Last-modified: 2017-07-17 (月) 13:02:27 (70d)

【MD-11】(えむでぃーいれぶん)

McDonnell? Douglas/Boeing MD-11.

1980〜1990年代、アメリカのマクダネル・ダグラス社が開発・生産した三発ワイドボディ旅客機
DC-10を基に、各部を近代化した形で開発された。

マクダネル・ダグラスは1997年にボーイングに吸収合併されたため*1、同社が開発した最後の大型旅客機となった。

また、2017年現在「最後の三発エンジン大型旅客機」ともなっている。

開発の経緯

1970年代、マクダネル・ダグラスDC-10ロッキードL-1011との販売競争を繰り広げていた。
この競争は最終的にロッキード側の自滅に近い形*2で決着したが、勝利したDC-10の前途も明るくなかった*3

DC-10の開発当初に求められていたコンセプトは「超音速旅客機の補完」であった。
しかし、実際に完成した超音速旅客機コンコルドは航空技術史上でも最大級の欠陥機であり、登場時点ですでに商業的に破綻*4
また、中東戦争を契機に燃料価格が高騰し、より低燃費な機体が求められるようになった。

時を同じく、エアバスA300-600A310ボーイングB767などの双発機が登場。
いずれもグラスコックピット2マンクルーを実現した次世代双発機であった。
この時点で、三発のエンジンと3マンクルーを備えるDC-10の設計は非効率とみなされ陳腐化。
このため、DC-10をベースにグラスコックピット2マンクルーなどを取り入れて近代化されたのが本機である。

セールス

マクダネル・ダグラスでは本機を「経済的効率」を重視して売り出した。
曰く「大型四発機と同じペイロードで、安い経費で運行できる*5
曰く「大型双発機に比べて洋上飛行の制約が少ない機体である」

しかし実際の所、一座席あたりのコストは「ライバル」とされたB747-400を凌駕し得るほどのものではなかった*6
また、諸事情から開発が遅れたため、その期間に新型機でもさらなる改善・改修が行われ、洋上飛行の制約も緩和されていった*7
このように、着実に進歩と実績を積み重ねた双発機に対し、本機は明らかに立ち位置を見失っていた。

加えて、空気抵抗の減少のために重心を後方にずらす設計を採用したため操縦が難しくなり、エビエーターにも不評を買った*8

セールスは不調なまま推移し、業績不振のマクダネル・ダグラスはボーイングに吸収合併されるに至る。
ボーイングは本機を貨物機として生産し続ける事を検討したが、継続に値する収益性はないと判断。
2001年2月、経営リソースは競合機のB777に振り分けられ、生産中止が決定された。
合計生産機数は200機。これは旅客機としては特筆に値する少数であった。

2017年現在、旅客型としては全機退役済みで、現存する機体は全て貨物機として運用されている。

日本では日本航空が国際線専用機材として10機を導入、「J Bird(ジェイバード)」として鳥の名前に由来する愛称を与えて用いていたが、わずか10年で退役*9
これはDC-10もより早い退役であり、また、JALの歴代フリートでも、コンベア880に次ぐ短命機でもあった。

スペックデータ

タイプMD-11MD-11FMD-11CMD-11ER
乗員2名(機長副機長
乗客410名(1クラス)
323名(2クラス)
293名(3クラス)
-290名(1クラス)
214名(2クラス)
181名(3クラス)
410名(1クラス)
323名(2クラス)
293名(3クラス)
全長61.21m
全高17.60m
翼幅51.66m
最大離陸重量273,314kg285,990kg283,700kg285,990kg
エンジンターボファン×3基(以下から選択)
P&WPW4460(出力267kN)
P&W PW4462(出力276kN)
GECF6-80C1D2F(出力274kN)
巡航速度マッハ0.87
実用上昇限度13,000m
航続距離12,633km7,242km12,392km13,408km


バリエーション

開発された仕様

  • MD-11:
    基本型。132機生産。

  • MD-11ER:
    航続距離延長型。4機生産。

  • MD-11C:
    貨客混載型。5機生産。
    機体前方を客室、機体後方を貨物室として胴体後部の側面に幅4.06m・高さ2.59mの貨物扉を設置した。
    客室と貨物室の比率は変更することが可能。

  • MD-11F:
    胴体前方の側面に幅3.56m・高さ2.59mの貨物扉を設置し、床を強化した純貨物型仕様。53機生産。
    床上貨物室の容積は440立方メートルで、カーゴパレット26枚の搭載が可能で、床下貨物室の容積は158立方メートル。

  • MD-11CF:
    旅客・貨物転換型。6機生産。
    貨物型と同様に胴体前方の側面に幅3.56m・高さ2.59mの貨物扉を設置しているが、客室窓・乗降扉もそのまま残されている。
    床上キャビン(旅客仕様なら客室、貨物仕様なら貨物室)の容積は410立方メートルと純貨物型よりやや少ない。

計画のみ

  • MD-11LR:
    長距離型。
    翼端を3.6mずつ延長した上で中央脚を4輪として、8,000海里(14,820km)の航続距離を得る計画だった。

  • MD-11(ストレッチ型):
    胴体を主翼の前後で合計34フィート(10.36m)延長する仕様。
    3クラスで最大337席、エコノミークラスを増やした2クラスであれば474席を設けることができた。

  • MD-11(パノラマキャビン仕様):
    MD-11ストレッチ仕様の前方床下貨物室を客室として使用することで、さらに旅客定員の増加を図ったモデル。
    階下席にはビジネスクラスで2列-2列の配列で66席、エコノミークラスを2列-3列の配置とすると99席が設置できる計画であった。

  • MD-11XX:
    胴体を主翼の前後で合計12フィート(3.6m)延長した上で、後退角をやや小さめにした上でアスペクト比を高める新設計の主翼を組み合わせるもの。


*1 なお、DC-9に源流を発するナローボディ機「MD-95」はボーイングに引き継がれ「B717」として生産された。
*2 元々民需向けの販売網が弱かったところに「ロッキード事件」として知られる日本政府・全日本空輸に対する贈賄事件で信用を落としてしまった。
*3 それでも軍用機空中給油機)型・KC-10の発注をアメリカ空軍から受けており、生産ラインの維持には成功していた。
*4 これは、先にソ連で完成していたTu-144も同様であった。
*5 特に「B747を投入するほどの需要がない長距離路線に最適」としていた。
*6 B747-400は400〜500席以上を収容可能だったのに対し、300席クラスとペイロードの面で明らかに見劣りしていた。
*7 ETOPSの項も参照。
*8 事実、本機は同世代の旅客機の中でも事故率の高い機体であった。
*9 退役後は全機がアメリカの「ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)」に売却されて貨物機となった。

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