Last-modified: 2022-09-30 (金) 08:49:40 (7d)

【P-51】(ぴーごじゅういち)

North American P-51Mustang(マスタング)(「ムスタング」とも).

アメリカ合衆国のノースアメリカン社が開発したレシプロ戦闘機
第二次世界大戦期に運用された世界の戦闘機の中でも最優秀の機体といわれている。

アメリカ陸軍航空隊及びイギリス空軍、その他連合国側の各国が制式採用し、対独戦や対日戦で活躍したことで有名。

本機は1939年、イギリスからの発注で開発がスタートされた。
当時、ノースアメリカン社はカーティス社が生産し、米陸軍に納入していたP-40「ウォーホーク」の下請け生産依頼を軍部から受けていたが、これを断わるため、わずか117日で試作機「NA-73」を製作。
その14日後には初飛行が実施され、P-40を凌駕する性能を発揮、P-51、Mustang Mk.Iとして米英両国で制式採用された。
これらの初期型は過給器の性能が低いアリソン社製「V-1710」液冷エンジンを搭載*1し、優れた低高度性能を発揮する一方、中〜高高度での性能は不十分であった。
そのため、当初の本機はアメリカ陸軍航空隊及びイギリス空軍は、このA型を戦闘爆撃機偵察機として運用した。

しかし、1942年4月にイギリスのロールス・ロイス?のテストパイロット、ロニー・ハーカー氏がエンジンを高高度性能に優れるロールス・ロイス?社製「マーリン61」液冷エンジンへの換装を提案し、それをイギリス空軍が実行に移すと、本機の弱点であった高高度性能は格段に改善され、さらに同時期の戦闘機のほとんどを圧倒する速度性能を得た。
この換装型がきっかけとなって量産されたマーリン搭載機が、英空軍呼称「Mustang Mk.勝廖∧椴Ψ街匐隊呼称「P-51B/C*2*3」である。

D型では、従来型の火力不足や後方視界不良などの欠点を改善するため12.7mm機銃搭載数を増加、イギリス空軍機で実施されていた風防のバブルキャノピー化等の実施が行われた。こうした改良により飛行性能は若干の低下を見せたが、兵器としての実用性が大きく高まり、最終的に最多量産型となった。

実戦では、主に空力的な優秀さと大きな燃料搭載量から発揮される長大な航続距離を活かし、ドイツ領内最深部や、日本本土への爆撃機護衛任務に従事し、同時期の枢軸国側主力戦闘機であるドイツのFw190Bf109、日本の零式艦上戦闘機疾風に対しては性能的にも数的にも優位に立ち、殆どの場合は互角以上の戦果をあげていた。
また、枢軸国の迎撃が低調となってからは大量の対地兵器を搭載した戦闘爆撃機運用もされた。

また、長距離任務によるパイロットの負担を軽減すべく、P-51を二連結してパイロットの負担を半分にする、という開発方針で制作され、制式採用された双発戦闘機「P-82」が戦争末期に実用化、量産を開始したが、第二次世界大戦が実戦参加前に終結したため大幅に生産計画が縮小された。

戦後、アメリカ空軍による命名規則一新によって型式名称が「F-51」,「F-82」へと変更された後は朝鮮戦争戦闘爆撃機として、さらにP-51は第一次中東戦争第二次中東戦争でも運用された。

P-51の生産機数は15,675機で、米国製戦闘機としては最多である。(2位はP-47(15,660機))。
P-82は世界大戦終結により273機の少数生産に終わった。

現在でも、多くの機体が個人の手によって飛行可能な状態に保たれており*4航空ショーのフライトデモや民間のエアレースなどで見る事が出来る。

IMG_4551.jpg

(P-51D)

関連:P-38 P-47

スペックデータ

P-51A
乗員1名
全長9.8m
全幅11.29m
全高3.72m
主翼面積21.66
空虚重量2,858kg
全備重量3,091kg
最大離陸重量4,808kg
エンジンアリソン V-1710-81 液冷V型12気筒×1基
出力離昇1,200hp/896kW
1,410hp/1,052kW(高度2,895m、WEP*5時)
最高速度628km/h(高度6,096m)
668km/h(高度3,170m、WEP時)
航続距離724km
2,755km(増槽有り)
実用上昇限度9,144m
上昇率13.4m/s
翼面荷重143kg/
馬力荷重290W/kg
武装ブローニングAN/M2 12.7mm重機関銃×6門(弾数各270発)
翼内4門、機首下部2門


