Last-modified: 2023-07-05 (水) 21:06:28 (152d)
【T-80】 †
ソ連(ロシア)の主力戦車。
T-64の改良・発展型として1960年代末期から開発され、T-72とほぼ同時期の1975年より生産が開始された。
ソ連軍には1976年に採用された。
エンジンにはガスタービンエンジンを採用している*1が、T-80UDではディーゼルエンジンを採用している。
主砲は2A46M-1 125mm滑腔砲を搭載し、主砲はAPFSDSやHE-FRAG(高性能榴弾)のほか、レーザー・ビームライディング誘導対戦車ミサイルを発射できる。
ミサイルは、9M112「コブラ(NATOコード AT-8「ソングスター」)」及び9M119M「レフレークスM(AT-11「スナイパーB」)」対戦車ミサイルを搭載し、どちらも最大4,000mでの交戦が可能。
総生産台数は5,000両程度とされ、ロシア陸軍の他、ウクライナやアラブ首長国連邦、韓国などに輸出されている。
改良型として、「コンタークト5」爆発反応装甲を装備し、ガスタービンエンジンをGTD-1250(1,250hp)に換装したT-80Uなどがある。
スペックデータ †
形式 | T-80B | T-80U |
乗員 | 3名 | |
全長 | 9.9m | 9.654m |
車体長 | 7.4m | 7m |
全高 | 2.202m | |
全幅 | 3.4m | 3.603m |
戦闘重量 | 42.5t | 46t |
懸架方式 | トーションバー | |
燃料容量 | 1,100L(内部) 740L(外部) | |
エンジン | GTD-1100TFガスタービン | GTD-1000TFまたはGTD-1250ガスタービン 6TD水平対向型ディーゼル(T-80UD) |
エンジン出力 | 1,000hp(GTD-1000/1000TF) 1,250hp(GTD-1250) 1,000hp(6TD) | |
パワー/ウェイト | 23.5hp(17.6kW)/t | 27.2hp(20.3kW)/t |
変速機 | マニュアル 前進5段・後進1段 | マニュアル 前進4段・後進1段 |
地上高 | 0.38m | 0.446m |
登坂力 | 60% | |
超堤高 | 0.85m | |
超壕幅 | 2.8m | |
最高速度 | 48km/h(不整地) | 80km/h |
行動距離 | 335km(道路、外部燃料タンク無し) 415km(道路、外部燃料タンク搭載時) | |
装甲 | 車体: 440〜450mm 対APFSDS 500〜575mm 対HEAT 砲塔: 500mm 対APFSDS 650mm 対HEAT | 車体・砲塔(「コンタークト5」ERA装備): 780mm 対APFSDS 1,320mm 対HEAT |
複合装甲 「コンタークト1」ERA その他各種装甲 | ||
主武装 | 2A46-2 125mm滑腔砲×1門 (携行弾数36発) 9M112「コブラ」対戦車ミサイル (ミサイル4発) | 2A46M-1 125mm滑腔砲×1門 (携行弾数45発) 9M119「レフレークス」対戦車ミサイル (ミサイル6発) |
副武装 | PKT? 7.62mm機関銃×1挺(主砲同軸、携行弾数2,000発) PKT 7.62mm機関銃またはNSTV?またはDShK? 12.7mm重機関銃×1挺 (対空用、携行弾数300発) | |
生産台数 | 455輌 |
主なバリエーション(カッコ内は開発名称) †
- SKB-2:
T-80の原型。
T-64の発展型としてレニングラードのキーロフ工場で開発された。
- T-80(オブイェクト219):
T-64にGTD-1000ガスタービン(1,100馬力)を搭載した初期量産型。
- T-80M-1:
「アリーナ」アクティブ防護システムを装備し、砲塔周辺に装甲を追加した型。
- T-80M-1:
- T-80(オブイェクト219):
- T-80B(オブイェクト219R):
9M112「コブラ」対戦車ミサイルの運用能力やAPFSDS対策にセラミック装甲を追加した型。
- T-80B obr.1980g.:
