Last-modified: 2022-09-04 (日) 11:12:24 (96d)

【T-55】(てぃーごじゅうご)

ソ連が1958年に開発し1970年代後半まで生産された、冷戦時代を代表する主力戦車
T-54と一纏めにしてT-54/55とも呼ばれる事もある。

T-54の改良・発展型でNBC防御システムを標準装備し、エンジンを580馬力の物に換装、空気圧でクラッチ操作を助ける動力サポート機構が追加されている。
工作精度が悪く、歯車の噛み合わせがきちんとしていない関係でギアチェンジが非常に固いため、車内にはレバーを叩くためのハンマーが装備されている*1

本車は多数の紛争で使用され、低いシルエットと避弾経始の良さ・強力な武装・良好な機動性により、ソ連軍の最強・最優秀戦車と呼ばれて西側から極めて恐れられた。
本車の実際の性能が西側に明らかになるのは、中東戦争イスラエル国防軍の戦車に苦戦し、イスラエル軍が鹵獲した実車がアメリカなどに引き渡され、性能テストが行われてからであった。

輸出は主に中東諸国や中国・インドなどのアジア・アフリカなどに対して行われた。
ポーランドやチェコスロバキアなどではライセンス生産も行われている。
ライセンス生産品は工作精度が比較的良好で、ソ連製のものよりギアは固くない。

開発から半世紀以上経った現在でも、電子化されておらずブラックボックスもない純粋な機械部品で構成されるこの戦車は扱い・整備が簡便であることから、多くの途上国や武装勢力で現役である。

スペックデータ

乗員4名
全長9.2m
車体長6.45m
全高2.35m
全幅3.27m
重量36t
懸架方式トーションバー方式
エンジンV2-55 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル(580馬力)
最高速度50km/h(整地)
35km/h(不整地)
行動距離約460km
装甲防盾:210mm
砲塔側面:110mm
砲塔後面:60mm
砲塔上面:30mm
車体前面上・下部:100mm
車体側面上部:80mm
車体側面下部:20mm
車体上面:33mm
車体底面:20mm
兵装D-10T2S 56口径100mmライフル砲×1門
DshkM 12.7mm機関銃×2挺
SGMT 7.62mm機関銃×2挺


バリエーション

  • T-55(Ob'yekt 155):
    初期生産型。
    PAZ NBC防護システムやガンマ線検出装置などを装備した。

  • T-55A(Ob'yekt 155A):
    放射線対策で車体内部に鉛シートを施し、PAZ/FVU化学濾過システムを装備した型。
    同軸機銃はSGMTからPKTに変更されている。
    前期型とDShk1938/46 12.7mm重機関銃の銃座を装備した後期型がある。

  • T-55K1/K2/K3(Ob'yekt 155K1/K2/K3):
    指揮戦車型。
    主砲の装弾数は標準型より5発(K3では12発)減少している。
    K1は中隊向け、K2は大隊向けでどちらもR-123(またはR-123M)無線機2基を装備、K3は連隊長向けでR-130M無線機、R-123M無線機、10mアンテナマスト、AB-1-P/30発電機を装備。

    • T-55AK1/AK2/AK3(Ob'yekt 155AK1/AK2/AK3):
      T-55Aの指揮戦車型。

    • T-55MK1/MK2/MK3(Ob'yekt 155MK1/MK2/MK3):
      指揮戦車型。無線機をR-173とR-143T2に変更している。

  • T-55M/AM(Ob'yekt 155M/AM):
    近代化改修型。
    「ヴォルナ」FCSや新しい1K13 BOM誘導装置/照準器を備えた9K116-1「バスチオン」対戦車ミサイルシステム、「ツィクロン-1」砲安定装置の搭載、装甲や足回りの強化などの改良が施された。

    • T-55M-1/AM-1(Ob'yekt 155M-1/AM-1):
      T-55M/AMにV-46-5Mディーゼル(出力690hp)を搭載した型。

  • T-55AD(Ob'yekt 155AD):
    A型をT-55AMに準じてアップグレードし、砲塔両側面に「ドロースト(Дрозд:つぐみ)」アクティブ防護システムを搭載した型。
    追加複合装甲を砲塔の外側に取り付けず、内側に取り付けてある。

    • T-55AD-1(Ob'yekt 155AD-1):
      T-55ADにV-46-5Mディーゼル(出力690hp)を搭載した型。

  • T-55MV/AMV(Ob'yekt 155MV/AMV):
    M型/AM型に「コンタークト-1」爆発反応装甲を装備した型。
    車体前面、サイドスカート、砲塔前半部にERAブロックをびっしり取り付けている。

