Last-modified: 2019-07-23 (火) 21:41:35 (25d)

【M4(戦車)】(えむふぉー(せんしゃ))

M4 "Sherman(シャーマン)".

第二次世界大戦期におけるアメリカの主力戦車。分類上は中戦車
愛称は南北戦争時の将軍であったウィリアム・シャーマンに由来する。

1940年頃から開発が始まり、1941年10月に制式採用。
その後、1942年2月から量産が開始され、1945年までに5万両近くが製造された。
10社・11工場で分散して製造され、供給体制や実戦部隊の要求による多数の派生型が製造された。

主な戦歴はドイツ戦線、太平洋戦争の沖縄戦、朝鮮戦争、印パ戦争、中東戦争など。
現在でも、パラグアイなどで少数が主力戦車として使用されている。

スペックデータ

乗員5名
全長7.47m(砲身含む)
車体長6.19m
全高2.74m
全幅2.62m
重量32.3t
懸架方式水平渦巻きスプリング・ボギー式(HVSS)
発動機コンチネンタル R975 C4 4ストローク星型9気筒空冷ガソリンエンジン×1基
出力400shp
速度42km/h(最高)
38.6km/h(整地)
19.3km/h(不整地)
行動距離160km
武装M1 52口径76.2mm戦車砲×1門(71発)
M3 37.5口径75mm戦車砲×1基(90発)
M1919A4 7.62mm機銃?×2挺(6,250発)
M2 12.7mm機銃×1挺(600発)
装甲砲塔防楯:76mm
砲塔前面:64〜76mm
砲塔側面:50mm
砲塔後面:64mm
車体前面:51mm
車体側面:38〜45mm
車体後面:38.1mm


主なバリエーション(カッコ内は英軍呼称)

オリジナル

  • T6:
    試作車の呼称。

  • M4(Sherman 機法
    初期モデル。
    溶接構造車体にコンチネンタルR975星形エンジンを搭載した。

  • M4 Hybrid(Sherman Hybrid):
    車体前面のみに一体鋳造構造を用いた「コンポジット型」モデル。
    主に英国へ供与された。

  • M4(105mm)(Sherman B)
    後期型車体に105mm榴弾砲を搭載したモデル。
    試作車はM4A4E1と呼称された。

  • M4E9:
    本土で訓練用に用いられていた初期生産車輌の足回りにスペーサーをかませ履帯の両側に「ダックビル」型エンドコネクターを装着した仕様。
    履帯幅の広いE8仕様のように接地圧が低減された。

  • M4A1(Sherman 供法
    車体を一体鋳造構造としたモデル。
    丸みを帯びた車体前面形状により避弾経始は高まった反面、車内スペースが狭くなってしまった。

  • M4A1(75)W:
    後期型車体モデル。
    操縦士ハッチを大型の物に変更し、湿式弾薬庫を持つ。

  • M4A1(76)W(Sherman A):
    A1型の主砲をM1A1 76.2mm戦車砲に変更したモデル。
    砲塔はT23試作中戦車と同型。
    1944年7月のコブラ作戦から実戦投入された。

  • M4A1E4:
    戦後、75mm砲搭に76.2mm砲を搭載した型。
    パキスタンに供与され、カシミール紛争などで使用された。

  • M4A1E9:
    M4A1の初期型をM4E9同様に改修し、E9仕様にしたモデル。

  • M4A2(Sherman 掘法
    溶接車体に鋳造砲塔を搭載。
    エンジンは民間トラック用に開発されていたGM製 6046直列6気筒2ストローク液冷ディーゼル×2基を連結して搭載。
    海兵隊のほか、レンドリース用としてイギリス軍と自由フランス軍で使用された。
    後に、ソ連軍にも供与された。

  • M4A2(76)W(Sherman A・後期型はAY):
    A2型の主砲をM1A2またはM1A1C 76mm戦車砲に変更したモデル。
    砲塔は後期型のもの。

  • M4A2E4:
    M4A2にトーションバーとより幅が広い履帯を装備した試作車。
    採用されず。

  • M4A3(Sherman 検法
    溶接車体に鋳造砲塔を搭載。
    フォードGAA V8液冷ガソリンエンジン(450馬力)×1基を搭載。
    戦後、余剰車が大量に供与された。

  • M4A3(105mm)(Sherman B):
    後期型車体に105mm榴弾砲を搭載したモデル。
    試作車はM4A4E1の改良型であるM4E5。

  • M4A3E2(突撃戦車「ジャンボ」):
    A3の装甲強化型。
    177.8mm厚の防楯を装備し、重量増加のため履帯の脇に「ダックビル」と呼ばれるアタッチメントを装着している。

  • M4A3E4(Sherman A):
    朝鮮戦争当時、北朝鮮軍T-34-85?に対抗するために開発されたモデル。
    主砲および砲塔はM4A1(76)Wと同様だが、車体はM4A3がベースになっている。
    後に同じ改造を施されたものがユーゴスラビアに供与された。

