Last-modified: 2021-07-27 (火) 13:02:44 (59d)

【T-62】(てぃーろくじゅうに)

ソ連がT-55の発展型として開発した、ソ連初の滑腔砲搭載主力戦車

主砲である2A20 115mm滑腔砲はAPFSDS弾使用での砲口初速は1,680m/s、射程2,000mで350mmの装甲貫徹力を誇るが、旧型の照準機を使用しているため、1,500mを超えると命中率が低下する事が弱点であった*1

砲弾の装填は装填手が手動で行い、射撃後の空薬莢は砲塔後部の小ハッチから自動的に排出されるが、排莢時は砲身の仰角を最大にしなければ機構が作動しない上、自動的に元の位置に素早く復旧する機能を持たないため、砲身の仰角をいちいち水平に戻さなければならなかった。
また、敵による発見を防ぎ、被弾率を低くするために全高を低く抑えた設計だが、乗員の居住性が犠牲となり、砲身の俯角がほとんど取れないという欠点を持つこととなった。

中ソ国境紛争・珍宝島事件が初の実戦参加で、第四次中東戦争にも参加したが、中東の複雑な地形に加え、前述の遠距離射撃性能の悪さや俯角の取れない点などが仇となり戦果は芳しくなかった。
また、南オセチア紛争では故障に悩まされ、敵に撃破されるものより損失が多かったという。

派生型にはIT-1駆逐戦車(密閉式の旋回砲塔にミサイルランチャーを搭載)や天馬虎(北朝鮮改造型)、チラン(Tiran:イスラエルが改造したもの。砲身基部にM2 12.7mm重機関銃を装備する改修が行われている。)がある。

ロシア陸軍では2013年に本車を退役させる方針で、戦車は分解された後、部品は保管され、その後は輸出に回されるという。

スペックデータ

乗員4名
全長9.3m
車体長6.63m
全高2.4m
全幅3.52m
戦闘重量41.5t
懸架方式トーションバー方式
エンジンV-55-5 4ストローク12気筒液冷ディーゼル(出力580hp(463kW))
超堤高0.8m
超壕幅2.85m
最大速度50km/h(路上)
航続距離450km
650km(外部タンク搭載時)
装甲砲塔
242mm(前面)/152mm(側面)/97mm(後面)/40mm(上面)
車体:
102mm(前面上下)
79mm(側面上部)/15mm(側面下部)
20mm(上面)
31mm(底面)
兵装2A20(U-5TS)55口径115mm滑腔砲×1門(弾数40発)
NSVT 12.7mm重機関銃×1挺(対空、弾数300発)
DshkM 12.7mm機関銃×1挺(対空、後期型以降)
PKMT 7.62mm機関銃×1挺(同軸、弾数2,500発)


バリエーション

  • オブイェークト165:
    最初の試作型。
    T-55の流れを汲むが、より真円に近く平たい形態の全周旋回式砲塔にD-54TS 100mmライフル砲を搭載していた。

  • オブイェークト166:
    U-5TS(2A20)115mm滑腔砲を搭載した試作車。

  • オブイェークト167:
    エンジンをV-26(出力700hp(512kW))に換装した型。試作のみ。
    砲塔後部には9M14「マリュートカ(AT-3「サガー」)」ATGM発射機が装備されていた。

    • オブイェークト167T:
      エンジンをGTD-3Tガスタービンに換装した型。

  • T-62A:
    オブイェークト165の量産型。少数が生産され配備された。

  • T-62 1960年型(T-62 Obr.1960):
    オブイェークト166の量産型で初期生産型のうち初期の生産型。
    U-5TS(2A20)"Molot" 115mm滑腔砲を搭載。
    照準器はTKS-3司令官用昼/夜照準器、TSh-2B-41砲手照準器、TPN1-41-11夜間照準器を装備する。

    • T-62K(オブイェークト166K):
      指揮戦車型。
      R-112またはR-130無線機を追加搭載し、増設した無線装置用のAB-1 APUと大型アンテナを装備している。

      • T-62KN(オブイェークト166KN):
        K型にTNA-2広域ナビゲーションシステムを追加搭載した型。

  • T-62 1967年型(T-62 Obr.1962):
    初期生産型のうち後期の生産型。
    1960年型とはエンジンデッキの形状が一部異なるほか、"OPVT"深渡河システムを装備可能。
    後に、装填手用ハッチをDshkM 12.7mm機関銃を装備するものに交換している。
    NATOコードではT-62Aと呼ばれた。

    • T-62 1972年型(T-62 Obr.1972):
      後期生産型。
      装填手用ハッチがDShK1938/46 12.7mm重機関銃を装備するものに変更されている。
      1967年型と同じくNATOコードはT-62A。

      • T-62 1975年型(T-62 Obr.1975):
        後期生産型の改修型。
        主砲の装甲ボックスにKTD-1またはKTD-2レーザー測距装置を装備した。

