Last-modified: 2020-05-19 (火) 03:39:38 (195d)

【M60(戦車)】(えむろくじゅう(せんしゃ))

M60 Patton*1.

アメリカ陸軍が1956年に開発した主力戦車
パットン戦車シリーズの最終型で、M48機動力と火力に改良を加えたモデルである。

主砲は当時の西側諸国で標準的だったロイヤル・オードナンス L7A1 105mm戦車砲のライセンス生産品。
また、副兵装としてM85 12.7mm機関銃とM73 7.62mm同軸機銃を装備。

エンジンを従来のガソリンエンジンから12気筒のターボディーゼルに変更。
これにより燃費を向上させると共に、被弾時の火災発生率を低下させている。

ソ連のT-54/55戦車に対抗すべく急遽調達されたもので、T-55に対抗しうる次期主力戦車が登場し次第に退役する予定だった。
しかし次期主力戦車製造計画「MBT-70?」が頓挫した事により、運用が長期化。
合計生産台数は約2万輌を数え、アメリカのみならず西側諸国の標準的主力戦車となった。

アメリカ陸軍からは湾岸戦争を最後に退役しているが、各種改良型が今なお世界各国で現役である。

スペックデータ

乗員4名
全長6.9m
全高3.3m
全幅3.63m
戦闘重量52.6t
懸架方式トーションバー
エンジンコンチネンタル ADVS-1790-2C 4ストロークV型12気筒ターボディーゼル
出力750hp(560kW)
登坂力60%
超堤高0.91m
超壕幅2.4m
最大速度48.2km/h(路上)
行動距離450km
装甲M60
砲塔:178mm(最大)
車体前面上部:93mm、車体前面下部:85〜143mm
車体側面:36〜74mm
車体上面前部:36mm
機関室上部:20mm
車体底面前部:19mm、車体底面後部:13mm
車体後面上部:41mm、車体後面下部:30mm

M60A1/A3:
砲塔防盾:114.3mm、砲塔前面最厚部:178mm
砲塔側面:76.2mm、砲塔後面:51mm
砲塔上面前部:45mm、砲塔上面後部:51mm
銃塔型キューポラ:25〜35mm
車体前面上部:93mm、車体前面下部:85mm〜143mm
車体側面:36〜74mm、車体上面前部:36mm
機関室上部:20mm
車体底面前部:19mm、車体底面後部:13mm
車体後面上部:41mm、車体後面下部:30mm

M60A2
砲塔:292〜127mm
車体前面上部:93mm、車体前面下部:85mm〜143mm
車体側面:36〜74mm、車体上面前部:36mm
機関室上部:20mm
車体底面前部:19mm、車体底面後部:13mm
車体後面上部:41mm、車体後面下部:30mm
兵装M68 51口径105mmライフル砲×1門(弾数63発)(M60/A1/A3)
M162 152mmガンランチャー(M60A2)
MGM-51「シレイラ」?対戦車ミサイル(M60A2)
M85 12.7mm重機関銃×1挺(弾数900発)
M73 7.62mm機関銃×1挺(弾数6,000発)


M728戦闘工兵車
乗員4名
全長8.83m
全高3.3m
全幅3.63m
重量52.2t
懸架・駆動方式トーションバー・スプリング
エンジンコンチネンタルAV1790 V型12気筒空冷ツインターボディーゼル
出力重量比?132hp/t
速度48km/h
行動距離450km
装甲13〜143mm
武装M135 165mm砲×1門(弾薬搭載数30発(粘着榴弾))
M85 12.7mm機関銃×1丁(弾薬搭載数600発)
M73 7.62mm機関銃×1丁(弾薬搭載数2,000発)


主なバリエーション

  • XM60/XM68:
    主砲を105mm砲に換装したM48の砲塔を新型の車体に搭載した試作型。

  • M60:
    M48同様の亀甲形の砲塔を持つ基本型。
    一部はM48を改修して生産された。

    • M60E1:
      M60に新設計の砲塔を搭載した試作型。M60A1として正式採用された。

  • M60A1:
    M48同様の亀甲形の砲塔から、より避弾径始に優れた形状の細鼻形状のものに変更した型。

    • M60AOS*2
      M60A1の主砲改修型。
      新型の安定装置を装備している。

    • M60A1E1:
      M60A1の車体に新型砲塔と152mmガンランチャーを搭載した試作車両。
      A1E2型を経てM60A2となった。

      • M60A1E2:
        M60A2の量産原型車。

      • M60A1E3:
        M60A1E2の車体にA1の105mm砲塔を搭載し、各種の近代化改修を施した試作型。
        M60A3として制式化した。