  • M4A3E8:
    「イージーエイト」と呼ばれる最終モデル。
    懸架装置がそれまでのVVSSからHVSSに変更され、履帯幅も広くなり、併せてフェンダーが増設されている。
    朝鮮戦争などでも使用された他、創設期の陸上自衛隊にも「特車」として供与されていた。

  • M4A4(Sherman 后法
    溶接車体に鋳造砲塔を搭載。
    クライスラー製A-57複列30気筒液冷ガソリンエンジン*1×1基を搭載。
    エンジンルームの関係でこの型とA6型は他の型より全長がわずかに長い。
    イギリス軍のほか、カナダ軍、自由ポーランド軍、自由フランス軍、中国国民党軍にも供与された。

  • M4A5:
    カナダが国産装甲戦闘車輌として独自生産した「ラム」巡航戦車にアメリカ陸軍軍需部が与えた形式番号。
    M3中戦車がベースだが、アメリカからパーツを供給を受けたため、M4に酷似している。

  • M4A6:
    M4A4の溶接・鋳造のハイブリッド構造モデル。
    キャタピラー社製空冷星型ディーゼルエンジンを搭載。
    生産数は75両と少なく、訓練用として使用された。

追加装備モデル

  • T34「カリオペ」:
    砲塔上部に46inch長ロケット弾発射機を搭載した自走ロケット砲型。

  • T40(M17):
    砲塔上部に72inch長ロケット弾を装填した箱形ランチャーを搭載したもの。

  • T76:
    主砲の替わりに75inch長ロケット弾発射装置を搭載したもの。

  • T99:
    砲塔側面に45inch長ロケット弾22発を装填した箱形ランチャーを搭載したもの。

  • T31 Demolition Tank:
    陣地破壊用に榴弾砲とT94ロケットランチャーを装備した試作車両。

  • T1E3(M1)Aunt Jemima:
    車体前部に大型ローラー2基を装着した地雷原処理車。

  • T3:
    英国の"Scorpion"地雷処理装置をベースにした地雷原処理車。

  • M4 Doozit:
    T40ロケットランチャーとドーザーブレードを装備した障害物除去車。

  • POA-CWS 75-HI:
    主砲に火炎放射装置を組み込んだ火炎放射戦車。

  • T33:
    75mm砲の脇にE20火炎放射装置を並列配置した火炎放射戦車。

  • Sherman Prong:
    別名Cullin hedgerow。
    車体前面に灌木切除装置を装備したモデル。

その他派生型

  • グリズリー巡航戦車:
    カナダのモントリオール・ロコモーティブ・ワークス社でライセンス生産されたM4A1(シャーマンII)。
    装備品などの規格をイギリス・カナダにあわせるために改設計が行われている。
    砲塔後部にNo.19型無線機を格納するための張り出しを設けたり、2インチ発煙弾発射機などが増設されている。
    多くはイギリス軍で訓練用戦車として用いられた。

  • シャーマン・ファイアフライ:
    重装甲のドイツ軍戦車に対抗するために、M4の車体にオードナンスQF・17ポンド(76.2mm)対戦車砲を搭載した砲塔を組み合わせたモデル。
    前期にはM4A4 (シャーマンV)、後期には前期型車体又はハイブリッド車体のM4 (シャーマンI) から改造された。

  • M10「ウルヴァリン」/M36「ジャクソン」:
    M4の車体をベースにした駆逐戦車型。

  • M7「プリースト」:
    自走榴弾砲型。
    M2(M101)105mm榴弾砲を搭載。
    改良型のM7B1/M7B2がM4をベースにしている(初期型はM3中戦車をベースにしている)。

  • M32:
    砲塔を撤去し、回収用クレーンを装備した戦車回収車型。

  • シャーマンDD(Duplex Drive):
    ノルマンディー上陸作戦のためにイギリス軍が開発した水陸両用戦車。
    車体周囲に展開する防水スクリーンと、後部に誘導輪で駆動する推進用プロペラ2基を備えていた。

  • シャーマンフレイル:
    地雷処理用のチェーンローラーを装備した地雷除去車両。
    「シャーマン・クラブ」とも呼ばれる。

  • シャーマン・クロコダイル:
    火炎放射戦車型。
    車体前面に火炎放射器を搭載し、後ろに火炎放射用燃料を積んだ2輪トレーラーを引いている。
    主砲を撤去していないため普通の戦車としても使える。

  • M4(AMX-13砲塔):
    エジプト陸軍向けの改造モデル。
    M4の車体にAMX-13?軽戦車の砲塔を搭載している。
    この他、M4A4の車体にM4A2用のディーゼルエンジンを載せたモデルもある。

イスラエル製派生型

  • M50/M51「スーパーシャーマン」:
    イスラエル軍での改修型。
    砲塔にフランスのAMX-13と同じ高初速の75mm砲を搭載し、砲身長に合わせて砲塔後部のカウンターウェイトも延長した他、全金属製のT80履帯を使用している。
    懸架装置はM4と同様、水平渦巻きスプリング・ボギー式である。
    M51では、76mm砲搭型のM1シャーマンにフランス製CN105-F1 105mm戦車砲の短縮型を搭載し、エンジンもカミンズVT8-460に換装している。
    第三次〜第四次中東戦争でT-34-85、T-54/T-55T-62などを相手に奮戦した。

