【MIM-14】 †
MIM-14
冷戦時代にアメリカが開発・配備した大型地対空ミサイル。
アメリカ陸軍で、本土及び最前線の戦略拠点の防空に利用されていた長射程高射砲の代替として登場したMIM-3「ナイキ・エイジャックス」の後継としてデビューした。
当初の制式名はSAM-N-25(後にM6)と呼ばれていた。
アメリカの他、NATO諸国(旧西ドイツ・イタリア・ベルギー・ギリシャ)や日本・中華民国(台湾)・トルコ・韓国・ノルウェーにも輸出された。
(日本では「地対空誘導弾ナイキJ」として航空自衛隊が運用*1していた)
主として中〜高高度域において戦略爆撃機編隊や弾道ミサイルを迎撃するためのミサイルで、弾体は弾頭部とブースター部の2段構成となっており、それぞれ固体燃料ロケットエンジンで飛翔する。
ブースターは4基で、ブースターが1基だったナイキ・エイジャックスに比べて射程距離が大幅に伸ばされている。
弾頭には、T-45破片効果弾頭(通常爆薬)またはW31核弾頭が用いられていた*2。
開発国のアメリカでは1979年まで運用され続け、それ以外の配備国でも、1980〜1990年代まで都市・戦略拠点などの周辺空域の航空優勢を維持する長距離防空兵器として運用されていたが、後継の「パトリオット」ミサイルの登場や冷戦の終結に伴い、現在はほとんどが退役している*3。
その後、退役した弾体の一部が観測ロケットに改造された他、韓国では在韓米軍から譲渡された一部の弾体が地対地ミサイルに改修されNHK*4-1「
関連:SA-2 LIM-49? 長沼ナイキ事件
カタログスペック(MIM-14B) †
全長 | 12.52m |
本体長 | 8.18m |
ブースター長 | 4.34m |
翼幅 | 1.88m/3.5m(ブースター部) |
直径 | 53cm/80cm(ブースター部) |
本体重量 | 2,505kg |
ブースター重量 | 2,345kg |
発射重量 | 4,850kg |
推進方式 | 固体燃料ロケットモーター |
エンジン | ハーキュリーズ M42 固体燃料ロケットモーター(M5E1 ナイキ・ブースター×4基) チオコール M30固体燃料ロケットモーター×1(本体) |
推力 | 計978kN(220,000lbf)(ブースター部) 44.4kN(10,000lbf)(本体) |
最大速度 | M3.65 |
最大到達高度 | 45,700m |
射程 | 140km |
誘導方式 | セミアクティブレーダー誘導 |
弾頭 | T-45通常爆薬(500kg) M17 爆風破片効果弾頭(HBX-6,272kg) W31核弾頭(核出力2ktまたは40kt) |
*1 導入当時「対空砲火の延長」とする陸上自衛隊と「無人戦闘機」と主張する空自との管轄争いが展開されていたが、最終的には防衛庁長官の裁定により空自が運用することになった。
*2 日本ではこの「核弾頭装備可能」という部分を強調した革新政党と傘下の市民団体による猛反発が起き、最高裁判所まで争う行政訴訟に発展したところも現れた(長沼ナイキ事件の項も参照)。
なお、日本向けのナイキJには核弾頭運用機能は実装されていない。
*3 日本の「ナイキJ」は1994年に退役。
*4 Nike Hercules Koreaの略。
*5 Army Tactical Missile System:陸軍戦術ミサイルシステム。