    • M60A1E4:
      遠隔操縦装置のテストベッド車両。無線による無人操作のテストに用いられた。

  • M60A1RISE*3
    M60A1をA3相当に近代化改修した型。主にアメリカ海兵隊が使用した。
    湾岸戦争でも爆発反応装甲を装備して使用された。

  • M60A2:
    1965年から量産されたミサイル万能論に基づくM60A1E2ベースの改修型。
    M162 152mmガンランチャーを主砲に採用するために砲塔を換装。
    MGM-51「シレイラ」対戦車ミサイルを発射する他、対人用に榴弾も発射できる。
    高額なミサイル単価・劣悪な整備性・行進間射撃ができない*4という問題から早々に前線から姿を消した。
    車体は架橋車や戦車回収車に転用された。
    現場からは先進的ではあったが、高価で運用が難しいため、皮肉を込めて「StarShip?(宇宙船)」というニックネームで呼ばれていたという。

  • M60A3:
    内部の電子機器の改装により主砲の命中精度を高め、煙幕発射装置を装着した型。
    主砲に装着された砲身被筒と、砲塔上面の大型間接照準器が特徴的。
    M60A1E3の名称で開発され、1978年に量産が開始された。
    中華民国軍(台湾)やイスラエル国防軍(イスラエル)等で使われている。

  • M60A3TTS*5
    M60A3の夜間用サイトをAN/VSG-2熱線映像装置に換装した改修型。
    これにより、白色光/赤外線サーチライトは装備されなくなった。
    現在も第1線で運用されている車両は多くがこの改修を受けている。

派生型

  • M60 AVLB*6
    M60/A1/A2の車体に折りたたみ式の橋を取り付けた架橋戦車型。

  • M60 AVLM*7
    M60の車体にMICLIC*8地雷爆破装置2基を装備した地雷処理車型。

  • M60パンサー:
    M60の車体を流用した地雷処理車型。
    危険を避けるためにリモコンによる遠隔操作で操縦出来るようになっている。

  • M728 CEV*9
    M60A1を基に製作された戦闘工兵車。
    主砲をM68 105mm戦車砲から障害物破砕用のM135 165mm砲*10に換装。
    車体前部にD7ドーザーブレードか地雷処理装置を装備可能。
    粘着榴弾30発を搭載する。

    • M728A1:
      M728の改良型。

  • XM120 ROBAT*11
    M60 AVLMの発展型として計画された戦闘工兵車型。
    M60の車体に地雷原爆破用爆索投射装置と圧踏ローラ式、もしくは鋤型の地雷原処理装置を装備し、車体後面には地雷処理済表示マーカーの設置装置を搭載した。
    無線の他、光ファイバーケーブルを用いた有線により無人状態でも行動させることが可能。
    予算の圧縮のために「戦車に地雷処理装置を搭載すればよく、専用の車両は必要としない」方向に変更されたため、試作車3両のみで量産は行われなかった。

  • E-60:
    イスラエル軍におけるM60の形式記号。
    基本的には原型のM60シリーズと同じだが、イスラエル軍の運用思想に合わせて細かな改修が施されている。

    • E-60A:
      イスラエル軍におけるM60A1の形式記号。

    • E-60B:
      イスラエル軍におけるM60A3の形式記号。

    • E-60AD:
      M60A1にM9 ドーザーブレードキットを装着したもの。

  • マガフ(Magach):
    イスラエルの独自改修型(マガフ3とマガフ5はM48ベース)。
    爆発反応装甲を装備したマガフ6と、複合素材を使用して装甲を強化したマガフ7が存在する。
    全タイプ共通で、ウルダン社製キューポラと「ブレイザー」ERAを装備する。

    • マガフ6(Magach6):
      ほぼオリジナル状態のM60。第四次中東戦争で使用された。
      後にマガフ6R、6Mに改修され、更にマガフ7に発展する。

    • マガフ6R(Magach6 Reish):
      マガフ6の改修型。
      エンジンをAVDS-1790-2AGに換装し、砲塔後部バスケットの大型化及び砲塔旋廻モーターの強化、砲身スタビライザーの更新、「ブレイザー」ERAの装備、60mm迫撃砲および機銃発煙弾発射機の追加装備などの改修が行われた。

