【SA-9】 †
旧ソ連軍が開発した初期の自走式短射程地対空ミサイル。
本家ロシアでは9K31「ストレラ*1-1」、NATOコードではSA-9「ガスキン*2」と呼ばれる。
開発は1960年代初期で、姉妹機種である9K32「ストレラ-2(SA-7『グレイル』)」と並行して進められ、1966年から量産化された。
SA-9は、従来から有るBRDM-2?水陸両用偵察車の台車を使用し、砲塔部分に発射機を設置した*3ため、開発時間を大幅に短縮する事が出来た。
主に連隊階梯で既存のZSU-23-4自走式対空砲を補完するものとして、並行して配備された。
使用する9M31ミサイルは赤外線誘導方式でコンテナに搭載されており、最高4発搭載可能*4。
乗員は車長、操縦手、ミサイル操作要員の3名で、空気清浄機とNBC防護装置を装備し、放射能や生物兵器、化学兵器で汚染された地域での行動も可能である。
初期のタイプは第1世代の非冷却型シーカーを使用しているため、後方でしかも晴天時しか使用出来ないので、攻撃に関してはかなり制限がある。
さらにレーダーは搭載していないため、レーダーでの索敵は9S16「フラット・ボックスA」低空警戒レーダー搭載車両*5又はZSU-23-4「シルカ」自走対空機関砲のガンディッシュ・レーダーとのリンクが必要である。
ちなみに、単独での場合は視認での攻撃に限られる。
最大射程は4kmで、地対空ミサイルの中ではかなり射程が短い。
このように性能が低いSA-9だが、輸出の方は好評でイラク・エジプト・シリア・リビア・アルジェリア・ベトナム・インド・イエメン・ハンガリー・アンゴラ・旧ユーゴスラビア・旧東ドイツ等に輸出された。
現在ロシア軍は全て退役し、9K35「ストレラ10(SA-13『ゴファー』)」に機種変換されている。
実戦ではSA-8と同じくレバノン侵攻?が初だが、撃墜には至らず、後にイスラエルに捕獲されている。
他にはイラン・イラク戦争や湾岸戦争・コソボ紛争?で使用されたが、多数が撃破されている。
コソボ紛争?では旧ユーゴスラビア軍がNATO軍のUAVを1機撃墜した。
関連:SA-13
スペックデータ †
9A31自走発射機 | |
乗員 | 3名 |
全長 | 5.75m |
全高 | 2.31m |
全幅 | 2.35m |
戦闘重量 | 7t |
エンジン | GAZ-41 V型8気筒水冷ガソリンエンジン(出力140hp) |
登坂力 | 60% |
最大速度 | 95km/h(路上) |
航続距離 | 750km |
装甲 | 5〜14mm(車体前) |
携行弾数 | 6発 |
兵装 | 9M31 2連装対空ミサイル発射機×2基 |
ミサイル | ||
形式 | 9M31 (SA-9A) | 9M31M (SA-9B) |
全長 | 1.8m | |
直径 | 0.12m | |
翼幅 | 0.36m | |
発射重量 | 32kg | |
有効迎撃高度 | 30〜3,500m | 10〜6,100m |
有効射程 | 800〜4,200m | 560〜8,000m |
最高速度 | マッハ1.8 | |
推進方式 | 固燃ロケットモーター | |
誘導方式 | 赤外線誘導(パッシブ式) | |
シーカー | 非冷却PbS 赤外線シーカー (1-3μ周波帯) | 冷却PbS 赤外線シーカー (1-5μ周波帯) |
弾頭 | HE 破片効果弾頭(2.6kg) |
主な種類 †
- 9K31「ストレラ-1(SA-9A)」:
初期型。
第1世代の非冷却型シーカーを使用する。
- 9K31M「ストレラ-1M(SA-9B)」:
改良型。
誘導面が強化され(冷却型シーカーの搭載等)、前方攻撃が可能となった。
- CA-95:
ルーマニアでのライセンス生産型。
*1 Стрела:ロシア語で矢の意。
*2 英語で脛という意。
*3 ただし、車体中央部に有ったチェーン駆動式の補助車輪は取り除かれている。
*4 さらに予備弾2発を外部に搭載。
*5 索敵距離30km。発射機と同じくBRDM-2をベースにしている。