Last-modified: 2022-11-22 (火) 08:07:21 (10d)

【P-39】(ぴーさーてぃないん)

Bell P-39 Airacobra(エアラコブラ)*1.

ベル・エアクラフトが開発し、第二次世界大戦中のアメリカ陸軍航空隊、ソ連空軍などで運用された単発レシプロ戦闘機。

1936年の高高度迎撃機計画に基づいて制作された「XP-39」試作機は1939年4月に初飛行した。
本機には操縦席の横開きドア、重心を安定、視界も確保を目的に胴体中央に搭載されたエンジン、軸内装備の37mm機関砲、前輪など、奇抜な設計が多く取り入れられていながらも小型の、革新的な機体であった。
エンジンはターボチャージャー付きのアリソン「V-1710-17(E2)」液冷エンジンで、優れた高高度性能を発揮、飛行性能全般も良好であったため「P-39」として米陸軍航空隊に採用された。

しかし、量産段階に至る前段階からエンジンは高空での出力に劣るスーパーチャージャー付きのものに変更されることとなり、高高度性能は著しく低下した。
また、生産途中で防弾装備の増設、武装強化などで重量が増加したため、試作機時代の飛行性能は失われた。
さらに、運用中の事故から全長の短いコンパクトな機体は操縦時のヨー方向の安定性を欠いていると判明した。

P-39は太平洋戦争中、主に南太平洋で運用され、特にガダルカナル島のヘンダーソン飛行場「カクタス空軍*2」では主力戦闘機のひとつとして零式艦上戦闘機一式陸上攻撃機と交戦した。
日本軍のパイロットからは、機首の尖った形状を比喩して「カツオブシ」と呼ばれた。
軽量、運動性に優れる零戦に対して比較的鈍重なP-39は苦戦を強いられ、多くが撃墜されながらも、充実した防弾装備から被撃墜後も一命を取り留めたパイロットは少なくなかった。

P-39やその派生型であるP-400の飛行性能は相対する敵機にほとんどの点で劣り、前線のパイロットにとっても期待はずれなものであった。
そして、P-400についてこのようなジョークが生まれた。
「なぜP-400なんて名前なんだい?」
「ケツにゼロが喰いついたP-40だからさ!」

一方、レンド・リース政策に基づいて1942年5月からソ連軍に送られ、同空軍で運用された機体は現地で高評価を受けた。

第二次世界大戦における東部戦線、通称「独ソ戦」開戦時にドイツ軍による奇襲を受けて大きな損害を出し、未だ戦力を十分に回復できないソ連空軍にとって数、質を伴って届いたP-39は重要な航空戦力であった。
そして、本機にはソ連のパイロットにとって好都合な点がいくつもあった。

基本的な武装形態である37mm機関砲の軸内装備は敵機に肉薄、狙いを定めて一斉射する彼らの基本戦法に合致しており、飛行中の視界もエンジン位置の関係で良好であった。
また、小型な機体はソ連の戦闘機と似ていながらそれらより頑丈、防弾装備も十分なものであった。
さらに、高高度性能の低いP-39にとっても、低高度戦闘を主体とした独ソ戦における航空戦は最高の戦闘条件であった。
結果、本機に搭乗したエースパイロットがソ連で多数誕生した。

その後、ソビエト空軍には多くの国産新型機が配備され、P-39は性能的に旧式化した。
それでも本機に搭乗し続けたパイロットは多く、東部戦線の終結まで運用は継続された。