    • マガフ6R*(Magach6 Reish Kochav):
      マガフ6RのFCSを「ナハル・オズ」に更新した型。

    • マガフ6M(Magach6 Mem):
      マガフ6R/R*の改修型。
      「ナハル・オズ」FCSの搭載、主砲砲身への放熱用サーマルジャケット装着、砲塔風向センサーが追加された。
      一部はメルカバ?型のキャタピラに換装する改修が行われている。

    • マガフ6M Tadach(Magach6 Mem Tadach):
      マガフ6MにM9 ドーザーブレードを装備した型。
      28両が改修された。

    • マガフ6A(Magach6 Alef):
      ほぼオリジナルのM60A1。第四次中東戦争で使用された。
      後に全車両が6Bに改修された。

    • マガフ6B(Magach6 Bet):
      マガフ6Aの改修型。
      M60A1RISEと同様に、エンジンをAVDS-1790-2Cに換装している。
      加えて、「ブレイザー」ERA装着、60mm迫撃砲や機銃、発煙弾発射機の追加装備、砲塔旋廻モーターの強化・砲身スタビライザー更新などが行われている。

    • マガフ6B「ガル」(Magach6 Bet Gal):
      マガフ6Bの改修型。
      FCSを「ガル」に変更した他は、マガフ6Rからマガフ6Mへの改修とほぼ同様の内容である。
      6Mと同様、一部はメルカバ型のキャタピラに換装する改修が行われている。

    • マガフ6B「ガル・バタシュ」(Magach6 Bet Gal Batash):
      マガフ系列で最後の型。マガフ7D(Magach7 Dalet)やマガフ8とも呼ばれる。
      ERAを撤去してマガフ7同様の「第4世代型」増加装甲を追加。
      エンジンもマガフ7と同じAVDS-1790-5Aに換装した。
      砲塔前面と側面に大きく張り出した楔形装甲が特徴。
      サイドスカートも追加装着されており、前側の4枚ずつは中空装甲となっている。

    • マガフ6B「バズ」(Magach6 Bet Baz):
      6BにメルカバMk.3B?と同型の「バズ」に変更した試作型。
      改造数は少ない。

    • マガフ6C(Magach6 Gimel):
      ほぼオリジナルのM60A3。
      導入後、マガフ6Bと同等の改修が行われたが、マガフ6B「ガル」相当の改修は行われていない。
      1982年のガリラヤの平和作戦に投入され、その後は改修を受けず予備役扱いとなった。

    • Magach Tagash:
      マガフ6の車体に折りたたみ式の橋を搭載した架橋戦車型。
      M60A1 AVLBと基本的に同型だが、キャタピラがメルカバ型になり、合わせて起動輪も改造されている。

    • Magach Tagash Tsemed*12
      小型の橋を2個搭載した型。

    • Magach Tagash Akrav*13
      Magach Tagashの車体をベースに、監視小屋付きの伸縮式アームを装備した特殊車両。
      監視小屋にはM2 12.7mm重機関銃と対RPG用のスラットアーマーが設置されている。
      IDFがガザ地区およびヨルダン川西岸地区に建設した分離壁の反対側を視察するために使用されている。

    • Magach "mur":
      破壊され穴の空いた分離壁を急遽塞ぐための特殊車輌。
      MagachかTagashの車体片側に巨大な鉄板の壁型構造物を取り付けている。

    • マガフ7(Magach7):
      1982年のレバノン侵攻におけるバトルプルーフを反映したマガフ6ベースの最新型。
      シリア軍戦車との交戦報告から、更なる防御力強化の要求を受けて開発された。
      車体前部と砲塔増加装甲?ERAから「第4世代型」増加複合装甲に換装。
      車体左右にもサイドスカート(前側の2枚ずつは中空装甲)を追加した。
      また、重量増加に対応するためにエンジンをAVDS-1790-5A(908馬力)に換装し、火器管制装置も新型に更新された*14
      砲塔の増加装甲の形状によりA/Cの2タイプが存在する(Bは試作のみ)。

    • マガフ7A(Magach7 Alef):
      砲塔の複合装甲が垂直に近い形状をしているモデル。
      戦闘時の戦車長の前方視界がかなり悪かったうえ、重量増加に対してエンジンの強化を行っておらずパワー不足気味であった。

