Last-modified: 2017-03-04 (土) 10:49:09 (115d)

【P-3】(ぴーすりー)

Lockheed P-3"Orion(オライオン)".

旧西側陣営を代表する陸上対潜哨戒機で、世界11ヵ国の第一線に配備されている。
本機はP2V「ネプチューン」の後継として、当時ロッキード社が製作していた民間向けターボプロップ旅客機L-188「エレクトラ」をベースとして開発され、1959年11月25日、原型機YP3V-1(後にYP-3Aと改名)が初飛行を行った。

旅客機がベースとなっていることもあり、前任のP2Vと較べて居住性や搭載量などが大きく改善されている。
ただし、A・B型は対潜装備については従来のものと変わらないため、戦闘能力自体はさほど向上していない。
4発機ではあるが、滞空時間を重視する任務の性格上、外側2基のエンジンを停止した状態でも飛行することが出来る*1

現在の主力はC型で、このモデルは対潜装備を一新、A-NEWと呼ばれるシステムを導入した。
これはレーダーソナー、音響、磁気、気象など各種センサーの情報や航法、兵装、機体情報などをデジタルコンピューターにより総合的に処理するものである。
このA-NEWの導入によりC型は飛躍的に能力が向上した。

このC型にも順次改良が加えられており、以下のようなバージョンがある。

  • コンピューターメモリーと処理能力を向上したアップデートI。
  • 赤外線探知システム、ソノブイ照合システム、AGM-84「ハープーン」の運用能力を追加したアップデートII。
  • 航法・通信能力を強化したアップデートII.5。
  • ソノブイの音響収集能力を3倍に強化、UYS-1「プロテュース」音響信号処理システム*2を導入したアップデートIII(前期型はIIIR)

などがある。

また、対水上戦改良プログラム(AIP)が実施された機体には逆合成開口レーダーGPSなどアビオニクスがより強化され、AGM-65AGM-84E「SLAM」などの運用能力が追加されている。
更にシステムを強化したアップデートIV、P-3Hや全面改修型であるP-7A?なども計画されていたが予算難、開発コストの問題によりキャンセルされた*3
この他、本機をベースとした派生型も多数製作されている。

関連:潜水艦 L-188

スペックデータ

乗員10名
パイロット1〜2名、機上整備員(FE)、TACCO、航法・通信員(NAV/COM)、
SS-1、SS-2(ソナー員、機上対潜音響員)、SS-3(レーダー員、機上対潜非音響員)、
機上電子整備員(IFT)、機上武器整備員(ORD))
全長35.61m
全高10.27m
全幅30.37m
主翼面積120.77
自重27,890kg
全備重量61,240kg
最大搭載重量9,070kg
エンジンアリソン T56-A-14ターボプロップ×4基(出力4,910hp)
速度
(最大/哨戒時)
395ノット(730km/h)/335ノット(620km/h)
上昇率594m/min
実用上昇限度8,630m
航続距離8,950km
兵装Mk.46対潜魚雷×8発
AGM-84「ハープーン」×8発
150kg対潜爆弾
音響警告用水中発音弾
AGM-65「マーベリック」
海上自衛隊機のみ:ASM-1C97式短魚雷
主な装備UHF/VHF無線機(国際マリンバンドも含む)
HF無線機(伝搬距離約1,200海里
暗号通信装置
戦術データリンク(リンク11
衛星通信装置
AN/APS-115?捜索用レーダー(最大捜索距離約200km)
ESM逆探知装置
赤外線暗視装置
AN/APS-137逆合成開口レーダー
ソノブイ投射機(ソノブイ探知距離 約30nm(CZ捜索時)、直接伝搬域探知時約3,000m)
AN/UYS-1ソノブイ解析システム
AQS-81磁気探知機(探知範囲約500〜1,000m)
ミサイル防御装置


派生型(カッコ内は生産・改修機数)

  • A型
    • YP3V-1(YP-3A):
      原型機。

    • P-3A(157機):
      初期生産型。
      現在では退役し、法執行機関や民間へ払い下げられるか試験機に改造されている。

    • TP-3A(12機):
      対潜装備を除去した練習機型。

    • UP-3A(38機):
      米海軍基地支援用の汎用輸送機型。

    • VP-3A(WP-3A×3機・P-3A×2機):
      VIP輸送機型。

    • P-3AM:
      A型の近代化改修型。
      グラスコックピットの導入などを行った後、ブラジル空軍に引き渡された。

    • P-3ACH:
      チリ海軍向けA型の近代化改修型。

    • P-3A「ブラック・オライオン」(3機):
      CIA用の特殊偵察機。
      主に沖縄・嘉手納基地から中国、ビルマ、チベット、ラオス、ベトナム方面への偵察に使用された。(3機とも、のちにEP-3(試作機)に改造)

  • B型
    • P-3B(144機):
      A型のエンジン出力強化型。後にP-3C相当に改造された。

    • P-3K(5機):
      B型のニュージーランド空軍向け改修型。

    • P-3CK:
      B型の韓国海軍向け改修型。
      C型と並行して運用されている。

    • AP-3:
      オーストラリア空軍向け。P-3B相当。

      • TAP-3:
        オーストラリア空軍向け訓練・輸送機型。

    • P-3W:
      オーストラリア空軍向けアップデート2.5の機体。

    • P-3P(6機):
      ポルトガル向けの機体。
      旧オーストラリア空軍向けP-3BをUpdate II相当に向上させたもの。

  • C型
    • P-3C(118機):
      対潜水艦戦機材を更新した型。
      デジタルコンピュータを搭載し、処理能力を高めた。
      • Update I(31機):
        コンピューターの処理能力を強化した型。
      • Update II(44機):
        赤外線探知システムを搭載し、ハープーン空対艦ミサイルの運用能力を付加した型。
      • Update II.5(37機。海上自衛隊機は69機):
        航法・通信能力を強化した型。海上自衛隊の機体もこのタイプに準じている。
      • Update III(32機):
        音響信号処理能力を向上させた型。
      • Update IV:
        計画のみ。
      • AIP:
        対水上艦艇監視能力を向上させた型。
      • ARTR(74機予定):
        P-8A「ポセイドン」との技術ギャップを埋めるために開発された型。
        ソノブイ信号の受信・解析能力を10倍に増加させ、新型コンピューターやC4Iシステムリンク16を装備する。

