Last-modified: 2017-01-06 (金) 21:34:31 (138d)

【S-2】(えすつー)

グラマンS-2"Tracker(トラッカー)".
1950年代にアメリカで開発された双発艦上対潜哨戒機

従来、アメリカ海軍において艦載機による対潜哨戒には、旧式化したTBM「アベンジャー」?AF-2「ガーディアン」?雷撃機などが充てられていたが、第二次世界大戦世代の機体であった単発レシプロ機のこれらは搭載能力が小さすぎたため、1機で潜水艦の探知・攻撃を行うことは不可能*1で、コスト・パフォーマンスが悪かった。

これを海軍では「ハンター・キラー・チーム」と呼んでいたが、実際に運用するには「ハンター」「キラー」の2機種の稼働率を同一にしなければならなかった。
しかし、根本から装備が違うため、完璧に同じにすることは不可能だった。

本機はこれらの問題を解決し、1機で探知・攻撃の両方を行える機体としてデビューした。

1952年に原型機が初飛行した本機は、各型合わせて1,284機が生産され、米海軍のみならず日本や台湾、トルコなど各国海軍で使用された。
また、本機をベースとして艦上輸送機C-1「トレーダー」および早期警戒機E-1「トレーサー」が作られた。

海上自衛隊では「あおたか」の愛称がつけられ、1957年から1984年まで60機が運用された。
退役後は一部の機体が鹿屋航空基地史料館などに展示されている。

海自が本機を採用したのは、この当時、アメリカが日本に軽空母を無償貸与することを提示しており、その搭載機とするためであった。
ちなみにこの計画は、当時の大蔵省(現:財務省)が運用コストを試算した結果、運用が困難と判断されたため沙汰止みになっている*2

現在でも、アメリカ海軍から退役した機体が民間に払い下げられて消防機として活躍している他、台湾などでは主力対潜哨戒機として現役である。

関連:潜水艦 C-1 E-1?

スペックデータ

乗員4名
全長13.26m
全高5.07m
全幅22.12m
主翼面積46.0
空虚重量8,505kg
最大離陸重量13,222kg
エンジンライト R-1820-WA空冷星型9気筒(出力1,525hp)X2基
速度
(最大/哨戒飛行時)
426Km/h / 241Km/h
上昇率594m/分
実用上昇限度6,706m
航続距離1,850km(航続時間9時間)
兵装胴体内にMk.47爆雷またはMk.101核爆雷×1
翼下ハードポイント6箇所に爆雷、魚雷、2.75インチロケット弾対艦ミサイル等を搭載可能


バリエーション(カッコ内は旧呼称及び生産・改修機数)

  • XS2F-1(2機):
    試作・原型機。
    社内呼称「グラマン モデルG-89」

  • YS-2A(YS2F-1、15機):
    増加試作機。

  • S-2A(S2F-1、740機):
    初期生産型。

    • TS-2A(S2F-1T、A型228機):
      訓練用対潜機材を搭載した対潜作戦要員練習機型。

    • US-2A(S2F1-U、A型64機):
      多用途機型。主に捜索救難や標的曳航などに使用された。

    • S2F-U(A型4機):
      標的曳航機型。海上自衛隊で使用された。

    • S2F-C(A型2機):
      輸送機型。海上自衛隊で使用された。

  • S-2B(S2F-1S、A型138機):
    A型の改良型。
    AN/ASA-20「ジュリー」 / AN/AQA-1「ジェゼベル」対潜哨戒装置を搭載した。

    • US-2B(66機):
      多用途機型。主に人員輸送に使用された。
      爆弾槽を改修し、5名分の座席が設けられている。

  • S-2C(S2F-2、60機):
    核爆雷搭載型。
    爆弾槽左側を拡大し、エンジンナセル後端を前型よりすぼませ、水平尾翼を拡大している。
    核爆雷の小型化により、多用途機に改修された。

    • RS-2C(S2F-2P、C型1機):
      偵察機型。

    • US-2C(S2F-2U、C型50機):
      多用途機型。

  • S-2D(S2F-3、100機):
    主翼や尾翼、爆弾槽の拡大やエンジンの強化、電子機材更新などの改修を施した型。

    • ES-2D(D型6機):
      電子戦試験機型。

    • US-2D:
      D型の汎用機型。

  • S-2E(S2F-3S、252機):
    D型の電子機材更新型。
    ジュリー/ジェゼベル対潜哨戒装置と戦術航法装置を追加。

  • S-2F(B型50機):
    B型の改良型。
    改良型ジュリー/ジェゼベル対潜哨戒装置を搭載。

  • S-2G(E型49機):
    E型の電子機器更新型。
    方向性周波数分析処理装置を搭載。

  • S-2N:
    中古の米海軍使用機を改修したオランダ軍向け機体。

  • S-2(T):
    民間に払い下げられたS-2のエンジンをターボプロップエンジンに換装した型。
    「ターボトラッカー」とも呼ばれる。

    • S-2AT:
      A型のエンジン換装型。
      現在でも、消防機として運用されている。

    • S-2ET:
      E型のエンジン換装型。

  • マーシュ S2F-3AT(S2F-3 22機):
    マーシュ社におけるS2F-3の消防機改修型。
    エンジンをギャレットTPE331に換装している。

  • CP-121(CS2F):
    デハビラント・カナダ社が製作したカナダ海軍向け機体。

    • CS2F-1(42機):
      S2F-1よりアンテナなどを改良した型。

    • CS2F-2(57機):
      対潜機材改良型。

    • CS2F-3(43機):
      電子機材改良型。

    • CP-121A:
      CS2Fを漁業監視機に転用した型。

  • コンエアー ファイヤーキャット(改造35機):
    カナダのConair社で改造された消防機型。
    操縦室を含むキャビンの床高を嵩上げし、大容量の消火用散水タンクを設置している。

  • コンエアー ターボファイアーキャット:
    ファイアーキャットのエンジン換装型。
    エンジンはP&WカナダのPT6A-67AFターボプロップを搭載し、両主翼には増加燃料タンクを標準装備している。
    フランスでも民間の航空会社が消火機として使用している。

  • P-16A:
    S-2Aのブラジルでの呼称。

  • UP-16A:
    US-2Aのブラジルでの呼称。

*1 探知専門の機体と攻撃専門の機体を別々に用意する必要があった。
*2 その後、1970〜80年代にも軽空母の導入が検討され、その艦載機として英国のV/STOL戦闘攻撃機シーハリアーの導入も検討されたがこれも挫折。
  結局、日本が再び航空母艦を手にするのは、2000年代になって事実上のヘリコプター空母であるひゅうが級が就役するまで待つことになる。


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