Last-modified: 2019-03-31 (日) 06:14:14 (145d)

【T-6】(てぃーろく)

North American T-6(AT-6)/SNJ "Texan(テキサン)*1/Harvard(ハーバード)".

アメリカのノースアメリカン社が1930年代〜1940年代に開発・生産した単発レシプロ高等練習機
当初の運用者であったアメリカ陸軍海軍はもとより、英国や英連邦諸国でも使用され、第二次世界大戦後は日本を含めさらに多くの国で使用され、15,495機が生産された。

本機の元祖となったのは、1935年に初飛行した「NA-16」である。
同機は低翼単葉タンデム複座のコックピットという、その後の本機につながるレイアウトを備えていたが、主脚は固定式であり、機体も主翼以外は羽布張りであった。

同機は「BT-9/NJ-1」の名前で量産が行われ、フランスや中華民国にも輸出された他、オーストラリアでは「CA-1『ワイラウェイ』」としてライセンス生産も行われた。
また、日本にも2機が見本として供与され「二式陸上中間練習機(K10W)」開発の参考とされた。

このNA-16を基に、アメリカ陸軍航空隊の要求で兵装訓練用の武装を搭載可能とし、主脚を引き込み式にしたのが本機である。
当初は「基本戦闘練習機(Basic Combat)」として「BC-1」の型式をつけていたが、まもなく「高等練習機(Advanced Trainer)」に統合され、型式も「AT-6」となった。

本機は海軍にも「SNJ」の型式名称で採用され、航空母艦への着艦訓練用にアレスティングフックをつけたモデルも作られた。
また、大量のパイロット育成を求めていた英連邦諸国*2からも大量の発注を受け、大量生産が行われた。

本機は本来の目的であった操縦訓練に加え、対地攻撃、連絡、偵察救難などに幅広く用いられ、1942年にはメキシコ沿岸で、通商破壊戦に従事中のドイツ潜水艦の撃沈も記録している。

第二次世界大戦の終結後は、多くの機体が「T-6G」として再生され、また、旧敵国であった日本や(西)ドイツにも供与されるなど幅広く活躍した*3
朝鮮戦争では、T-6FやLT-6Gが「モスキートミッション*4」に使用されたほか、フランスに供与されたT-6Gは、アルジェリア戦争で翼下にガンポッドロケット弾を搭載し、対地攻撃に用いられた。
他にもポルトガルでの植民地戦争や印パ戦争?にも投入されている。

保存されている機体や民間に払い下げられている機体にはまだ飛行可能なものも多く、海外のエアショーではしばしば飛行する姿を目にすることがある。
また、リノ・エアレース?では本機のみが参加できる部門がある。

日本でのT-6

日本では1955年から自衛隊への供与が開始され、陸軍航空隊→空軍型の「T-6D/F/G」が167機(航空自衛隊に供与)、海軍型のSNJ-5/6が48機(海上自衛隊に供与)引き渡された。
自衛隊では「まつかぜ」という愛称を与えて「中間練習機」として用いていたが、ジェット推進の高等練習機T-33や実用作戦機と、それに合わせて前輪式になっている初等練習機T-34の間に尾輪式の本機が挟まるのは非合理的で、基本設計も1930年代のものとすでに時代遅れとなっていることから、1960年代にはジェット推進のT-1と交代した。
一部は航空救難群*5に移管されて救難機として用いられていたが、それも1970年に退役して姿を消した。
現在は埼玉県・所沢の「所沢航空発祥記念館」に099号機、浜松広報館で010号機が展示保存されている他、静岡県・静浜基地で011号機が動態保存されている*6

海上自衛隊では、1960年代にKM-2との交代を終えたのちも数機がしばらくの間、連絡機として使用されていた。

スペックデータ

乗員2名
全長8.84m
全高3.57m
翼幅12.81m
主翼面積23.6
空虚重量1,886kg
運用時重量2,548kg
発動機P&W R-1340-AN-1「ワスプ」空冷星型9気筒×1基
(出力600hp)
最大速度335km/h(高度1,500m)
巡航速度233km/h
航続距離1,175km
実用上昇限度7,400m
上昇率6.1m/s
翼面荷重108kg/
パワー/マス0.11hp/lb
武装7.62mm機関銃×3挺


バリエーション

  • BC-1:
    最初の量産型。
    エンジンはR-1340-47(出力600hp)を搭載。

    • ハーバードMk.1:
      イギリス空軍での呼称。

  • AT-6(BC-1A):
    機体フレームを変更した型。エンジンはR-1340-47を搭載。

    • SNJ-1:
      アメリカ海軍での呼称。

    • ハーバードMk.2:
      イギリス空軍での呼称。

  • SNJ-2:
    SNJ-1のエンジンをR-1340-56に変更した型。

  • AT-6A:
    エンジンをR-1340-49に換装し、翼内タンクを非インテグラル化した型。

    • SNJ-3:
      アメリカ海軍での呼称。

      • SNJ-3C:
        SNJ-3に着艦フックを装備した型。

    • AT-16:
      ノールデュイン社(カナダ)製のAT-6A。

    • ハーバードMk.2B:
      イギリス空軍での呼称。

  • AT-6B:
    背面に旋回機関銃を装備した射撃練習機型。
    エンジンはR-1340-AN-1を搭載。

  • AT-6C:
    軽合金の節約のため胴体後部を合板製に変更した戦時省資源型。

    • SNJ-4:
      アメリカ海軍での呼称。

      • SNJ-4C:
        SNJ-4に着艦フックを装備した型。

    • ハーバードMk.2A:
      イギリス空軍での呼称。

  • AT-6D:
    電気系統を改善し、軽合金製に戻した型。

    • SNJ-5:
      アメリカ海軍での呼称。

      • SNJ-5C:
        SNJ-5に着艦フックを装備した型。

    • ハーバードMk.3:
      イギリス空軍での呼称。

  • XAT-6E:
    エンジンをレンジャーV-770空冷V型12気筒に換装した型。試作のみ。

  • AT-6F:
    機体構造を強化し、キャノピーを改良した型。

    • SNJ-6:
      アメリカ海軍での呼称。

  • T-6G:
    R-1340-AN-1エンジンの搭載、後席の上昇、燃料搭載量増加、尾輪やプロペラの改善等を施した型。

    • SNJ-7:
      アメリカ海軍での呼称。

    • SNJ-7B:
      SNJ-7の射撃練習機型。

    • ハーバードMk.4:
      カナダ向けの呼称。

    • LT-6G:
      G型をモスキート・ミッション用に改装した型。

  • T-6H:
    F型をT-6G仕様に改修した型。

  • T-6J:
    ヨーロッパ諸国に供給されたカナダ製のハーバードMk.4。

  • A-27:
    BC-1の軽攻撃機型。


*1 この愛称の由来は、大量生産にこたえるためにテキサス州ダラスに工場が作られたことにちなんでいるという。
*2 当時、英本国はドイツ空軍とのバトル・オブ・ブリテンの最中にあり、一人でも多くのパイロットを養成する必要があった。
*3 一部の国では1990年代でもまだ現役であった。
*4 後席に陸軍の偵察員を乗せて前線の敵後方に回り込み、低空から戦闘爆撃の誘導を行う任務。
*5 現在の「航空救難団」の前身。
*6 エンジンには常にオイルを入れてあり、年に数回エンジンの起動を行っている。
  しかし、自衛隊でレシプロ機の操縦資格を取得できたのはKM-2が退役する1989年までのことであり、合法的に操縦できる隊員は年々少なくなっているという。


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