    • P-3F(6機):
      帝政期のイラン空軍向けの機体。
      C型にP-3A/B相当の電子機器を搭載し、空中給油機能を追加装備している。

    • P-3T:
      タイ海軍向けの機体。

      • UP-3T:
        タイ海軍向け汎用輸送機型。

  • 電子戦機
    • EP-3A(7機):
      電子偵察機型の試作機。

    • EP-3B:
      電子戦訓練機。後にEP-3Eに改造。

    • P-3N(2機):
      ノルウェー空軍向け。B型改修。

    • P-3AEW&C「センチネル」:
      早期警戒機型。
      B型の余剰機にE-2「ホークアイ」と同じAN/APS-125レーダーと電子機材を搭載した。
      アメリカ合衆国連邦関税局が麻薬密輸機取締り用に使用している。

    • EP-3C:
      EP-3AをC型相当に改修した電子戦機型。

      • EP-3E「アリエス(Aries)」(12機):
        電子戦訓練機型。

      • EP-3E「アリエスII(Aries II)」(12機):
        SIGINT機型。
        2001年に海南島近海でJ-8IIと衝突(海南島事件?)した機体はこのタイプ。

      • EP-3J(2機):
        アメリカ海軍向けの電子戦訓練支援機型。

  • 試験機
    • RP-3A/B/C(2機):
      海洋科学開発飛行隊(Oceanographic Development Squadron)*4向け。

      • RP-3D EI COYOTE(1機):
        データ収集計画「Project Seascan」用に改造された能力試験機。
        1973年にはアメリカ海軍初の砲塔型装甲艦である「モニター」の残骸を発見した。

      • RP-3D Roadrunner(1機):
        MAD装置の最適化データ収集試験「Project Magnet」のために改造された能力試験機。
        試験終了後はデビスモンサン空軍基地でモスボールされている。

    • NP-3A/B/C(3機):
      海軍研究所 (US Naval Research Laboratory) 向け試験機。
      テレメトリーシステム (EATS) や気象観測 (BAMEX) の研究などに利用。
      研究終了後は海軍テストパイロット学校の訓練機に転用された後、モスボールされた。

  • カナダ空軍
    • CP-140「オーロラ」(18機):
      カナダ軍向けにS-3「バイキング」のものに類似する装備を追加搭載した海洋監視任務型。

    • CP-140A「アークトゥルス」(3機):
      飛行訓練及び海洋監視専用型。

  • 海上自衛隊向け(川崎重工業製)
    • EP-3(5機):
      海上自衛隊向けELINT電子戦機
      C型ベースで、胴体前部下面にバルジが増設されている。
      第31航空群第81航空隊(岩国基地)に配備(コールサインは"VIOLET")。

    • UP-3C(1機):
      海上自衛隊の装備品評価試験機。第51航空隊(厚木基地)に配備。

    • UP-3D(3機):
      海上自衛隊の電子戦訓練機。標的曳航も可能。
      第31航空群第91航空隊(岩国基地)に配備(コールサインは"DELPHI")。

    • OP-3C(4機):
      海上自衛隊の遠距離(広域)画像情報収集機
      SLAR、側方画像監視レーダーまたはLOROP・長距離監視センサーを装備。
      第31航空群第81航空隊(岩国基地)に配備(コールサインはEP-3と同様)。

  • 政府機関・民間
    • WP-3A(4機):
      気象観測機型。

    • WP-3D(2機):
      米海洋大気局(NOAA(ノア))所属の大気観測機。
      ハリケーン・ハンターとして運用中。

    • P-3LRT(4機):
      米国税関・国境警備局向けの機体。赤外線探知システムを搭載。
      国境付近での麻薬密輸や不法入国の取締り用に一時使用。

    • エアロユニオンP-3C:
      民間航空会社「エアロユニオン」がアメリカ海軍からP-3Aを購入し、山火事の空中消火を行う消火活動用に改造した機体。
      通称「エア・タンカー」。

  • 計画のみ
    • P-3G「オライオンII」(P-7):
      C型の拡大改良型。開発費超過冷戦の終結により開発中止。
      主な改修点はエンジン換装、新型プロペラブレードの導入、主翼の拡大、MADブームの取り付け位置変更、ペイロードの増大、アビオニクスの更新など。

      • P-3H:
        P-7計画を簡略化した近代化改修型。
        P-3CアップデートIVの主翼及びエンジン/プロペラブレードをP-3Gのものに変更した機体。
        提案のみ。


*1 理論上はエンジン1基でも飛行は可能だが、海上自衛隊では安全性を考慮して、エンジンの停止は2基までにしている。
*2 発生音響をコンピューターでふるいにかけ目標物の正体を特定する。
*3 その後、同機の後継としてB737をベースにしたP-8「ポセイドン」がデビューした。
*4 パタクセント・リバー海軍航空隊所属。

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