    • マガフ7B(Magach7 Bet):
      マガフ7Aの装甲形状だけを改良した試作車。
      砲塔前面部の複合装甲の形状は7Cに近い。

    • マガフ7C:
      砲塔前面の複合装甲が楔形のモデル。これにより戦車長の視界が改善された。
      また、重量増加に対抗するためにエンジンはAVDS-1790-5Aに換装された。

    • サブラ(Sabra):
      イスラエルの輸出用改修パッケージ。
      主砲をメルカバMk.3と同じ国産の44口径120mm滑腔砲に換装し、砲塔部に楔形の装甲を追加しているのが特徴。

      • サブラMk.1:
        初期型。
        マガフ7C/マガフ6B「ガル・バタシュ」相当の車両にIMI製120mm滑腔砲を装備し、エルビット・システムズ製の"ナイト"FCSを装備した。
        マガフシリーズに比べサスペンションが強化され、油圧制御等は全て電子制御システムに更新されている。

      • サブラMk.2:
        トルコ軍の要求仕様に基づく仕様変更を行った型。
        キューポラをマガフシリーズで使用されている車長用ウルダン・キューポラから、従来のM60シリーズと同じ、M85機関銃を装備したM1キューポラに変更している。
        また、エンジンをMTUフリードリヒスハーフェン製 MT881KA-501ディーゼルエンジンに換装している。
        「M60T」としてトルコに採用されている。

      • サブラMk.3:
        装甲強化、レーダー警戒装置、赤外線照射警戒装置などの適用が行われた改修型。
        履帯はメルカバMk.犬汎韻己が使用されている。

  • CM11(勇虎式戦車、M48H):
    中華民国(台湾)モデルで、M60A3のシャーシにM48A5砲塔を搭載した装束型。
    M48A5およびM60相当の車両であるが、M1に匹敵する火器管制装置を装備する。
    2000年代にはフランス・GIAT社製の爆発反応装甲を装着した改修型へのアップデートが進められている。

  • サムサーム(Samsam):
    イランでのM60A1のコピーモデル。

  • M60-120:
    ヨルダンのキング・アブダラー2世記念設計開発局 (KADDB) が、スイスのSWシン社と合同で開発したM60A3用近代改修キット。
    主砲をSW 120mmL50滑腔砲とレイセオン社製の射撃統制装置を組み合わせたもの。

  • M60A3-84:
    かつてのライバル戦車・T-54を開発したウクライナのKhKBMが作成した近代化改修案。
    M60にウクライナ国産のKBA-2 120mm砲を搭載するほか*15
    「ニージュ」爆発反応装甲など他各種防御システムが装備されることになる。
    これにより、M60A3-84はヤタハーンやT-72-120並みの高性能を獲得することになるとされる。

  • 120S M60-2000:
    GDLS(ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ)社が提案した、M60の車体にM1「エイブラムス」砲塔を取り付ける近代化改修型。
    砲塔を換装した他、エンジンとトランスミッション、サスペンションを改良するとされる。
    現在のところ、発注はされていない。

  • M60CZ-10/25E Alacran:
    スペインが独自開発した戦闘工兵車型。
    M60A1の車体にドーザープレートを装備し、砲塔部にはショベルアームが装備されている。

  • M60VLPD 26/70E:
    スペインが独自開発した架橋戦車型。
    M60A1の車体にドイツ製のレグアン戦車橋(Leguan bridge system)を搭載したもの。


*1 ただし非公式愛称であり、公式にはパットンシリーズともされていなかった。
*2 Add-On Stabilization.
*3 Reliability Improvements for Selected Equipment:信頼性向上及び装備近代化。
*4 これはミサイルの誘導方式が赤外線リンクによる半自動指令方式で、命中まで目標を照準し続ければならなかったためであった。
*5 Tank Thermal Sightの略。
*6 Armored Vehicle Landing Bridge.
*7 Armored Vehicle Launched MICLIC.
*8 Mine-Clearing Line Charge.
*9 Combat Engineer Vehicleの略。
*10 ロイヤル・オードナンス L9A1のライセンス生産品。
*11 Robotic Obstacle-Breaching Assault Tank(ロボット可障害物突破突撃戦車)の略。
*12 ヘブライ語で"2組"(Pair)の意。
*13 ヘブライ語で"サソリ"(scorpion)の意。
*14 FCSについてはマガフ6Mと同様とする資料と、メルカバMk.2?ショット・カルD?と同型の「マタドール」に換装されたとする資料が混在している。
*15 需要があればロシア型規格の125mm砲や140mm砲も装備可能である。

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