    • T-55MV-1/AMV-1(Ob'yekt 155MV-1/AMV-1):
      T-55MV/AMVにV-46-5Mディーゼル(出力690hp)を搭載した型。

  • T-55M5(Ob'yekt 155M5):
    近代化キット。
    砲塔前面の「コンタークト-5」爆発反応装甲装甲パネル、新型の火器管制装置などが追加されている。
    エンジンはV-55U(またはV-46-5M)ディーゼルを搭載。

    • T-55M6(Ob'yekt 155M6):
      片側6輪の転輪を持つ車体、V-46-5Mディーゼルの搭載、自動装填装置とT-72Bの2A46M 125mm滑腔砲を備えた砲塔などを装備したアップグレード型。
      防御力はT-80U並みに向上している。
      オプションとして9K120「スヴィーリ」又は9K119「レフレークス」対戦車ミサイルシステムを装備可能。

  • T-55AGM:
    ウクライナのKhKBMでT-54、T-55T-6259式戦車?保有国に対して提案されている近代化改修規格。
    主砲やエンジンの換装、「ニージュ(ナイフ)」爆発反応装甲ブロックと複合装甲の追加等が行われている。

  • T-55AM2:
    チェコでの近代改修型。
    砲発射式対戦車ミサイルの発射能力の付与と、装甲防御力・射撃統制システムの性能向上が行われており、射撃統制システムはKTD-2レーザー測遠機とTShSM-32PB照準機、対戦車ミサイル用の1K13レーザー照準・誘導装置、BV-55デジタル弾道コンピュータを装備し、車体上部前面には箱型追加装甲、砲塔前半部には馬蹄型追加装甲が施された。
    海外へも一部が輸出され、カンボジアなどが配備している。

  • M-55S1:
    スロベニア製の近代化改修案。
    イスラエルのラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズ社が協力している。
    主砲をL7 105mm戦車砲に換装し、スロベニア製レーザー測距儀・射撃統制装置を搭載。
    また、エンジンも強化され、イスラエル製爆発反応装甲とT-72の転輪・キャタピラ・サイドスカートを装備する。

  • T-55 エニグマ:
    湾岸戦争においてイラク軍が使用した増加装甲装備型につけられた名称。
    砲塔周りと車体に4枚のプレート*2が内蔵された鉄箱を貼り付け、対HEAT弾用の複合装甲にしている。
    また、改造によるフロントヘビー対策に砲塔後部にカウンターウェイトを装備している。
    基本はT-55だが、ハッチなど細部にT-54の部品も混じって使われている。

  • チラン2:
    第三次中東戦争でエジプトやシリアから鹵獲したT-55を制式化する際につけられた名称。

  • チラン5:
    中東戦争で捕獲したT-55(チラン2)にイスラエルが近代化改修を行った派生型。
    副武装として装備していたDshk 12.7mm機関銃とSGMT 7.62mm機関銃をブローニングM2とブローニングM1919に換装したほか、装填手や運転手のハッチが新型に付け替えられた。
    名称はチラン海峡に由来する。

    • チラン5Sh:
      チラン5の改修型。
      主砲をSharir(ロイヤル・オードナンス L7)105mm砲に換装したほか、中空装甲として代用するため、砲塔の右側面や後部に大型の雑具箱が追加された。
      また、砲塔右側面に60mm迫撃砲を追加するなどの改修が行われ、第四次中東戦争後は、砲塔の前面と側面、車体前面にイスラエルがHEAT弾対策に開発した「ブレイザー」ERAが装着された。

  • T-55M3:
    イスラエルがベトナム人民軍向けに設計した型。
    砲塔複合装甲の採用、主砲をL7 105mm砲に換装、ドイツ製1,000馬力エンジンやイギリス製ギアボックス・変速装置への換装などが施された。
    60mm迫撃砲を装備可能。
    ベトナム軍では採用されなかったが、後に一部の要素がベトナム軍設計のT-54M(正式にはT-54B cải tiến)に受け継がれた。

  • TR-580:
    ルーマニアでの独自改修型。
    足回りが片側6個の小転輪と上部支持輪を組み合わせた西側標準タイプになり、ゴム製サイドスカートを導入している。
    イラン・イラク戦争ではイラク軍が戦車兵力を補うために輸入し、戦線に投入している。