P-39を気に入ったあるソ連空軍パイロットは、本機を「ベルリンまで乗り続ける」と宣言したという。

最終的に9,588機が生産され、うち4,733機はソ連で運用された。
また、本機の発展型として、P-63が存在する。

戦後の1951年、イタリアでの運用終了を以って本機は完全に退役した。

スペックデータ

型式XP-39YP-39
乗員1名
全長8.74m9.07m
全高3.35m3.61m
全幅10.92m10.36m
翼面積19.8719.79
空虚重量2,055kg2,287kg
全備重量2,646kg3,175kg
エンジンアリソン V-1710-17(E2)
ターボチャージャー付き液冷V型12気筒×1基
アリソン V-1710-37(E5)
スーパーチャージャー付き液冷V型12気筒×1基
出力1,150hp/858kW(高度7,619m)1,090hp/813kW(高度4,054m)
プロペラ3翅定速プロペラ
最高速度628km/h(高度6,096m)592km/h(高度4,145m)
上昇性能-4,572mまで4分36秒(16.6m/s)
実用上昇限度9,753m10,150m
航続距離628km-
翼面荷重133kg/160kg/
馬力荷重
(通常出力)
324W/kg256W/kg
武装なし軸内:M4 37mm機関砲×1門
胴体:ブローニングM2 12.7mm機銃×2挺
胴体:ブローニングM1919 7.62mm機銃×2挺
装弾数なし37mm機関砲:15発
12.7mm機銃:各200発
7.62mm機銃:各500発
追加武装なし


型式P-39CP-39DP-39N
乗員1名
全長9.19m
全高3.61m3.78m
全幅10.36m
翼面積19.79
空虚重量2,300kg2,477kg2,566kg
全備重量3,209kg3,402kg3,347kg
最大離陸重量3,301kg3,720kg3,765kg
エンジンアリソン V-1710-35(E4)
液冷V型12気筒×1基
アリソン V-1710-85(E19)×1基
出力1,150hp/858kW(高度3,657m)
1,490hp/1,111kW(高度1,311m、WEP*3時)
1,200hp/895kW(海面高度)
1,420hp/1,059kW
(高度2,743m、WEP時)
プロペラ3翅定速プロペラ
最高速度610km/h(高度4,907m)592km/h(高度3,658m)642km/h(高度2,956m)
上昇性能3,048mまで2分42秒
(18.8m/s)
3,048mまで3分41秒
(13.8m/s)
4,571mまで3分49秒
(20m/s)
実用上昇限度10,119m9,784m11,665m
航続距離1,111km(最大)966km/1,770km(最大)483km/1,569km(最大)
翼面荷重162kg/173kg/169kg/
馬力荷重
(通常出力)
267W/kg252W/kg267W/kg
武装軸内:M4 37mm機関砲×1門
胴体:ブローニングM2
12.7mm機銃×2挺
胴体:ブローニングM1919
7.62mm機銃×2挺
軸内:M4 37mm機関砲×1門
胴体:ブローニングM2 12.7mm機銃×2挺
翼内:ブローニングM1919 7.62mm機銃×4挺
装弾数37mm機関砲:15発
12.7mm機銃:各200発
7.62mm機銃:各500発
37mm機関砲:30発
12.7mm機銃:各200発
7.62mm機銃:各500発
追加武装胴体:114kg/227kg爆弾×1発胴体:114kg/227kg爆弾×1発
翼下:114kg/227kg爆弾×2発


型式P-39Q
乗員1名
全長9.19m
全高3.78m
翼幅10.36m
翼面積19.79
空虚重量2,425kg
全備重量3,347kg
最大離陸重量3,800kg
エンジンアリソン V-1710-85(E19)
液冷V型12気筒×1基
出力1,200hp/895kW(海面高度)
1,420hp/1,059kW(高度2,743m、WEP時)
プロペラ3翅定速プロペラ
最高速度620km/h(高度3,353m)
失速速度153km/h(パワーオフ、フラップギアダウン)
急降下制限速度845km/h
上昇性能高度4,572mまで4分12秒(18.1m/s)
上昇限度10,700m
航続距離845km(機体内燃料のみ)
翼面荷重169kg/
馬力荷重
(通常出力)
267W/kg
武装軸内:M4 37mm機関砲×1門
胴体:ブローニングM2 12.7mm機銃×2挺
翼下:ブローニングM2 12.7mm機銃×2挺
装弾数37mm機関砲:30発
胴体12.7mm機銃:各200発
翼下12.7mm機銃:各300発
追加武装胴体:114kg/227kg爆弾×1発
翼下:114kg/227kg爆弾×2発


バリエーション

  • XP-39(1機):
    プロトタイプ。非武装。社内呼称はベル モデル11。
    アリソンV-1710-17(E2)(1,150hp(860kW))エンジンGE製B-5ターボチャージャーを搭載。
    後にXP-39Bに改修された。