  • T-62D(オブイェークト166D):
    1975年型の近代化改修型。
    車体前面にウレタン入り増加装甲(斜堤プレートのみ)を装着し、レーザー測距装置やKAZ 1030M「ドロースト」アクティブ防護装置(APS)を追加し、エンジンをV-55Uディーゼル(出力620hp)に換装した。

    • T-62D-1(オブイェークト166D-1):
      エンジンをT-72と同じV-46-5Mディーゼル(出力690hp)に換装した型。

  • T-62M(オブイェークト166M):
    T-62の近代改修型。
    操行装置はT-72式のものに換装され、"Volna"デジタル式射撃管制装置を追加したほか、砲塔と車体にウレタン入り増加装甲(斜堤プレートと馬蹄形装甲ブロック)や強化ゴム製サイドスカートを装着した。
    また、9K116-2"Sheksna"誘導ミサイルユニットの搭載により、主砲から9M117「バスチオン」(NATOコード:AT-10「スタッバー」)対戦車ミサイルが発射可能になった。

    • T-62M-1(オブイェークト166M-1):
      M型のエンジンをV-46-5Mディーゼルに換装した型。

      • T-62M1(オブイェークト166M1):
        正面装甲のレイアウトを改良し、9M117対戦車ミサイルの運用能力を持たない型。

      • T-62M1-1(オブイェークト166M1-1):
        M1型のエンジンをV-46-5Mディーゼルに換装した型。

      • T-62M1-2(オブイェークト166M1-2):
        車体前面の増加装甲を装着していない型。

      • T-62M1-2-1(オブイェークト166M1-2-1):
        M1-2型のエンジンをV-46-5Mディーゼルに換装した型。

    • T-62MD(オブイェークト166MD):
      M型に「ドロースト」アクティブ防護装置を装備した型。

      • T-62MD-1(オブイェークト166MD-1):
        MD型のエンジンをV-46-5Mディーゼルに換装した型。

    • T-62MK(オブイェークト166MK):
      M型の指揮戦車型。
      TNA-2ナビゲーションシステム、R-112またはR-113無線機を追加搭載し、増設した無線装置用のAB-1 APUを装備している。
      • T-62MK-1(オブイェークト166MK-1):
        MK型のエンジンをV-46-5Mディーゼルに換装した型。

    • T-62MV(オブイェークト166MV):
      砲塔前面および車体側面に「コンタークト1」爆発反応装甲を装着した型。

      • T-62MV-1(オブイェークト166MV-1):
        MV型のエンジンをV-46-5Mディーゼルに換装した型。

      • T-62M1V(オブイェークト166MV1):
        9M117対戦車ミサイルの運用能力を持たない型。

      • T-62M1V-1(オブイェークト166MV1-1):
        M1V型のエンジンをV-46-5Mディーゼルに換装した型。

派生型

  • T-62/122:
    戦闘工兵車型。主砲は122mm榴弾砲に換装されている。

  • T-62/160:
    戦闘工兵車型。BTUと短縮された160mm迫撃砲を装備する。

  • T-67:
    駆逐戦車型。
    125mm戦車砲とT-72のドライブトレインを装備する。

  • TO-62:
    火炎放射戦車型。
    主砲同軸機銃に替えて火炎放射装置を搭載し、車内に燃料タンクを装備した。

  • IT-1駆逐戦車(オブイェークト150):
    T-62の車体を使った対戦車ミサイル駆逐戦車。
    砲塔から主砲を撤去し、その上にミサイルランチャーを搭載している。
    対戦車ミサイル発射時には、砲塔上のハッチから発射アームがせり出して跳ね上がるように展開する。
    主武装は本車専用に開発された3M7「ドラコーン」対戦車ミサイルを搭載し、副武装にはPKT 7.62mm機関銃を装備する。
    ミサイルが大きく重すぎる点で不評であった他、小型、軽量で手軽な9M14「マリュートカ(AT-3『サガー』)」?が大量配備されたため、60両の生産に留まった。
    後に、IT-1から武装を撤去した装甲回収車型のIT-1Tへと改修され、さらに砲塔を完全に撤去した仕様のBTS-4Vに再改修された。

    • IT-1T:
      エンジンをGTD-1000ガスタービン(出力1,100馬力)に換装した型。試作のみ。

    • IT-1-T:
      武装を撤去した装甲回収車型。
      能力不足のため、BTS-4Vに再改修された。

  • BTS-4V:
    装甲回収車型。
    砲塔を撤去したT-62の車体にウインチ、小型クレーン他の回収機材と折り畳み式の塔状シュノーケル(カニングタワー)を搭載した。

    • BTS-4V1:
      既存のT-62よりBTS-4Vに準じた仕様に改修された型。

  • BTS-4VZ:
    T-62の損傷車両を改修した回収戦車型。
    砲塔の替わりにドーム状の上部構造物を搭載し、ドーム天頂部のハッチには12.7mm重機関銃が備えられている。
    ウインチその他の回収機材は搭載せず、可能なのは単純な牽引回収作業のみである。