P-51D
乗員1名
全長9.83m
全高4.08m
翼幅11.28m
主翼面積21.83
翼型NAA/NACA 45-100 / NAA/NACA 45-100
零揚抗力係数0.0163
抗力面積0.35
アスペクト比5.83
空虚重量3,465kg
全備重量4,175kg
最大離陸重量5,490kg
最大燃料容量1,590リットル
エンジンパッカード V-1650-7「マーリン」液冷V型12気筒×1基
出力離昇1,490hp/1,111kW
1,720hp/1,280kW(WEP時)
最高速度708km/h(高度7,600m)
巡航速度583km/h
失速速度160km/h
航続距離2,656km(増槽有り)
実用上昇限度12,800m
上昇率16.3m/s
翼面荷重192kg/
馬力荷重266W/kg
揚抗力比14.6
固定武装翼内:ブローニングAN/M2 12.7mm重機関銃×6門(弾数1,820発)
兵装最大1,000lbs(454kg)までの爆弾×2発
T64 5in HVARロケット弾×6〜10発


P-82G
乗員2名
全長12.93m
全高4.22m
翼幅15.62m
主翼面積37.90
空虚重量7,256kg
全備重量11,608kg
エンジンアリソンV-1710-143/145 液冷V型12気筒×2基
出力離昇1,600hp/1,193kW×2
最高速度742km/h(高度6,400m)
巡航速度460km/h
航続距離3,605km
実用上昇限度11,855m
翼面荷重306kg/
馬力荷重206W/kg
固定武装翼内:ブローニングM3 12.7mm重機関銃×6門
兵装1,000lb(454kg)爆弾×4発又は5in(127mm)HVARロケット弾×25発

派生型

原型機

  • NA-73:
    原型機(英国向け、米国向け両方)の社内モデル名。2機製作。 アリソンV-1710-39エンジン(離昇1,150hp)を搭載し、武装は機首12.7mm機関銃×2門、主翼に12.7mm機関銃×2門と7.62mm機関銃?×4門。

    米陸軍航空隊
  • XP-51:
    米陸軍審査時の原型機呼称。
    NA-73原型の4号機および10号機。

  • P-51:
    米陸軍向け生産型。英国へ供与用として調達。
    武装は20mm機関砲×4門。

  • A-36「アパッチ」:
    アメリカ陸軍航空隊で運用された攻撃機急降下爆撃機)型。
    基本設計は初期生産型に準ずるが、アリソンV-1710-87エンジン(離昇1,325hp)を搭載、主翼両面に角形でグリル網のようなダイブブレーキが新設されている。
    武装は12.7mm機銃×6門、227kg爆弾×2発。

  • P-51A:
    高高度性能の向上したアリソンV-1710-81エンジン(離昇1,200hp)搭載型。
    武装は12.7mm機銃×4門、227kg爆弾×2発。

    • F-6B:
      A型の偵察機型。

  • P-51B(NA-102):
    最初のマーリンエンジン搭載量産型。
    エンジンはV-1650-7(離昇1,490hp)を搭載。
    武装は12.7mm機銃×4門。

  • P-51B(NA-104):
    NA-102の主翼に454kg爆弾が搭載可能な爆弾架を取り付けたモデル。
    イングルウッド工場で生産され、主にボマーエスコート(爆撃機護衛任務)に使用された。

  • P-51C:
    NA-102と同様の機体。ダラス新工場にて生産された。

    • F-6C:
      B/C型の偵察機型。

  • P-51D:
    B/C型で判明した問題点を解消した本格量産型。
    武装は12.7mm機銃×4〜6門。
    後部胴体タンクの他、バブルキャノピーが標準装備となり、横安定性確保のためのドーサルフィン?もD-10以降の機体に装備された。
    また、後期の機体には後方警戒装置が装備された。