  • XP-39B(1機):
    XP-39を改修した機体。
    キャノピーとホイールドアの形状変更やオイルクーラー/エンジン冷却ラジエーターのインテーク位置の変更、胴体を3.3cm延長し翼幅を5.6cm減少させた。
    1段1速のスーパーチャージャー付きアリソンV-1710-37(E5)(離昇1,090hp(813kW))エンジンを搭載。

  • YP-39(13機):
    実用試験機型。社内呼称はベル モデル12。
    アリソンV-1710-37(E5)(離昇1,090hp(810kW))エンジンを搭載し、XP-39Bより幅が広い垂直尾翼を持つ。

  • YP-39A(1機予定):
    アリソンV-1710-31エンジンを搭載予定だった型。通常のYP-39として引き渡された。

  • P-39C(20機(発注80機(残りはD型として完成))):
    量産型。社内呼称はベル モデル13。米陸軍ではP-45と呼ばれた。
    アリソンV-1710-35(離昇1,150hp(858kW))エンジンを除いて以外はYP-39と同一。
    機首に37mm機関砲1門、胴体に50口径(12.7mm)機銃2挺、30口径(7.62mm)機銃2挺の機銃を装備。
    装甲と自己封鎖式燃料タンクを備えていない。

  • P-39D(429機):
    C型をベースに装甲と自己封鎖式燃料タンクを備えた型。社内呼称はベル モデル15。
    胴体の30口径機銃を廃し、翼内30口径機銃×4挺とした。

    • P-39D-1(336機):
      レンドリース向け生産型。社内呼称はベル モデル14A。
      37mm機関砲の代わりにM1 20mm機関砲を装備している。

    • P-39D-2(158機):
      レンドリース向け生産型。社内呼称はベル モデル14A-1。
      20mm機関砲を装備し、エンジンはアリソンV-1710-63(E6)(離昇1,325hp(988kW))を搭載する。

    • P-39D-3(26機):
      P-39D-1を写真偵察用に改修した型。
      K-24とK-25カメラを後部胴体に搭載し、オイルクーラーに追加装甲を施した。

    • P-39D-4(11機):
      P-39D-2にP-39D-3と同様の改修を行った型。

  • XP-39E(3機):
    P-39Dをベースにした地上・飛行試験型。社内呼称はベル モデル23。
    様々な翼や垂直尾翼のテストに使用された。
    胴体は21インチ(530mm)延長されている。
    P-63の開発に大きな影響を与えた。

  • P-39F(229機):
    アエロプロダクト社製3枚翅定速プロペラを搭載した型。
    社内呼称はベル モデル15B。

    • P-39F-2(27機):
      F型の対地攻撃・戦術偵察型。

  • P-39G(1,800機発注):
    P-39D-2に別のプロペラを搭載する予定だった型。社内呼称はベル モデル26。
    後にキャンセルされ、発注された機体はP-39K、L、M、Nとして納入された。

  • P-39J(25機):
    F型のエンジンを自動ブーストコントロール付きのアリソンV-1710-59(離昇1,100hp(820kW))に換装した型。
    社内呼称はベル モデル15B。

  • P-39K
    • P-39K-1(210機):
      アエロプロダクツ社製プロペラを装備し、アリソンV-1710-63(E6)(離昇1,325hp(988kW))エンジンを搭載した型。
      社内呼称はベル モデル26A。

    • P-39K-2(6機):
      P-39K-1の地上攻撃・偵察型。

    • P-39K-5(1機):
      V-1710-85(E19)エンジンを搭載する型。
      P-39Nのプロトタイプとして使用された。

  • P-39L
    • P-39L-1(250機):
      P-39Kに似た機体にカーチス・エレクトリック社製プロペラを装備し、総重量を増加させた型。
      社内呼称はベル モデル25B。

    • P-39L-2(11機):
      P-39L-1の地上攻撃・偵察型。

  • P-39M
    • P-39M-1(240機):
      エアロプロダクツ社製プロペラ、低高度性能を犠牲にして高高度性能を改善したアリソンV-1710-67(E8)(離昇1,150hp(890kW))エンジンを搭載した改良型。
      社内呼称はベル モデル26D。
      一部の機体はアリソンV-1710-83(E18)エンジンを搭載して納入された。