  • Impuls-2M:
    退役したT-62をベースにした消防戦車型。
    砲塔を50連装の消火弾発射機に換装し、車体前面にドーザーブレードを装備。

各国での派生型

  • イスラエル
    • チラン6(Tiran-6):
      第四次中東戦争鹵獲した車両をイスラエルが改造したもの。
      主砲の換装など大がかりな改造は施されず、砲塔の側面と後部に大型の雑具箱が取り付けられたほか、砲身基部にM2 12.7mm重機関銃を装備するなどの手が加えられた。
      後に南米などに転売され、レーザー測距儀や砲手用の赤外線式暗視装置、車体前面と砲塔の前面と側面に爆発反応装甲が取り付けられたほか、エンジンをゼネラルモーターズ社製のディーゼルエンジンに換装している。

  • 北朝鮮
    • 天馬号(チョンマホ)/天馬虎(천마호):
      北朝鮮でのT-62およびT-62Mのライセンス生産型。
      1号から4号までのバリエーションがあり、 オリジナルのT-62と同型の1号、滑腔砲基部にレーザー測距機を装備した2号、砲塔に追加装甲を装備した3号、砲塔を換装し、サイドスカートや爆発反応装甲発煙弾発射機を装備した4号がある。

      • 天馬虎1号:
        ソ連から輸入されたT-62のライセンス生産型。
        北朝鮮独自の仕様として、対空機関銃はKPVT 14.5mm機関銃に強化されている。

      • 天馬虎1号M:
        ソ連から輸入されたT-62Mのライセンス生産型。

      • 天馬虎2号:
        命中率と機動力の向上型。
        滑腔砲基部にレーザー測遠器を装備し、射撃統制装置と弾道計算機を導入、エンジンを750馬力に強化した。

      • 天馬虎3号:
        防御力向上型。
        砲塔側面に爆発反応装甲、車体側面にサイドスカート、砲塔に4連装発煙弾発射機4基を装備している。

      • 天馬虎4号:
        天馬虎3号の防御力向上改良型。
        砲塔前面に付加装甲を装備し、砲塔を北朝鮮で新たに設計した前後に長く、やや低い物に換装している。

      • 天馬虎5号:
        天馬虎3号の防御力向上改良型。
        サイドスカートの前半分に爆発反応装甲を装備している。
        砲塔は天馬虎4号とは異なり椀型の鋳造砲塔だが、前面に暴風号/暴風虎に似た楔形の付加装甲を装備し、5連装発煙弾発射機2基を装備している。
        車体前面にも付加装甲を装着し、砲塔前面下部と車体前面下部にはゴムスカートが装備されているほか、履帯にはゴムパッドを装備している。

    • 暴風号(ポップンホ)/暴風虎(폭풍호):
      天馬虎をベースに大幅に改良した型。
      ロシアのT-90と同程度の能力があるとされるが詳細不明。
      M-2002のコードネームがつけられている。

      • 先軍号/先軍虎(ソングンホ):
        暴風号/暴風虎の改良型とされる新型戦車。

  • ブルガリア
    • TV-62:
      ブルガリアがT-62をベースに独自開発した回収戦車型。
      砲塔は撤去され車体のみとなっている。

      • TV-62M:
        ブルガリアがT-62Mの回収戦車型として独自に開発した車両。
        BTS-4V2に類似したドーム型の上部構造物を備えているが、BTS-4V2と異なり2組のキューポラを備えている。

    • TP-62:
      ブルガリアがT-62をベースに開発した消防車両型。

  • エジプト
    • RO-115 Mark.1:
      1980年代初頭に開発されたアップグレード型。
      英国製ディーゼルエンジン(出力750hp(559kW))への換装や爆発反応装甲を含む装甲の追加、BMP-3火器管制装置の搭載などが行われている。
      一部の主砲はロイヤル・オードナンスL7 105mm砲*2に換装されている。

    • T-62E Mark.2:
      1990年代半ばに発表された近代化改修プログラム。
      主砲はM68 105mm砲を搭載し、イタリア製の火器管制装置赤外線ビジョンデバイス、レーザー距離計の搭載などの改修が行われている。
      エンジンは独MTU社製エンジン(880hp(656kW)、ライセンス生産)を搭載している。

    • RO-120 Mark.3:
      2004年に発表されたアップグレード型。
      主砲をM-393 120mm戦車砲に換装し、爆発反応装甲装甲サイドスカートなどの装甲が追加されている。
      エンジンは独MTU社製エンジン(890hp(664kW)、ライセンス生産)を搭載している。

  • ウクライナ
    • T-62AG:
      ウクライナのKharkivMorozov?機械製造設計局で開発された輸出向けアップグレードパッケージ。
      装甲エンジンが強化され、新型の火器管制装置を搭載する。
      エンジンは57TDFディーゼル(出力700hp)を搭載し、主砲はKBA-101 125mm戦車砲を装備する。


*1 後にレーザー測遠機を搭載する事でこれを解決している。
*2 オーストリアのNORICUM社でライセンス生産されたもの。

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