    • F-6D:
      D型の偵察機型。

  • XP-51F:
    V-1650-3エンジン搭載の軽量化型原型。試作のみ。

  • XP-51G:
    マーリン14SMエンジン(離昇1,910hp)搭載の軽量化型原型。試作のみ。

  • P-51H:
    機体重量及び空気抵抗の軽減型。
    エンジンはマーリンV-1650-9(離昇2,000hp)を搭載。

  • XP-51J:
    V-1710-119エンジン(離昇1,720hp)搭載の軽量化型原型。試作のみ。

  • P-51K:
    P-51Dに似るがアエロプロダクツ社製プロペラを装備したモデル。

    • F-6K:
      K型の偵察機型。

  • P-51M:
    D型の機体にV-1650-9Aエンジンを搭載したモデル。量産されず。

  • P-51L:
    水噴射付きV-1650-11エンジン(離昇2,270hp)搭載の出力強化型。計画のみ。

  • P-82(F-82)「ツイン・ムスタング」:
    長距離双発戦闘機。

    • XP-82:
      試作機。エンジンはV-1650-23と-25(離昇1,680hp)を搭載で、左右のプロペラで回転方向が違う。

    • XP-82A:
      改良型試作機。エンジンはV-1710-119(離昇1,500hp)を搭載で、左右のプロペラ回転方向が同一。

    • P-82B:
      長距離戦闘機で、XP-82原型の初期量産型。

    • P-82C:
      P-82B原型の試作夜間戦闘機。レーダーを搭載。

    • P-82D:
      P-82B原型の試作夜間戦闘機。C型とは異なるレーダーを装備。

    • P-82E:
      長距離戦闘機で量産型。V-1710-143と-145(離昇1,600hp)搭載 。

    • P-82F:
      夜間戦闘機で量産型。
      ジェネラルエレクトリック社製のAN/APG-28?レーダーを搭載。

    • P-82G:
      P-82E原型の夜間戦闘機で、量産型。
      ウエスタン・エレクトリック社製のSCR-720C18レーダーを搭載。

    • P-82H:
      F型/G型の寒冷地仕様。アラスカの基地に配備。

  • F-51/F-82:
    米空軍設立後に改称された名称。各モデル名はそのまま。

    イギリス空軍
  • Mustang Mk.機
    英軍向け。エンジンはV-1710-39(離昇1,150hp)を搭載。
    武装は12.7mm×4門、7.7mm×4門。

  • Mustang Mk.A:
    武装をイスパノスイザHS.404 20mm機関砲×4門に変更した英国向け第二期生産型。
    供与P-51も同名。

  • Mustang Mk.供
    供与されたP-51Aの英軍呼称。

  • Mustang Mk.掘
    供与されたP-51B/Cの英軍呼称。

  • Mustang Mk.検
    供与されたP-51Dの英軍呼称。

  • Mustang Mk.A:
    供与されたP-51Kの英軍呼称。

    戦後生産型
  • キャヴァリエ・エアクラフト マスタング:
    戦後に放出されたP-51を改修して複座の民間スポーツ機として販売したもの。
    民間型を再び軍用型とした練習機COIN機、軽戦闘機も製作され、軽戦闘機型はボリビア空軍が、COIN機はインドネシア空軍が採用した。

    • キャヴァリエ F-51D/TF-51D:
      民間型マスタングを改良した地上攻撃機型。
      9機がボリビアに供与された。

    • キャヴァリエ マスタング供
      近接航空支援/COIN機型。
      主翼構造が強化され、より多くの外部武装を搭載できるように4カ所のハードポイントが追加されている。
      エルサルバドルとインドネシア向けに製造され、エルサルバドル向けの機体は翼端燃料タンクを装備している。

    • キャヴァリエ ターボマスタング/エンフォーサー:
      マスタング兇竜‖里縫蹇璽襯后Ε蹈ぅ ダート510?ターボプロップエンジンを組み合わせた試作機。
      後にパイパー・エアクラフト社に引き取られた。

  • パイパー PA-48「エンフォーサー」:
    エンフォーサーのエンジンをライカミング YT55-L-9に変更した型。
    アメリカ空軍に売り込みが図られていたが採用されず、試作のみ。


*1 これは下請け拒否の軍側が出した条件であった。
*2 BとCは生産工場によって分けられる。
*3 搭載エンジンはマーリンエンジンそのものではなく、パッカード社製のライセンス生産型エンジン。
*4 映画「トップガン」「トップガン マーベリック」で主役を演じた俳優のトム・クルーズ氏もD型を保有している。
*5 War emergency power:戦時緊急出力

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