  • P-39N(500機):
    元々はP-39Gとして発注されていた型。社内呼称はベル モデル26N。
    エンジンはアリソンV-1710-85(E19)(離昇1,200hp(895kW))、プロペラはアエロプロダクツ社製プロペラを搭載するが減速比が異なる。
    167機目からはプロペラ直径が3.53cmに拡大され、内部燃料が330Lに減少した。

    • P-39N-1(900機):
      機首機関砲発射時の重心を調整するために内部を変更した型。

    • P-39N-2(128機):
      P-39N-1の写真偵察型。
      腹部装甲と後部胴体のカメラを追加した。

    • P-39N-3B(35機):
      P-39Nの写真偵察型。
      腹部装甲と後部胴体のカメラを追加した。

    • P-39N-5(695機):
      装甲を105kgから88kgに減少させ、パイロット後方の防弾ガラスを装甲板に変更、SCR-695無線機を搭載し、新たに酸素システムを追加した型。

    • P-39N-6(84機):
      P-39N-5の写真偵察型。
      腹部装甲と後部胴体のカメラを追加した。

  • P-39Q(1機):
    最終生産型。

    • P-39Q-1(150機):
      翼内7.62mm機銃を廃止、両翼下のポッドに12.7mm機銃と弾薬各300発を搭載、装甲を強化した型。社内呼称はベル モデル26Q。

    • P-39Q-2(5機):
      P-39Q-1の写真偵察型。
      機体後部にK-24、K-25カメラを搭載する。

    • P-39Q-5(950機):
      装甲を薄くして燃料搭載量を増加させ、A-1型爆撃照準用アダプターを追加した型。
  • TP-39Q-5(1機):
    複座練習機型。非武装。
    尾翼が拡大され、浅い腹部フィンが追加されている。

  • P-39Q-6(148機):
    P-39Q-5の写真偵察型。
    機体後部にK-24、K-25カメラを搭載する。

  • P-39Q-10(705機):
    装甲を強化し、燃料搭載量を増加させた型。
    油圧系統への防寒対策、自動ブースト制御やエンジンのラバーマウントの追加が施されている。

  • P-39Q-11(8機):
    P-39Q-10の写真偵察型。
    機体後部にK-24、K-25カメラを搭載する。

  • P-39Q-15(1,000機):
    機体各部隔壁の強化やバッテリーソノレイドの位置変更などを行い、酸素システムを4本から2本に削減した型。

  • P-39Q-20(1,000機):
    マイナーチェンジ型。
    翼下の50口径機関銃ポッドが省略されることもあった。

  • P-39Q-21(109機):
    P-39Q-20にエアロプロダクツ社製4枚翅プロペラを装着した型。

  • P-39Q-22(12機):
    P-39Q-20の複座練習機型。

  • P-39Q-25(700機):
    P-39Q-20に似るが、後部胴体と水平安定板の構造を強化した型。

  • P-39Q-30(400機):
    3枚翅のプロペラに戻した型。

  • ZF-39:
    1948年6月に再指定された型。

  • P-45:
    P-39Cまたはベル モデル13の初期呼称。

  • XFL-1「エアラボニータ」:
    米海軍向け艦上戦闘機型。試作のみ。
    キャノピーの変更や主翼の改良、尾輪式の着陸脚、着艦フックの装備が施されていた。

  • XTDL-1:
    ターゲットドローンとして使用されたP-39Qのアメリカ海軍での呼称。

  • F2L-1K:
    XDTL-1が改称した際の呼称。

  • P-400(128機):
    エアラコブラAをアメリカ陸軍が引き取ったもの。

  • エアラコブラ機3機):
    P-39Cのイギリス空軍での呼称。

  • エアラコブラA(675機):
    イギリス空軍向け。社内呼称はベル モデル14。
    30口径機銃をイギリス仕様の303口径のものに換装。

  • P-63「キングコブラ」(3,303機):
    大きな改良の加えられた発展型。詳しくは項を参照。

*1 空飛ぶコブラの意。
*2 Cactus Air Force:「サボテン空軍」の意で、進撃する日本軍に痛撃を与えるため、海軍海兵隊の航空戦力を結集したもの。
*3 War emergency power:戦時緊急出力。

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