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【T-80】 †
- 第二次世界大戦中にソ連で開発された軽戦車。
T-70?軽戦車の後継として開発された。
T-70Mの改良型で、砲塔を一人用の物から二人用の大型砲塔に換装し、履帯幅を拡大、増加装甲を装備している。
武装はT-70と同じだが、20度しか取れなかった主砲仰角が65度へと大きくなっている。
しかし、砲塔を取り外さなければエンジン上面のハッチを開くことができなくなり、整備性が低下している。
主砲は後により強力なVT-42/43 68口径45mm砲への換装計画もあったが実現しなかった。
1943年から配備が開始されたが、従来の車両(BA-64?など)やレンドリース法で送られてくる英米の軽戦車(テトラーク?やスチュアート?)で既に需要は満たされており、81両が生産されたにとどまった。
生産された車両は主に訓練部隊に配備されたほか、少数がT-70の補充用として実戦配備された。
スペックデータ 乗員 3名 全長 4.285m 全高 2.175m 全幅 2.5m 重量 11.6t 懸架方式 トーションバー、前輪駆動 エンジン GAZ-203F(M-80)直列6気筒水冷ガソリンエンジン×2基
(出力85hp×2)速度 45km/h 行動距離 350km 武装 ZIS-19BM 45口径45mm戦車砲×1基(装弾数94発)
DT 76.2mm機関銃×1挺(装弾数1,008発)装甲 砲塔前面:35mm
砲防盾:60mm
車体前部上部:45mm - ソ連(ロシア)の主力戦車。
T-64の改良・発展型として1960年代末期から開発され、ソ連軍には1976年に採用された。
エンジンにはガスタービンエンジンを採用している*1が、T-80UDではディーゼルエンジンを採用している。
主砲は2A46M-1 125mm滑腔砲を搭載し、主砲はAPFSDSやHE-FRAG(高性能榴弾)のほか、レーザー・ビームライディング誘導対戦車ミサイルを発射できる。
ミサイルは、9M112「コブラ(NATOコード AT-8「ソングスター」)」及び9M119M「レフレークスM(AT-11「スナイパーB」)」対戦車ミサイルを搭載し、どちらも最大4,000mでの交戦が可能。
ロシア陸軍の他、ウクライナやアラブ首長国連邦、韓国などに輸出されている。
改良型として、「コンタークト5」爆発反応装甲を装備し、ガスタービンエンジンをGTD-1250(1,250hp)に換装したT-80Uなどがある。
スペックデータ 乗員 3名 全長 9.53m
9.651m(T-80U)車体長 7m 全高 2.22m
2.202m(T-80U)全幅 3.78m
3.582m(T-80U)戦闘重量 46.5t
46t(T-80U)懸架方式 トーションバー エンジン T-80A:GTD-1000ガスタービン
T-80U:GTD-1000TFまたはGTD-1250ガスタービン
T-80UD:6TD水平対向型ディーゼルエンジン出力 1,000hp(GTD-1000/1000TF)
1,250hp(GTD-1250)
1,000hp(6TD)登坂力 60% 超堤高 0.85m 超壕幅 2.8m 最大速度
(路上/不整地)65km/h / 45km/h
70km/h / 50km/h(T-80U)行動距離 335km/600km(外部燃料タンク搭載時)
400km(T-80U)装甲 複合装甲
「コンタークト1」ERA
その他各種装甲兵装 2A46M-1 125mm滑腔砲×1門(携行弾数43発)
NSTV 12.7mm重機関銃×1挺(携行弾数300発)
PKT 7.62mm機関銃1挺(携行弾数2,000発)生産台数 455輌
【主なバリエーション(カッコ内は開発名称)】
- SKB-2:
T-80の原型。
T-64の発展型としてレニングラードのキーロフ工場で開発された。
- T-80(オブイェクト219):
T-64にGTD-1000ガスタービン(1,100馬力)を搭載した初期量産型。
- T-80M-1:
「アリーナ」アクティブ防護システムを装備し、砲塔周辺に装甲を追加した型。
- T-80M-1:
- T-80B(オブイェクト219R):
9M112「コブラ」対戦車ミサイルの運用能力やAPFSDS対策にセラミック装甲を追加した型。
- T-80B obr.1980g.:
T-80BにGTD-1000TFガスタービン(出力1,100馬力)を搭載した型。
- T-80B obr.1980g.:
- T-80BK(オブイェクト660):
T-80Bの指揮戦車型。