    • TR-85:
      TR-580の改修型。
      車体を延長し、ドイツ製DE-830CPディーゼルエンジンを導入したことが大きな特徴で、他にも中国との技術提携によるレーザー測距器が追加され、車体前面と砲塔には複合装甲が施されている。
      主砲にはD-10T2S 100mmライフル砲を搭載する。

    • TM-800:
      TR-580の輸出仕様。
      基本的内容はTR-580と同等であるが、複合装甲を砲塔前半部に導入し、主砲にはTR-580と同じD-10T2S 100mmライフル砲を搭載するが、デジタル弾道計算機やレーザーレンジファインダーで構成される新型射撃統制システムを装備する。
      しかし、チェコやポーランド等、同系列の戦車やT-72改修型を生産・販売する競争相手も多く、国際市場でも今のところ輸出商談の成立もみていない。

  • サフィール74:
    イランでの59式戦車/T-54/T-55の近代化改修型。Type72ZやT-72Zとも。
    主砲をM68 105mm砲に、エンジンをT-72に装備されているV-64-6に換装した。

    • アル・ズバイル機
      サフィール74のスーダンでの名称。

  • サフィール86:
    T-55にイランが開発したERAキットを装着した型。

  • kafeel-1:
    2000年にイラクが開発した戦車。増加装甲が追加されている。

  • ラムセス2世:
    エジプトが開発した派生型。当初の計画はT-54Eと呼ばれていた。
    主砲をM68 105mm砲に換装し、射撃統制装置やサスペンション、エンジン等をアメリカ製に変更、砲塔バスケットが追加されている。
    転輪もM48と同じものに換装している。

T-55の派生型

  • Ob'yekt 155ML:
    砲塔後部に9M14「マリュートカ(AT-3『サガー』)」対戦車ミサイル発射機を搭載した型。
    試作のみ。

  • TO-55(Ob'yekt 482):
    火炎放射戦車型。OT-55とも。
    主砲?同軸機銃に替えてATO-200火炎放射砲を装備している。
    460リットルの燃料を搭載し、最大投射距離100mの火炎放射が12回可能となっていた。
    車体前面に固定式でSGMT 7.62mm機関銃を装備している。

  • BTS-3:
    装甲回収車型。

  • MT-55:
    架橋戦車型。MTU-55とも。シザース式の橋を装備する。

  • MTU-12:
    架橋戦車型。長さ12mの短スパン橋を装備。

  • T-55C1:
    チェコで開発された操縦訓練車輛。
    主砲と機銃が撤去され穴が塞がれている。
    また、地雷処理装置を追加した物もある。

  • T-55C2:
    チェコで開発された操縦訓練車輛。
    こちらは砲塔が撤去され、代わりにキューポラ付きの背の低い上部構造物が追加されている。

  • BTR-T
    旧式化したT-55の車体を利用して製造した歩兵戦闘車。詳しくは項を参照。

  • BMP-55:
    ウクライナで開発されたT-55のシャーシを利用して製作された歩兵戦闘車。

  • アチザリット
    チラン4・チラン5をベースに開発されたイスラエルの装甲兵員輸送車
    詳しくは項を参照。

  • APC-55:
    南レバノン軍がイスラエルから提供されたT-55を改造した装甲兵員輸送車型。
    砲塔はそのままだが主砲が撤去され、正面と砲塔側面に視察口付き機銃口が設置されている。

  • UOS155:
    チェコで開発された地雷処理車輛。
    T-55Aの車体にクレーンアーム式の地雷処理機材(ローラー、スキッド等数種類を選択可能)と操作室を備え、砲塔のレールを用いて回転させることが可能。

  • T-55/130mm自走砲:
    イラクが開発した自走砲型。
    砲塔を撤去して箱状の戦闘室を設け、中国製の59式130mm榴弾砲*3を搭載した。

  • T-55/160mm自走砲:
    イラクが開発した自走砲型。
    砲塔を撤去して箱状の戦闘室を設け、160mm榴弾砲(あるいは迫撃砲)を搭載した。


*1 英ボービントン戦車博物館では、所蔵車輌の自走中にバックギアの戻しに失敗して駐車場の来客の車を数台踏み潰した事がある。
*2 4mm厚の鋼と15mm厚のアルミ合金と5mm厚のゴムからなる。
*3 ソ連製M-46 130mmカノン砲のライセンス生産型。

トップ 編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS