Last-modified: 2022-10-01 (土) 11:05:38 (59d)

【MS.406】(えむえすよんまるろく)

Morane-Soulnier M.S.406.

フランスのモラン・ソルニエ*1第二次世界大戦前に開発した戦闘機で、同大戦中のフランス空軍の主力機であった。

フランス航空省の空軍近代化計画から1934年7月に提示された単座戦闘機の仕様に基づき、モラン・ソルニエで試作された「MS.405」は1935年8月に初飛行した。
設計は低翼単葉、引き込み脚、密閉風防等の先進的な点と、羽布張りの後部胴体等の旧来的な点が組み合わさったもので、イスパノ・スイザ製液冷エンジンを搭載、そのモーターカノン武装として20mm機関砲が装備された。
また、上下可動式のラジエーターが特徴的であったが構造が複雑となり、整備性を損ねた。

1936年7月の他社製機との比較試験により採用が決定したMS.405は1937年4月から先行量産型として少数が生産されたが、1938年にはエンジンを換装した「MS.406」が登場、主要な生産型となった。
運用中、20mm機関砲の信頼性不足や高高度での飛行性能低下、武装の凍結、エンジンの冷却不足等様々な問題が判明した。
また、周辺国の近代的戦闘機が1,000馬力級エンジンを搭載する中、本機にはそれがなかったため、性能は見劣りするものとなっていった。

それでも、第二次世界大戦序盤、ドイツによるフランス侵攻が始まると、ルフトバッフェ主力戦闘機Bf 109 Eに対して速度性能で大きく劣りながらも運動性能で勝り、空中戦で十分な戦果を挙げた。
しかし、地上戦で大敗したフランスは降伏、本機は多数が地上で破壊された。

一方、フランス侵攻以前に輸出やライセンス生産契約によって本機を入手したフィンランドやスイス等の中立国では戦中を通して運用された。

フィンランドではMS.406/410にソ連のラヴォーチキンLaGG-3?戦闘機から鹵獲したクリーモフM-105P*2エンジンを搭載、ラジエーターの固定化、モーターカノン武装の変更等、大改造を施した「メルケ*3・モラーヌ(Mörkö Morane)」もしくは「ラグ*4・モラーヌ(LaGG Morane)」が運用された。
原型から200馬力以上のエンジン出力強化がなされたことで性能は大きく向上した。

各タイプあわせての総生産数はフランス製造のもので約1,176機、スイス製造のもので約300機となる。

スペックデータ

MS.406
乗員1名
全長8.17m
全高3.25m
翼幅10.61m
翼面積16
空虚重量1,895kg
全備重量2,540kg
エンジンイスパノ・スイザ 12Y-31 液冷V型12気筒×1基
出力
(仏馬力/キロワット)
離昇830PS/610kW(2,520rpm、海面上)
760PS/567kW(定格出力2,400rpm、海面上)
公称860PS/641kW(2,400rpm、高度3,150m)
燃料消費率0.265kg/kWh
オイル消費率0.008kg/kWh
プロペラ3翅可変ピッチプロペラ(プロペラ直径:3m)
Chauvière 351M(MS.406 C1)
Ratier 1607(プロペラ直径:3.1m)(MS.406 C1)
イスパノ・スイザ 270(プロペラ直径:3.1m)(D3801)
Śmiglo WiSz? 61P(プロペラ直径:3m)(MSv Mörkö Morane)
最高速度452km/h(高度2,000m)
483km/h(高度4,000m)
490km/h(高度4,500m)
476km/h(高度6,000m)
440km/h(高度8,000m)
失速速度160km/h
135km/h(フラップ展開時)
航続距離1,100km(スロットル66%開)
戦闘行動半径720km
実用上昇限度9,400m
飛行時間2時間20分30秒(平均的な戦闘任務)
上昇性能2,000mまで2分32秒(13.16m/s)
4,000mまで5分16秒(12.66m/s)
4,500mまで6分16秒(11.97m/s)
6,000mまで9分3秒(11.05m/s)
8,000mまで14分52秒(8.97m/s)
9,000mまで21分37秒(6.94m/s)
翼面荷重159kg/
馬力荷重249W/kg
離陸/着陸滑走距離
(高度8m基準)
270m/340m
武装モーターカノン:イスパノ・スイザ HS.404/HS.9
20mm機関砲×1門(装弾数60発)
翼内:MAC 1934 7.5mm機銃×2挺(装弾数各300発)


メルケ・モラーヌ
乗員1名
全長8.17m
全高3.25m
翼幅10.61m
翼面積16
空虚重量2,210kg
全備重量2,787kg
エンジンクリーモフ M-105P 液冷V型12気筒
出力
(仏馬力/キロワット)
離昇1,100PS/809kW
最高速度510km/h(高度4,000m)
上昇性能17m/s(0〜3,000mまで)
翼面荷重174kg/
馬力荷重290W/kg
武装モーターカノン:MG 151/20 20mm機関砲×1門(装弾数150発)
もしくは ベレジンUB 12.7mm機関銃×1挺
翼内:MAC 1934 7.5mm機銃×2/4挺(装弾数各300/500発、原型の型式によって搭載数と装弾数が異なる)


主要な型式

フランス

  • モラン・ソルニエ
    • MS.405 :
      木金混合の試作機は2機製造され、一号機はイスパノ・スイザ Ygrs(出力860PS)を搭載し、二号機はイスパノ・スイザYcrs(出力900PS)を搭載、443km/hを発揮した。
      15機の生産機は第二次世界大戦時にも戦闘機として運用された。

    • MS.406 :
      主翼の軽量化、可動ラジエーターの改設計等を行った本格量産型。
      生産途中から生産途中でイスパノ・スイザ 12Y-31(出力860PS)搭載機が登場した。
      急降下での速度は730km/hに達した。

    • MS.410 :
      MS.406の運用中に判明した問題点をフィードバックした機体。
      主翼強度の向上、可動式ラジエーターを廃して固定化、翼内機銃をベルト給弾化して計4挺へ変更、機銃の凍結を防ぐ機構、エンジン排気を推力に組み込める排気管への改装など、多彩な変更点か存在する。
      最高速度は509km/h(高度4,000m)を発揮したが、ドイツの侵攻により少数生産に終わった。

    • MS.411 :
      イスパノ・スイザ 12Y-45(出力1,000PS)搭載の試作機。一機のみ生産。

    • MS.412 :
      イスパノ・スイザ 12Y-51(出力1,050PS)搭載の計画機。

    • MS.450 :
      イスパノ・スイザ 12Z(出力1,300PS)搭載の試作機。MS.410原型の一機のみ生産。

    • MS.430 :
      複座練習機。
      サルムソン9AG(出力390PS)空冷星型9気筒エンジンを搭載。

    • MS.435 :
      複座練習機。
      ノーム・ローン9K「ミストラル」(出力550PS)空冷星型9気筒エンジンを搭載。

      スイス
  • ドフルグ
    • D-3800 :
      1939年11月に完成したスイス・EKW社でのライセンス生産機。
      MS.405と同様の主翼設計ながら、搭載エンジンはMS.406のイスパノ・スイザ 12Y-31を搭載、翼内武装のMAC機銃はスイス国内で生産されるベルト給弾式のフリーガー MG 29 7.5mm機銃に換装されている。
      また、主翼下のドラム弾倉による膨らみを無くしたことで、空気抵抗が軽減、機銃の凍結問題が解決された。最高速度は443km/h。
      1944年まで残存していた機体はエンジン以外の部分がDH-3801の仕様へ改装された。
      終戦後は練習機として1954年まで使用された。

    • D-3801 :
      スイスの独自改良機体。スイス・ドルニエ社→ドフルク社で生産。
      MS.412の計画に沿ってイスパノ・スイザ 12Y-51 (出力1,060PS) を搭載しながらも、MS.411の設計を取り込み、D-3800と同様に翼内武装を国産のものに変更した。
      1941年に量産を開始し、500km/hの最高速度を発揮した。

    • D-3802 :
      MS.450の計画をスイスが独自に進行させ、サウラー YS-2(出力1,250PS)エンジンを搭載した機体。
      運用上の欠点がいくつかあったものの、1944年に試作機が初飛行し、574km/hの最高速度を発揮した。少数生産。

    • D-3803 :
      サウラー YS-3(出力1,500PS)エンジンを搭載し、風防から胴体後部の設計を大きく変更して後方視界を広げ、翼内武装をH.S.404 20mm機関砲×2門に換装、200kgまでの爆弾、ロケットの搭載を可能とした試作機。
      最高速度は630km/hを発揮したが、P-51D導入の目処がついたため開発は中止された。

      フィンランド
  • 航空機設計者アーネ・ラコモア(Aarne Lakomaa)
    • メルケ・モラーヌ/ラグ・モラーヌ :
      冬戦争の際にフランスから送られたものと、フランスを征服したドイツとの協力関係によって手に入れた46機のMS.406、11機のMS.410のうち1944年まで残存していた機体を原型として、ソ連のイスパノ・スイザ系エンジンのクリーモフM-105P(出力1,100PS)をエンジン周辺の新規設計の上に搭載、モーターカノン武装をドイツのMG 151/20? 20mm機関砲かソ連のベレージンUB? 12.7mm機関銃へ換装、MS.406原型機のラジエーター固定化、オイルクーラーを同時期に運用していたBf 109 Gのものと同一とする等、大規模な改造を施した機体。
      資料によってカタログ性能は異なるが、おおむね最高速度は500km/h台前半、実用上昇限度は12,000m周辺、上昇性能は15m/s〜25m/s程度に向上した。


*1 モラーヌ・ソルニエと読むことがある。
*2 イスパノ・スイザ系列エンジンのため互換性があった。
*3 フィンランド語で「お化け」の意。
*4 LaGG-3?と同じエンジンを搭載したことから。

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