    • Degem Alef(A型):
      最初の量産型。 走行装置はHVSSサスペンションを最初から装備しているが、エンジンはコンチネンタル製ガソリンエンジンを搭載。
      後のタイプに比べると車外装備品は少なく、車体両サイドの雑具箱と予備履帯は装着されているが予備転輪は装着されていない。
      携行缶は車体後部1ヶ所のみ。

    • Degem Beth(B型/改修バッチ1):
      エンジンをカミンズ製ディーゼルに換装した型。
      エンジン換装の他、車体側面に携行缶ラック、予備転輪が搭載されるようになっている。

    • Degem Gimel(C型/改修バッチ2):
      1960年代末頃から1970年代初頭に行われた改修を受けた車両。
      エンジンデッキ後半部分にルーバーが追加され、主砲トラベリングロック装置の強化、車体側面の雑具箱を片側2個に増設し予備履帯ラックを砲塔側面に移動させるなどの改修が行われている。

    • Degem Dalet(D型/改修バッチ3):
      1975年頃から開始された改修を受けた車両。
      エンジン排気管が車体上部のエンジンデッキ上に移設された以外はバッチ2とほぼ同じ。
      後に、砲塔上(砲塔中央部分)に迫撃砲を搭載し、砲塔中央にあったM2重機関銃の機銃架を廃止して車長用キューポラの横にM1919 7.62mm機関銃を搭載する改修を施したり、また主砲上に同軸機銃としてM2重機関銃を装備したりする改修も行われている。

    • 改修バッチ4:
      エンジンの排熱効率を上げるためにM4A1車体の車体上部後面パネル部分を一度切断し、数10cm延ばして再度溶接し、増えた下側の空間に排気用ルーバーを増設した車両。

  • 派生型
    • M50:
      自走榴弾砲型。
      M4A4のエンジンを前部の補助操縦席部分に移して、オープントップの後部にフランス製M50 155mm榴弾砲を搭載している。
      後にソルタムL33 155mm自走榴弾砲やM107 175mm自走砲に更新され、アンビュタンクに改造された。

    • ソルタム L33:
      M50自走榴弾砲の後継として開発された型。
      M4の車体上に密閉型の戦闘室を設けてイスラエル国産のソルタムM68 33口径155mm榴弾砲を装備している。
      第四次中東戦争で運用されたが、後にM109 155mm自走榴弾砲に更新されている。

    • マクマト*2
      自走迫撃砲型。
      退役したM50の車体前部をオープントップ式の戦闘室に改造して、ソルタムM66 160mm迫撃砲を装備している。

    • シャーマンMRL:
      砲塔を撤去して多連装ロケットランチャーを搭載した自走多連装ロケット砲。
      鹵獲したBM-24?ロケット弾をコピーした36連装の240mmロケット弾発射機を装備したMAR-240と4連装の290mmロケット弾発射機を搭載したMR-290*3の2種類が開発された。
      MLRSに更新されて現役装備から外された。

    • キルション:
      退役したM51の車体にAGM-45「シュライク」対レーダーミサイルの単装ランチャーを装備した対レーダー車両。

    • アンビュタンク、シャーマン装甲救急車:
      負傷者搬送用の救護車型。
      M4A1(76)Wの砲塔を外してその下にエンジンを移して後部を救護室にした前期型と、余剰となって退役したM50 155mm自走榴弾砲の戦闘室を密閉して救護室にした後期型の2種が存在する。

    • ヤール観測戦車:
      M1スーパーシャーマンの砲塔を外し、最大30mに達する巨大な伸縮式の観測台を備えた観測車輌。
      3台が改造され、第四次中東戦争で使用された。

    • モンスター標的戦車:
      戦車部隊の移動目標砲撃訓練の仮想標的として用いられる車両。
      退役したM4の砲塔を撤去して車体外部に斜めに傾斜した装甲板をボルト止めしている。

    • トレイルブレーザー戦車回収車:
      スーパーシャーマンをベースにした装甲回収車型。
      車体右側の補助運転手兼機銃射手席の部分に大型クレーンを搭載し、車体前面にドーザーブレードを装着している。

  • 輸出型
    • M50 APC:
      レバノン内戦時に南レバノン軍に供与されたスーパーシャーマンをAPCに改造した型。
      砲塔を撤去し、防弾版とM2重機関銃を装備している。

    • M60:
      チリ陸軍に供給されたスーパーシャーマンの改良型。
      イスラエル軍事工業社(Israel Military Industries,IMI)製の60mm高速砲(HVMS)を搭載し、エンジン改装などの改良が加えられた。


*1 バス用に開発されていた直列6気筒ガソリンエンジン5基を扇形に束ねて連結している。
*2 ヘブライ語でMargema Kveda Mitnayaat(自走重迫撃砲)の略。
*3 ショット?をベースにした車両も存在する。

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