【SA-15】 †
現在ロシア軍で使用されている、最新鋭の自走式短距離地対空ミサイル。
NATOコードでは「SA-15『ガントレット*1』」、ロシアでは「9K330『トール*2』」と呼ばれる。
SA-15は前作9K33「オサー(SA-8『ゲッコー』)」の後継として1970年代から開発された。
車両には自走式キャタピラタイプの9A330装軌車*3を使用、全システムが車両中央のターレットに集約されており、1台での運用が可能である。
捜索レーダーは「ドッグイア」パルス/ドップラーフェイズドアレイレーダーで最大索敵距離は約25km、カタログスペックでは最大48個の目標を補足でき、その中から脅威である10個の目標を追尾することができる。
移動時はマストを折り畳むことができる。
初期型は機械捜査式だが、9K331M「トールM1」以降は電子操作式になっており、探知距離や目標数が増加している。
誘導レーダーにはシステム前面に取り付けられた「スクラムハーフ」フェーズドアレイ迎撃レーダーを使用し、最大探知距離は20km、最大2発のミサイルを誘導することが可能である。
このレーダーは固定式(仰俯のみ可能)で、ミサイル誘導時はシステム全体を旋回させる。
ミサイルは9M330又は9M331を使用する。
ミサイルは2段式の固体推進で最大射程は12km、弾頭には14.5kgのHE破片効果炸薬が装填されている。
誘導方式はTV誘導及び指令誘導?を使用している。
発射方式にはコールド・ローンチ方式のVLSを採用している。
攻撃目標には航空機・無人機・ヘリコプターのほか、巡航ミサイルや誘導爆弾等の精密誘導兵器も撃墜出来るという。
9K330の1個中隊は9A330自走発射機4両の装備が基本となっている。
支援装備として9S737「ランジール*4」中隊指揮車両、装輪式トラックから成る9T231再装填支援車両、9T245ミサイル運搬車両が配備される。
大隊指揮官車にはBTR-80装甲兵員輸送車をベースとしたPU-12Mが使用され、大隊は基本的に2K22「ツングースカ」自走対空システム1個中隊と混成されることになっている。
ロシア軍への実戦配備は1991年だが、珍しい事に艦対空ミサイル型である3K95「キンジャール」(SA-N-9)が先に(1989年)配備された。
現在ではロシアの他にも、ウクライナ・中国・ベラルーシ・キプロス・インド・ペルーに輸出されている*5。
Photo:Ukraine Department of Defense
関連:SA-8
性能諸元 †
自走発射機 | |
設計社 | Almaz-Antey: Antey design bureau(主設計社) MKB Fakel(ミサイル設計社) MNIIRE Altair(海軍型設計社) |
製造社 | IEMZ Kupol メトロワゴンマッシュ(Metrowagonmash)(装軌型設計社) ミンスク・ホイール・トラクター工場(MZKT)(装輪型設計社) |
乗員 | 3名 |
全長 | 7.5m |
全高 | 5.1m(レーダーマスト展開時) |
全幅 | 3.3m |
重量 | 34t |
懸架・駆動方式 | トーションバー、油圧式変速機 |
エンジン | V-46-4 V型12気筒ディーゼルエンジン(出力830hp(630kW)) |
最大速度 | 65km/h(路上) |
行動距離 | 500km |
最低地上高 | 450mm |
装甲 | 10mm(車体前面) |
兵装 | 4連装SAM発射機×2基 (9M330/9M331ミサイル×8発) |
生産台数 | 316輌 |
9M330/9M331 | |
全長 | 3.5m/2,900mm |
直径 | 235mm |
翼幅 | 650mm |
発射重量 | 165kg/167kg |
飛翔速度 | マッハ2.8 |
推進方式 | 固体燃料ロケットモーター |
有効迎撃高度 | 10〜6,000m |
有効射程 | 1,500〜12,000m |
飛行高度 | 6,000m |
操舵方式 | 4枚の操縦翼を使用したガス動的制御 |
弾頭 | HE 破片効果(15kg) |
誘導方式 | TV誘導及び無線指令誘導? |
主なバリエーション †
- 9K330「トール」:
9M330ミサイルを使用する初期型。最短迎撃距離2km。
- 9K331(SA-15)「トールM」:
9M331ミサイルを使用する量産型。最短迎撃距離1.5km。
精度が大きく強化され同時に2目標への迎撃も可能になった。
輸出型も同等の性能だと思われる。
- 9K331M(SA-15)「トールM1/トールM1T」:
9M331ミサイル使用する型。最短迎撃距離1.5km。
- トールM1-2U:
2012年に配備が開始された型。
同時に4目標への迎撃が可能になっている。
- トールM2KM:
戦闘モジュール型。
システムは自己完結式で運用人員は2名。
144個の目標のうち、同時に20個の目標を追跡できる。
- 9K332「トールM2/トールM2E/トールM2KM/トールMTA/トールMTB/トールMTS」:
新型の探索レーダーを搭載する型。
9M331ミサイルを使用。最短迎撃距離1km。
トールM2Eは6×6輪の装輪装甲車に搭載されている。
- 3K95「キンジャール(Кинжал)(SA-N-9)」:
4K33「オサーM」の後継として開発された個艦防空ミサイル型。
愛称はコサックが用いる短剣の名称で、輸出型は「クリノーク*6」と呼ばれる。
システムは、9M330ミサイルとPS 4S95VLS、3R95(MR-360)「ポドカット(NATOコード:クロス・ソード)」射撃指揮装置によって構成されている。
MR-360はC(G)バンドの目標捕捉レーダー(最大追尾距離45km)とKバンドの交戦レーダー(最大追尾距離15km)という2種のレーダーによって構成されており、同時に4目標を攻撃することができる。
アドミラル・クズネツォフ級航空母艦、ウダロイ級駆逐艦、ネウストラシムイ級?フリゲート、グリシャ級?フリゲート「MPK-104」(洋上試験時)、キーロフ級ミサイル巡洋艦(4番艦のみ)に装備。
- 紅旗17(HQ-17):
9K331Mの中国輸出型。
- HQ-17A:
東風汽車公司が製造する装輪型。MZKT-6922に似た6×6シャーシに搭載。
- FM-2000:
輸出型。
- FM-3000:
HQ-17をベースにした射程30kmの地対空ミサイルシステム。
- HQ-17A: