Last-modified: 2017-01-31 (火) 10:25:56 (2434d)
【MP5】 †
ドイツのヘッケラー&コッホ社が開発した短機関銃。
部品の多くがG3自動小銃と共通で、設計思想も同社の自動小銃からの継承が多い。
短機関銃としては珍しくローラーロッキング機構によるディレイドブローバックを採用し、努めて反動軽減が図られているのが特徴。
この性質のため同時代の短機関銃としては群を抜いて高い命中精度を持ち、セミオート射撃における有効射程は同口径の拳銃を凌駕する。
反面、ローラーロッキングは機構が複雑でコストが高く、整備作業が煩雑で平均故障間隔も短い。
1966年の登場当初は歩兵が常用するには高すぎるコストと保守整備工数が仇となり、用途に不適格な失敗作とみなされた。
しかし、1977年にルフトハンザ機ハイジャック事件に於いて、人質救出作戦を担ったGSG9が超人的な戦果を達成。
機内戦闘で主武装として使われたMP5は「特殊部隊のための高性能短機関銃」としての存在価値を世界に広く知らしめた。
スペックデータ †
口径 | 9mm |
全長 | 550mm/700mm(ストック展開時) |
銃身長 | 225mm |
重量 | 3.08kg |
使用弾薬 | 9mmパラベラム弾、一部モデルでは10mmオート弾/.40S&W弾 |
装弾数 | 10,15,20,30発 |
作動方式 | クローズド・ボルト撃発、ローラー遅延式ブローバック |
発射速度 | 800発/分 |
銃口初速 | 400m/s |
有効射程 | 200m |
派生型 †
9mm×19弾モデル †
- HK54:
原型モデル。ストレートタイプのマガジンを持つ。
- MP5A:
基本形。
後期モデルと異なり、射撃モードセレクターの表示が【0】【1】【A】となっている(左からセーフティ、単射、連射)。
- MP5A1:
折り畳みストック型。
弾倉の設計を変更し、湾曲形状のバナナマガジンを導入。
ロアレシーバーは側面にリブ上のモールドのある形状で、射撃モードセレクターの表示が【S】【E】【F】に変更されている。
このイニシャルはそれぞれ安全(Sicher)、単射(Einzelfeuer)、全自動射撃(unbegrenzter Feuerstoß)の意。
この種類のロアレシーバーを継承したモデルは「SEFトリガーグループ」と称される。
- MP5A2:
A1の固定ストック型。SEFトリガーグループ。
- MP5SFA2:
A2からフルオート連射機能を除去された警察機関向けモデル。
このタイプのモデルは「シングルファイアートリガーグループ」「FBIトリガーグループ」と称される。
- MP5A3:
A1の改良型。
スライドストック、銃身を「フローティング・バレル」化して命中精度を向上させた。
SEFトリガーグループのモデルだが、後期生産型はA4と同じデザインのロアフレームに変更されている(通称「ネイビートリガー」)。
- MP5SFA3:
A3のシングルファイア・トリガーグループ仕様。
- MP5A4/A5:
A2/A3のモデルチェンジ型。A5は伸縮銃床型。
3バースト機構を搭載。
- MP5N:
アメリカ海軍(Navy)向けモデル。
アメリカ海軍特殊部隊(SEALs)の発注により生産された。
3点バースト機構を廃し、MP5K PDWと同じ大型のフラッシュハイダーを装備する。
- MP5F:
A5のフランス向けモデル。
床尾板が大型化された、反動吸収性の高い新型の伸縮銃床が導入されている。
- MP5J:
MP5Fの日本警察仕様。
3点バースト機構及びB&T社製マウントベースを搭載。
大型のフラッシュハイダーを装備し、強装弾に対応する。
- MP5A1:
MP5Kシリーズ †
- MP5K:
基本モデル。
Kはドイツ語で"短い(Kurz)"の略。
ボディガードなどの隠匿所持用に、全長を可能な限り切り詰めたもの。
SEFトリガーグループ。
- MP5KA1:
照準器を単純な門星型にして極限までコンパクト化したモデル。
SEFトリガーグループ。
- MP5KA4:
A4を基体に点射機構を追加した4モードのセレクターを装備した新型ロアフレームにしたモデル。
- MP5KA5:
KA4の簡易照準器モデル。KA1のA4準拠型。
- MP5KA1:
- MP5K PDW:
アメリカ軍の要請で開発されたPDW用で、大型のフラッシュハイダーと折り畳みストックを備える。
- MP5RAS:
ナイツアーマメント社との共同開発モデル。
ナイツ社のRAS(レイル・アタッチメント・システム)を搭載し、アクセサリーによる発展性を持たせた。
- MP5K コッファー*1:
擬装用アタッシュケースに収納されたMP5K。
平時の要人護衛などの用途向けに開発された。
初期は収納状態のまま発砲する「仕込み銃」だったが、非常に取り回しが悪いため不評。
後期モデルはケースから素早く取り出して撃つ仕様に変更された。
MP5SDシリーズ †
- MP5SD:
減音器を内蔵したモデル。
"SD"とは、ドイツ語でサプレッサーを意味する"Schalldämpfer"の略。
- MP5SD1:
A1のSD型。
ストックレス、MP5Kと同じスリングスイベル付底板を装着している。
- MP5SD2:
A2のSD型。
固定ストックモデル。
- MP5SD3:
A3のSD型。
折り畳みストックモデル。
- MP5SD4:
SD1のモデルチェンジ版。
A4ベースで、バーストモードが追加された新型ロアフレームを装備する。
- MP5SD5:
SD2のモデルチェンジ版。
折り畳みストック、バーストモード追加。 - MP5SD6:
SD3のモデルチェンジ版。
伸縮ストック、バーストモード追加。
HK94シリーズ †
- HK94:
アメリカ市場向けスポーターモデル。
- HK94K:
銃規制の緩い国向けに銃身長をオリジナルと同じものとしたモデル。
- MP5SF:
公的機関向け単射(Single Fire)モデル。
銃身長及び銃床形状にいくつかのバリエーションを持つ。
- SP89:
MP5Kの民間向けモデル。
10mmオート弾モデル †
- MP5/10(MP10):
10mmAuto弾を使用。
9mm弾より径が1mm、長さ3mm大きい弾薬に合わせてプラスチック製の専用マガジンを使用。
連結用の留め具が成型されているので、器具を使わずにマガジンを連結することができる。
また、G3系としては珍しくボルトストップが組み込まれている。
.40S&W弾モデル †
- MP5/40:
.40S&W弾を使用。
弾薬の径は10mmと同じだが、長さは9mm弾と同じ。それ以外の特徴はMP5/10から引き継いでいる。
サブマシンガンモデル †
他国でのライセンス生産など †
- EBO MP5:
ギリシャのヘラニック・アームズ・インダストリー(EBO)社がライセンス生産したもの。
MP5A3、MP5A4、MP5Kが製造されている。
セレクタースイッチの記号がギリシャ文字になっているのが識別点。
- トンダール9mm:
イランでライセンス生産されたもの。
パフラヴィー朝時代に王立モサルサシ造兵廠で製造が始まったが、イラン革命後に解体され、新たに設立されたD.I.Oサンガフザルサジ・インダストリーズで製造されている。
D.I.Oの識別点と、セレクタースイッチのペルシア文字が識別点。
- POF MP5:
パキスタンの国立パキスタン・オーディナンス・ファクトリーズ(POF)がライセンス生産するもの。
刻印以外の外見は、特に原型との違いは無い。
アフリカへの輸出も行っている。
- PK3:
パキスタンのPOFがMP5KにMP5A3と同じ伸縮ストックを付けたモデル。
主にPDWとして使用される。MP5KPDWよりかさばらずコンパクトになっている。
- Tihraga:
スーダンのミリタリー・インダストリー・コーポレーション(MIC)社が、イランのトンダール 9mmをライセンス生産したタイプ。
- MKEK シラーサンMP5:
トルコのマキナ・ベ・キミヤー・エンデュストリシ・クルム(MKEK)が1983年から生産を始めたMP5。
MP5A2、MP5A3、MP5Kが製造されている。MKEKのロゴが刻印されているのが識別点。
- NR-08:
中国の中国北方工業公司(NORINCO)がコピーしたタイプ。