T-80BにGTD-1000TFガスタービン(出力1,100馬力)を搭載した型。
- T-80B obr.1980g.:
- T-80A(オブイェクト219A):
T-80UD仕様への改修型。
- T-80U(オブイェクト219AS):
T-80U 1985年型。
9M114「レフレークス」対戦車ミサイルの運用能力を獲得した。
また、砲塔が新しくなり、新型の「コンタークト5」爆発反応装甲やナビゲーションシステムが装備された。
エンジンはGTD-1000Fガスタービン(出力1,100hp)を搭載している。
- T-80U obr.1992:
T-80UのエンジンをGTD-1250ガスタービン(出力1,250hp)に換装した型。
- T-80UK:
T-80Uの指揮戦車型。
新装備としてTShU-1-7「シュトーラ-1」アクティブ防御システム、TNA-4-3ナビゲーションシステム、R-163-50KおよびR-163-U無線機などを装備した。
- T-80UE:
T-80UKの輸出型。
TShU-1-7「シュトーラ」は装備していない。
- T-80UK:
- T-80UM(オブイェクト219AS-M):
T-80Uの発展型。
火器管制装置が刷新され、9M119M「レフレークスM(AT-11「スナイパーB」)」対戦車ミサイルが発射可能となった。
また、画像サイトを従来の「ルナー」赤外線画像サイトから"Agava-M1"温度画像サイトに換装している(オプションで"Agava-2"または"「ブラン-R」"に換装可能)。
- T-80UM1「バールス*2」:
T-80Uの発展型で「アリーナ」アクティブ防御システムを装備する。
オムスクでの兵器ショーでは常連だが、まだ販売には至っていない模様である。
- チョールヌイ・オリョール:
T-80UM-2と呼ばれるT-80UMの発展型。詳しくは項を参照。
- T-80UM1「バールス*2」:
- T-80UD「ベリョーザ*3」(オブイェクト478B):
もともとは旧ソ連向けに1985年に開発したT-80Uの派生型で、整備維持コストと調達コストの低減を図るユーザー向けのモデル。
エンジンはT-64用の6TD水平対向型ディーゼル(1,000馬力)を搭載する。
パキスタンにも輸出された。
- T-80UDK:
T-80UDの指揮戦車型。試作のみ。
- オブイェクト478BK:
溶接砲塔を装備したT-80UD。
- オブイェクト478BEh:
パキスタンに売却されたT-80UD。
- T-84:
ウクライナが開発したT-80UDの発展型。詳しくは項を参照。
- T-80UDK:
- T-80BVM:
2017年に発表された改修試作型。
「レリークト」爆発反応装甲や「ソスナーU」ガンナーサイトを装備し、T-14?やT-90MSで導入された技術をキックバックしている。
- T-80U obr.1992:
派生型 †
- BREM-80U:
T-80Uの車体を流用して開発された装甲回収車型。
18tクレーンと35tウィンチを搭載。
- BTU-80:
T-80Uの車体をベースにしたブルドーザー型。
- MTU-80:
T-80のシャーシをベースにした架橋戦車型。
- PTS-4:
T-80をベースにした水陸両用車型。
- BREM-84:
BMP-1ベースのBREM-2やT-64ベースのBREM-64の後継車輌として、オプロートの車体をベースに開発された装甲回収車型。
実質的には、T-80UDのプラットフォームが使用された。
BREMとは、「Броньована ремонтна евакуаційна машина」(装甲を施された修理・回収用車輌という意味)の略語である。
- 2S19「ムスタ-S」?:
T-80の走行システムにT-72のV-84Aディーゼルエンジンを組み合わせた自走榴弾砲。
詳しくは項を参照。
- T-90:
T-72の車体設計を元にT-80の技術を組み合わせた車両。
詳しくは項を参照。
*1 他にガスタービンエンジンを採用した戦車としては、アメリカのM1「エイブラムス」やスウェーデンのStrv.103などがある。
*2 «Барс»:ロシア語で「雪豹」のこと。
*3 «Берёза» :ロシア語で「白樺」を意味する。