Last-modified: 2021-07-03 (土) 00:02:30 (84d)

【SA-15】(えすえーじゅうご)

現在ロシア軍で使用されている、最新鋭の自走式短距離地対空ミサイル
NATOコードでは「SA-15『ガントレット*1』」、ロシアでは「9K330『トール*2』」と呼ばれる。

SA-15は前作9K33「オサー(SA-8『ゲッコー』)」の後継として1970年代から開発された。
車両には自走式キャタピラタイプの9A330装軌車*3を使用、全システムが車両中央のターレットに集約されており、1台での運用が可能である。

捜索レーダーは「ドッグイア」パルス/ドップラーフェイズドアレイレーダーで最大索敵距離は約25km、カタログスペックでは最大48個の目標を補足でき、その中から脅威である10個の目標を追尾することができる。
移動時はマストを折り畳むことができる。
初期型は機械捜査式だが、9K331M「トールM1」以降は電子操作式になっており、探知距離や目標数が増加している。

誘導レーダーにはシステム前面に取り付けられた「スクラムハーフ」フェーズドアレイ迎撃レーダーを使用し、最大探知距離は20km、最大2発のミサイルを誘導することが可能である。
このレーダーは固定式(仰俯のみ可能)で、ミサイル誘導時はシステム全体を旋回させる。

ミサイルは9M330又は9M331を使用する。
ミサイルは2段式の固体推進で最大射程は12km、弾頭には14.5kgのHE破片効果炸薬が装填されている。
誘導方式はTV誘導及び指令誘導?を使用している。
発射方式にはコールド・ローンチ方式のVLSを採用している。
攻撃目標には航空機無人機ヘリコプターのほか、巡航ミサイル誘導爆弾等の精密誘導兵器も撃墜出来るという。

9K330の1個中隊は9A330自走発射機4両の装備が基本となっている。
支援装備として9S737「ランジール*4」中隊指揮車両、装輪式トラックから成る9T231再装填支援車両、9T245ミサイル運搬車両が配備される。
大隊指揮官車にはBTR-80装甲兵員輸送車をベースとしたPU-12Mが使用され、大隊は基本的に2K22「ツングースカ」自走対空システム1個中隊と混成されることになっている。

ロシア軍への実戦配備は1991年だが、珍しい事に艦対空ミサイル型である3K95「キンジャール」(SA-N-9)が先に(1989年)配備された。
現在ではロシアの他にも、ウクライナ・中国・ベラルーシ・キプロス・インド・ペルーに輸出されている*5

SA-15.jpg

Photo:Ukraine Department of Defense

関連:SA-8

性能諸元

自走発射機
設計社Almaz-Antey:
Antey design bureau(主設計社)
MKB Fakel(ミサイル設計社)
MNIIRE Altair(海軍型設計社)
製造社IEMZ Kupol
メトロワゴンマッシュ(Metrowagonmash)(装軌型設計社)
ミンスク・ホイール・トラクター工場(MZKT)(装輪型設計社)
乗員3名
全長7.5m
全高5.1m(レーダーマスト展開時)
全幅3.3m
重量34t
懸架・駆動方式トーションバー、油圧式変速機
エンジンV-46-4 V型12気筒ディーゼルエンジン(出力830hp(630kW))
最大速度65km/h(路上)
行動距離500km
最低地上高450mm
装甲10mm(車体前面)
兵装4連装SAM発射機×2基
(9M330/9M331ミサイル×8発)
生産台数316輌


9M330/9M331
全長3.5m/2,900mm
直径235mm
翼幅650mm
発射重量165kg/167kg
飛翔速度マッハ2.8
推進方式固体燃料ロケットモーター
有効迎撃高度10〜6,000m
有効射程1,500〜12,000m
飛行高度6,000m
操舵方式4枚の操縦翼を使用したガス動的制御
弾頭HE 破片効果(15kg)
誘導方式TV誘導及び無線指令誘導?

主なバリエーション

  • 9K330「トール」:
    9M330ミサイルを使用する初期型。最短迎撃距離2km。

  • 9K331(SA-15)「トールM」:
    9M331ミサイルを使用する量産型。最短迎撃距離1.5km。
    精度が大きく強化され同時に2目標への迎撃も可能になった。
    輸出型も同等の性能だと思われる。

  • 9K331M(SA-15)「トールM1/トールM1T」:
    9M331ミサイル使用する型。最短迎撃距離1.5km。

  • トールM1-2U:
    2012年に配備が開始された型。
    同時に4目標への迎撃が可能になっている。

  • トールM2KM:
    戦闘モジュール型。
    システムは自己完結式で運用人員は2名。
    144個の目標のうち、同時に20個の目標を追跡できる。

  • 9K332「トールM2/トールM2E/トールM2KM/トールMTA/トールMTB/トールMTS」:
    新型の探索レーダーを搭載する型。
    9M331ミサイルを使用。最短迎撃距離1km。
    トールM2Eは6×6輪の装輪装甲車に搭載されている。

  • 3K95「キンジャール(Кинжал)(SA-N-9)」:
    4K33「オサーM」の後継として開発された個艦防空ミサイル型。
    愛称はコサックが用いる短剣の名称で、輸出型は「クリノーク*6」と呼ばれる。
    システムは、9M330ミサイルとPS 4S95VLS、3R95(MR-360)「ポドカット(NATOコード:クロス・ソード)」射撃指揮装置によって構成されている。
    MR-360はC(G)バンドの目標捕捉レーダー(最大追尾距離45km)とKバンドの交戦レーダー(最大追尾距離15km)という2種のレーダーによって構成されており、同時に4目標を攻撃することができる。
    アドミラル・クズネツォフ級航空母艦ウダロイ級駆逐艦ネウストラシムイ級?フリゲートグリシャ級?フリゲート「MPK-104」(洋上試験時)、キーロフ級ミサイル巡洋艦(4番艦のみ)に装備。

  • 紅旗17(HQ-17):
    9K331Mの中国輸出型。

    • HQ-17A:
      東風汽車公司が製造する装輪型。MZKT-6922に似た6×6シャーシに搭載。

    • FM-2000:
      輸出型。

    • FM-3000:
      HQ-17をベースにした射程30kmの地対空ミサイルシステム。


*1 Gauntlet:篭手の意。
*2 Тор:ロシア語でトーラス(輪環面/体)の事を指す。
*3 2K22「ツングースカ」と同じくGM-569A装甲車をベースにしている。
*4 Ranzhir:規律の意。
*5 この他、ベネズエラも発注しており、将来はイランにも輸出される可能性がある。
*6 Клинок:ロシア語で「刀身」の意。

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