【SA-10】 †
旧ソ連が開発した、現在ロシア軍の主力の一つである長射程地対空ミサイル。
NATOコードではSA-10「グランブル」、ロシア軍では「S-300」と呼ばれている。
1960年に開発され設計はファケル・ミサイル設計局が担当し、旧式化したS-25「ベルクート(SA-1『ギルド』)」?やS-75「ドヴィナー(SA-2『ガイドライン』)」・S-125「ネヴァー(SA-3『ゴア』)」の後継として開発された。
車両構成は発射機*1・多機能交戦レーダー搭載車*2・ミサイル補給車両・通信車・指揮車両・整備車両等で、どれもがトラックに搭載されているか牽引のため移動・機動展開能力が上昇した。
この辺りはアメリカ軍のMIM-104「ペトリオット」とよく似ている。
ミサイル(5V55K)は発射機に4発搭載されており、発射の際は発射機を垂直の状態に上げ、コールド・ローンチ方式で発射される。
ミサイルは高度約30,000mまで到達でき、高高度目標は元より中高度・低高度目標の航空機や巡航ミサイルを撃墜できる。
弾道ミサイルに対しては、S-300Pが限定的な弾道ミサイル対応能力を持つ。
最大射程は47kmでTVM誘導方式だがレーダー索敵距離は不明である。
SA-10の登場は、それまで旧ソ連軍で最新であったSA-6「ゲインフル」やSA-5「ガモン」を一気に旧式に追い込んだと言っても過言ではない。
1980年から量産が開始され、現在も継続中である。
これまでにベラルーシ・ブルガリア・ウクライナ・クロアチア・ギリシャ・ハンガリー・中国・インド・イラン・シリア等に輸出され、現在も積極的に販売が続いている。
なお、SA-10の発展型として1980年代半ばにS-300V(SA-12『グラディエーター/ジャイアント』)が登場し、さらにはキーロフ級やスラヴァ級等の巡洋艦の艦対空ミサイル(S-300F)としても採用された。
関連:SA-12 SA-6 SA-5 カーラ キーロフ スラヴァ 051C型
Photo:Ukraine Department of Defense
スペックデータ †
全長 | 7m |
直径 | 45cm/51.5cm(PMU-1) |
翼幅 | 90cm |
発射重量 | 1,480kg/1,450kg(SA-N-6)/1,500kg(PMU-1) |
射程 | ミサイル一覧参照 |
速度 | ミサイル一覧参照 |
推進方式 | 固体推進ロケットモーター |
弾頭 | HE(100kg/133kg(SA-N-6))または核弾頭(2kT) |
誘導方式 | 指令?と慣性、セミアクティブレーダー(TVMモード) |
ミサイル一覧 †
名称 | 全長 | 直径 | 重量 | 最大射程 | 最高速度 | 弾頭重量 | 誘導方式 |
5V55K/R | 7m | 450mm | 1,450kg | 47km/75km | 1,900m/s | 100kg | Command |
5V55R/KD | 75km/90km | 133kg | SARH | ||||
5V55RM (S-300F(SA-N-6)) | 725cm | 508cm | 1,664kg | 90km | 2,000m/s | ||
5V55U | 7m | 450mm | 1,470kg | 150km | |||
48N6 | 7.5m | 500mm | 1,780kg | 150kg | TVM | ||
48N6P-01 | 1,800kg | 195km | |||||
48N6E | 750cm | 519mm | 1,900kg | 120km | 2,100m/s | 143kg | |
48N6E2 | 約800cm | 約600cm | 2,250kg | 200km | 180kg | ||
9M82 (S-300V) | - | 420kg | 100km 30km (98,000ft) | 2,400m/s | 150kg | SARH | |
9M83 (S-300V) | - | 75km 25km (82,000ft) | 1,700m/s | ||||
9M83ME | - | 200km | - | ||||
9M96E1 (S-400) | - | 330kg | 40km | 900m/s | 24kg | ARH | |
9M96E2 (S-400) | - | 420kg | 120km | 1,000m/s | |||
40N6 (S-400) | - | 400km | - |
レーダー性能一覧 †
索敵レーダー | ||||||||
名称 | 36D6 | 76N6 | 64N6 | 96L6E | 9S15 | 9S19 | MR-75 | MR-800 |
NATO コード | ティン シールド | クラム シェル | ビッグ バード | - | ビルボード | ハイ スクリーン | トップ スティール | トップ ベア |
用途 | - | 低高度 検出 | - | 全高度 対応型 | - | 追跡用 | 海軍 (艦船用) | |
索敵範囲 | 180〜360km | 120km | 300km | 250km | - | 300km | 200km | |
同時索敵 目標 | 120 | 300 | - | 300 | 200 | 16 | - |
追跡レーダー | |||||
名称 | 30N6 | 30N6E1 | 30N6E2 | 9S32-1 | 3R41 |
NATO コード | フラップ リッドA | フラップリッドB | グリルパン | トップドーム | |
索敵範囲 | - | 200km | 140〜150km | 100km | |
同時追跡目標 | 4 | 12 | 100 | 12 | - |
同時攻撃目標 | 4 | 6 | 36 | 6 | |
備考 | - | フェイズドアレイレーダー | - |
主な搭載艦艇(S-300F) †
主な種類。 †
- S-300P(SA-10A):
初期生産型。
- S-300PS:
初期生産型の輸出型。
- S-300PMU(SA-10B):
中期生産型。
- S-300PMU1:
中期生産型の改良型。
- S-300PMU2:
後期生産型。
- S-300F(SA-N-6「グランブル」):
P型の艦対空ミサイル型。
「フォールト*3」/「リフ(輸出型)」と呼ばれる。
システムは5V55RMミサイルとB-203Aリボルバー式VLS、3R41「ヴォルナ(NATOコードネーム:トップ・ドーム)」射撃指揮装置によって構成される。
- S-300V(SA-12):
PMU型の発展型。詳しくは項を参照。
- 紅旗9(HQ-9):
中国がS-300PSを参考に独自開発した長距離地対空ミサイル。
詳しくは項を参照。
- 紅旗10(HQ-10):
S-300PMU1の中国でのライセンス生産型。
- 紅旗15(HQ-15):
HQ-10の改良型。
射程距離が延長されている。
- 紅旗19(HQ-19):
S-400相当。詳細不明。
- S-400(SA-21):
P型の発展型で後継。
当初はS-300PM3もしくはS-300PMU3とされていた。
*1 ウラル375トラックで牽引される5P85T牽引式発射機またはスカッドB短距離弾道ミサイルのMAZ-543自走発射機を改造した5P85S自走式発射機。
*2 索敵レーダーとして、ティンシールド・クラムシェル・ビッグバード・ビルボード・ハイスクリーンが、追跡レーダーとして、フラップリッドA/B・グリルパン・トップドームがある。
*3 Форт:ロシア語で要塞の意。