教則では必ずTCASからの示唆に従うのが原則となっている。
誤報の疑いがあっても、航空管制官からの情報と矛盾があっても、TCASからの示唆に従う事とされる。
TCASに関する判断ミスでもっとも衝突事故に繋がりやすいのは、2機のうち1機だけがTCASに従い、もう1機が従わなかった場合である。
重大事故の要因としては、TCASが誤算を起こす可能性より、パイロットの疑念によるヒューマンエラーの方が蓋然性が高い。
従うか従わないか決断できる事自体が事故要因であるため、確率上最も安全な「TCASに従う」という選択を常に選ぶよう義務づけられている。
ただし、失速や墜落に繋がる危急の事態においては、パイロットが緊急の回復操作に専念してTCASを無視する場合がある。
この場合に限り、TCASを無視するのは安全上やむを得ない行為であったと認められる(なぜ危急の事態を未然に回避できなかったのかを問われるが)。