アンテナ1本と伸縮マストが追加され、TNAナビゲーションシステムとR-130無線装置を装備する。
- T-80BV(オブイェクト219RV):
T-80Bの派生型。
「コンタークト1」爆発反応装甲を装備する。
- T-80BVK:
T-80BKに「コンタークト1」爆発反応装甲を装備した型。
- T-80BVK:
- T-80A(オブイェクト219A):
T-80UD仕様への改修型。
- SKB-2:
- T-80AK:
T-80Aの指揮戦車型。
- T-80AK obr.1984(T-80AKVとも):
T-80AKに「コンタークト1」爆発反応装甲を装備した型。
- T-80AK obr.1984(T-80AKVとも):
- T-80U(オブイェクト219AS):
T-80U 1985年型。
9M114「レフレークス」対戦車ミサイルの運用能力を獲得した。
また、砲塔が新しくなり、新型の「コンタークト5」爆発反応装甲やナビゲーションシステムが装備された。
エンジンはGTD-1000Fガスタービン(出力1,100hp)を搭載している。
- T-80U obr.1992:
T-80UのエンジンをGTD-1250ガスタービン(出力1,250hp)に換装した型。
- T-80UK:
T-80Uの指揮戦車型。
新装備としてTShU-1-7「シュトーラ-1」アクティブ防御システム、TNA-4-3ナビゲーションシステム、R-163-50KおよびR-163-U無線機などを装備した。
- T-80UE:
T-80UKの輸出型。
TShU-1-7「シュトーラ」は装備していない。
- T-80UM(オブイェクト219AS-M):
T-80Uの発展型。
火器管制装置が刷新され、9M119M「レフレークスM(AT-11「スナイパーB」)」対戦車ミサイルが発射可能となった。
また、画像サイトを従来の「ルナー」赤外線画像サイトから"Agava-M1"温度画像サイトに換装している(オプションで"Agava-2"または"「ブラン-R」"に換装可能)。
- T-80UM1「バールス*2」:
T-80Uの発展型で「アリーナ」アクティブ防御システムを装備する。
オムスクでの兵器ショーでは常連だが、まだ販売には至っていない模様である。
- チョールヌイ・オリョール:
T-80UM-2と呼ばれるT-80UMの発展型。詳しくは項を参照。
- T-80UD「ベリョーザ*3」(オブイェクト478B):
もともとは旧ソ連向けに1985年に開発したT-80Uの派生型で、整備維持コストと調達コストの低減を図るユーザー向けのモデル。
エンジンはT-64用の6TD水平対向型ディーゼル(1,000馬力)を搭載する。
パキスタンにも輸出された。
- T-80UDK:
T-80UDの指揮戦車型。試作のみ。
- オブイェクト478BK:
溶接砲塔を装備したT-80UD。
- オブイェクト478BEh:
パキスタンに売却されたT-80UD。
- T-84:
ウクライナが開発したT-80UDの発展型。詳しくは項を参照。
- T-80UK:
- T-80BVM:
2017年に発表された改修試作型。
「レリークト」爆発反応装甲や「ソスナーU」ガンナーサイトを装備し、T-14?やT-90MSで導入された技術をキックバックしている。
【派生型】 - BREM-80U:
T-80Uの車体を流用して開発された装甲回収車型。
18tクレーンと35tウィンチを搭載。
- BTU-80:
T-80Uの車体をベースにしたブルドーザー型。
- MTU-80:
T-80のシャーシをベースにした架橋戦車型。
- PTS-4:
T-80をベースにした水陸両用車型。
- BREM-84:
BMP-1ベースのBREM-2やT-64ベースのBREM-64の後継車輌として、オプロートの車体をベースに開発された装甲回収車型。
実質的には、T-80UDのプラットフォームが使用された。
BREMとは、「Броньована ремонтна евакуаційна машина」(装甲を施された修理・回収用車輌という意味)の略語である。
- 2S19「ムスタ-S」?:
T-80の走行システムにT-72のV-84Aディーゼルエンジンを組み合わせた自走榴弾砲。
詳しくは項を参照。
- T-90:
T-72の車体設計を元にT-80の技術を組み合わせた車両。
詳しくは項を参照。
*1 他にガスタービンエンジンを採用した戦車としては、アメリカのM1「エイブラムス」やスウェーデンのStrv.103などがある。
*2 «Барс»:ロシア語で「雪豹」のこと。
*3 «Берёза» :ロシア語で「白樺」を意味する。